ものづくりプレス
2024-02-28
ゴムは塩素で劣化する?耐塩素水性のあるゴムと劣化防止のための対策
塩素はゴムを劣化させる要因のひとつです。ところが、塩素は水道水などにも含まれており、特に水回りに使用するゴムにとっては避けることができません。しかしその仕組みを知り、適切な対策を施すことによって、ゴムの劣化を防いだり進行を遅らせたりすることが可能です。
この記事では、ゴムが塩素で劣化する理由と、塩素対策の具体的な方法について解説します。
ゴムが塩素に弱い理由
水道内のOリングやゴムパッキン部分など、水回りに多く使われるゴムにEPDM(エチレンプロピレンゴム)があります。EPDMは、耐水性、耐熱性、耐候性、耐酸性などが高い合成ゴムですが、水道水に含まれる残留塩素に触れることで少しずつ劣化していきます。しかしその理由はゴムそのものではなく、ゴムに含まれるカーボンブラックにあります。
カーボンブラックは炭素を原料とした微粒子で、ゴムの強度を高める目的で配合される充填剤です。塩素や水と吸着しやすく、これらがゴム分子の結合を切断することで劣化を引き起こします。劣化が進行すると、き裂が発生して水漏れの原因になるだけでなく、加水分解されたカーボンブラックが水に混ざり、黒い水が出ることもあります。
ゴムが塩素で溶けることはある?
前述のとおり、ゴムは塩素で劣化することはあっても溶けることはありません。しかし、ゴムに配合されているカーボンブラックが塩素によって組織が破壊され、軟化することで溶けたように見えることがあります。夏場や温水器などによる水温の上昇は、さらなる軟化の原因になります。
耐塩素水性のあるゴムはある?
近年では水道水に含まれる残留塩素の濃度が上がっており、劣化が早く進行することもあり、耐塩素水性のゴムが求められています。実際、塩素に対する耐性を持つゴムもありますが、加硫の際に加える充填剤や添加剤などが原因となり、劣化は避けられません。しかし現在では、耐塩素水性を持つゴムの開発が行なわれ、次々と製品化されています。
ゴム劣化防止のための塩素対策
基本的にゴムは塩素で溶けないとはいえ、実用に際しては、残留塩素による劣化を防止するための対策が求められます。
そのための方法として、主に以下の3つが挙げられます。
充填剤の見直し
ゴムの持つ性質を高めるために添加するのが充填剤で、ほぼすべての合成ゴムに使用されています。その中の代表的な充填剤のひとつにカーボンブラックがあります。ゴムの補強性を高める効果があり、タイヤなどにも使用されています。しかし弱点として水や塩素と吸着しやすい性質があり、水回りの部品として使われた場合はこれが原因となって劣化を引き起こします。
そこでカーボンブラックに変わり、優れた補強性を付与しつつも耐塩素水性を高めるために有効な充填剤が、「サーマルブラック」と「シリカ」です。いずれも水道水に含まれる残留塩素のゴムへの侵入を低くする効果が期待できます。
▼サーマルブラック
MTカーボンやFTカーボンとも呼ばれているサーマルブラックは、カーボンブラックの一種で、天然ガスまたはコークス炉ガスを熱分解して製造されます。品質制御されており、弾性や引張強度を上げる目的で、タイヤなどの用途で使用するゴムに添加されますが、炭素と塩素が結びつきやすい活性点がほとんどないため、塩素の誘引性が低いという特徴を持っています。
▼シリカ
シリカはミネラルの一種でケイ素とも呼ばれています。着色性や引裂抵抗値、接着性、耐屈曲疲労性などに優れており、また路面が濡れている状態でのブレーキ性能を高めるためにタイヤにも添加されています。このシリカも、カーボンブラックよりも耐塩素性のある充填剤として使用されることがあります。一方、カーボンブラックほど強度は出ないので、使い分けが必要です。
ゴム硬度の強化
ゴムの硬度は高くなるほど質量や体積が増加しにくくなるため、結果的に塩素の侵入を防ぐ効果が上がります。しかし同時に、ゴムの硬度は製品の性能にも影響するため、適度な範囲で調整することが重要です。
ゴムの材質の検討
水回りには、耐水性と耐薬品性の高いゴムが適しています。その代表としてEPDM(エチレンプロピレンゴム)やFKM(フッ素ゴム)、VMQ(シリコーンゴム)などがありますが、コストや充填剤などの配合のしやすさなどを考慮すると、EPDMが適していると言えます。
しかしEPDMは、第3成分のジエン系モノマーが残留塩素からの影響を受けやすく、また充填剤として使用されるカーボンブラックには、残留塩素を吸着しやすいという性質があります。そのため、用途や目的に応じて使用するゴムの種類を検討することも、耐塩素水性対策の選択肢になります。
このほか、ゴムではなく樹脂を使う方法もあります。ただし、ゴムよりもシール性が落ちるため、水漏れなどの問題が発生する可能性が高くなることがあります。
最適なレシピのノウハウを有する工場への依頼
一概に「耐塩素水性」と言っても、その程度は充填剤や添加剤の配合などにより多種多様で、また製作する製品に適しているかどうかによっても使用するゴムは異なります。まずは市場に出回っている耐塩素水性の性質を持つゴムについて調べることが必要です。
それでも最適な素材が見つからない場合は、ゴムづくりに関する知識と熟練した技術を持つ職人のいる工場などに相談し、製品に適合するゴムをカスタマイズしてもらうのもひとつの方法です。
塩素によるゴム劣化防止対策には専門家と相談を
水回りのパッキンや水道内部のOリングなどに使用されているゴムは、近年の残留塩素濃度上昇などの影響を受けて、ひと昔前より劣化しやすい環境にさらされています。ゴムの劣化は水漏れだけでなく、溶け出した充填剤や劣化により分解したゴムの粒子が水道水の中に混入するなどを引き起こすため、しっかりとした対策が求められます。
ゴムの劣化は避けられない問題ですが、進行を遅らせるための方法を取り入れたり、耐塩素水を強化したゴムを使用したりすることで、製品寿命を延ばすことは可能です。そのための最適な方法を得るには、ゴムに関する知識を豊富に持つ専門家に相談するのが、いちばんの近道です。
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