ものづくりプレス

2025-03-05

タイヤの材料に使用されるブタジエンゴムとは?

合成ゴム需要の上位2番目に位置しているブタジエンゴム。

その優れた弾性と耐摩耗性から、身の回りの多くの製品に使用されていますが、その中でも代表的なのが自動車のタイヤです。
この馴染みのあるブタジエンゴムをゴム製品の原料として検討している方のために、ブタジエンゴムの特徴や長所、短所、スチレンブタジエンゴムとの違いを解説します。

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ブタジエンゴム(BR)とは

ブタジエンゴム(BR)は正式名称を「ポリブタジエンゴム」と言い、ドイツのヒュルス社が量産化に成功した合成ゴムです。1.3-ブタジエンの溶液または乳化重合によって製造され、製造時に触媒とされるのは、フナタジエン、チーグラーなどの有機金属化合物です。溶液重合法の場合では、ニッケル系、コバルト系、チタン系、アルキルリチウム触媒が用いられます。
使用する触媒により、シス1,4が90%以上を占める「高シスタイプ」と、40%以下の「低シスタイプ」のふたつに分けられます。シス(cis)は、二重結合を挟んで原子が同方向に付いた構造のことで、合計4つ原子が付いたものがシス1,4です。どちらのタイプも反発弾性、低温特性、耐摩耗性に優れた物性を持っています。
しかしブタジエンゴム(BR)は機械的強度や耐油性が劣ることから、単独で使用されることはあまりありません。多くの場合、天然ゴム(NR)やスチレンブタジエンゴム(SBR)などとブレンドします。

スチレンブタジエンゴム(SBR)と違い

スチレンブタジエンゴム(SBR)はブタジエンゴムと同様にブタジエンを原料としているため、基本的な物性は似た点が多いですが、スチレンとブタジエンの共重合体からつくられる点で異なります。結合スチレン量が23.5%のものが一般的で、50%以上のものはハイスチレンゴムまたはハイスチレンレジンと呼ばれ、加工性に優れた硬質ゴムとしての性質を持ちます。


天然ゴムの代替品として開発されたため、耐油性や耐寒性に劣るという物性は似ていますが、引き裂きなどの機械的強度や耐摩耗性が高いのが特長です。また加工性が良好で、品質が安定していて安価なことから、ブタジエンゴムより多い生産量を誇ります。

ブタジエンゴムの長所

ブタジエンゴムの主な長所は以下のとおりです。
・耐摩耗性、特に水に濡れた場合の摩耗特性に優れる
・原料ゴムの中で最強クラスの反発弾性
・天然ゴムより優れた耐老化性
・優れた動的低発熱性
・低温特性や耐寒性に優れる
・型流れがよく、押出成形に最適

ブタジエンゴムの短所

短所としては、以下の点が挙げられます。
・耐油性が低い
・引裂・引張強度などの機械的強度が低い
・ガスバリア性が弱い
・加工性が劣る

ブタジエンゴムの用途

ブタジエンゴムは、耐摩耗性、弾性、耐寒性、低発熱性に優れている一方で、耐油性、耐チッピング性、加工性などに劣ります。そのため、これらの短所を補う目的で、多くの場合では天然ゴムやスチレンブタジエンゴムと混合し、以下のような用途に使用されます。


・自動車などのタイヤ
・ベルト
・ゴムホース
・ゴルフボール、スーパーボール
・工業製品
・ゴム引布
・Oリング
・履物
・プラスチック改質剤 など

今後の安定した需要が見込めるブタジエンゴム

ブタジエンゴムは、弾性や耐摩耗性、耐老化性に優れた合成ゴムです。また単体としてだけではなく、ブタジエンゴムよりも弾性の高い天然ゴムや、品質が安定していて価格も安いスチレンブタジエンゴムと合わせることで、さらなる特性を発揮する素材でもあります。中でも代表的な用途が自動車タイヤの材料です。そのため、自動車の生産率の高まりと共に、今後も安定した需要が大いに見込めます。
自動車のタイヤをはじめ、耐摩耗性を求める合成ゴム製品製造の際に選択肢に入れるべき合成ゴム、それがブタジエンゴムです。

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