ものづくりプレス
2025-02-15
フライス加工の基礎|種類や特徴・メリットとデメリット
材料を削って加工する方法のひとつであるフライス加工。金属をはじめ、ゴムなどの材料の加工にも用いられています。フライス加工にはいろいろな種類があり、用途に応じた加工が可能ですが、同じ切削加工である旋盤加工との比較が求められることもあります。 フライス加工の概要やメリットやデメリット、旋盤加工との違い、さらにフライス加工の種類を知ることで、選択の参考になります。
フライス加工とは
フライス加工とは、材料を切ったり削ったりする切削加工の一種で、固定した材料(工作物)に「フライス」と呼ばれる高硬度な円柱状の回転工具を当てて加工する方法です。フライスはドイツ語で、英語では「ミーリングカッター」と言うことから、フライス加工はミーリングとも呼ばれています。
フライス加工ではフライス盤と呼ばれる加工機を使用します。フライス盤は大きく分けて「汎用フライス盤」と「NCフライス盤」があります。
汎用フライス盤
操作を手動で行なうフライス盤を指します。工具を送る速度や位置、切り込みの量などは、実際にフライス加工を行なう作業者により決定されます。作業者が持つ技術力によって加工時間や仕上がりに影響が出ますが、手作業ならではの精度の高い加工が可能です。作業中にミスがあってもすぐに修正でき、加工後でも追加加工が簡単にできる、などのメリットがあります。
NCフライス盤
NC制御(数値制御)により操作する加工機です。あらかじめ手順などを入力すれば、コンピュータ制御によって機械が自動的に行なうため、大量生産向きと言えます。安定した品質の加工が可能で、また、3D CAD/CAMソフトウェアを用いれば形状が複雑な加工ができるなど、汎用フライス盤にはない特徴を持っています。
NCフライス盤には、主軸となるフライスに加え、異なる工具を取り付けた複数の主軸が1体に収まった「マシニングセンタ」という複合機もあります。
「たて型旋盤」と「よこ型旋盤」
フライス盤は、工具を着装する主軸が垂直方向についた「たて型」と、横方向についている「よこ型」があり、それぞれで特徴や用途が異なります。
▼たて型
特に平面、溝、切断などの加工に適しています。また機械の動きによって「ベッド型」と「ひざ型」に分けられます。
【ベッド型】
・主軸は上下方向のみに動き、材料を固定したテーブルが前後左右に動く
・大量生産向き
・重量物の加工に適している
【ひざ型】
・一般的なフライス盤
・主軸は固定され、テーブルが前後や左右、上下に動く
・目線の高さで操作できるので視認性がよい ・細かい作業向き
▼よこ型
・主に板状の材料の側面加工や溝入れ、切断加工に使用
・深穴加工に向いている
・切粉を効率的に排出
▼万能フライス
・ひざ型フライスの一種で、たて型とよこ型の基本性能を兼備
・テーブルが水平に回転
・主軸が180度動く、たて・よこ兼用タイプもあり
フライス加工で工作機械をつくるための部品を製作することも多いため、フライス盤は「マザーマシン」とも呼ばれます。
フライス加工と旋盤加工の違い
切削加工には、フライス加工のほかに「旋盤加工」があります。
フライス加工は、固定した材料に回転するフライスを当てる「転削加工」であるのに対し、旋盤加工は材料そのものが回転し、そこに工具(バイト)を当てる「旋削加工」であるのが大きな違いです。またフライス加工で使用する材料は板状の「板モノ」、一方の旋盤加工では円柱状の「丸モノ」が多い点も異なります。
フライス加工の特徴
板状の材料に溝削りや穴あけなどの加工を得意とするフライス加工は、仕上げの美しさや不良品の少なさにも定評があります。しかし、あらゆる工作物に適しているというわけではありません。フライス加工の特徴を理解し、材料に合わせた加工方法を用いることが大切です。
フライス加工のメリット
フライス加工には以下のメリットがあります。
▼旋盤よりも複雑な形状の加工が可能
材料自体が回転し、円周上での加工に限られる旋盤加工よりも、多様な加工方法を持つフライス加工では、形状が複雑でも加工可能なのも特徴です。
▼加工の作業効率が上がる可能性がある
旋盤加工でできる加工でも、その内容によってはフライス加工に置き換えることで作業スピードや精度が上がることがあります。そのため作業効率の向上が見込める場合もあります。
フライス加工のデメリット
フライス加工には以下のデメリットがあります。
▼滑らかな表面仕上げが苦手
加工後の表面が粗くなる傾向があります。旋盤加工の方が表面加工を得意としています。
▼外側・内側を丸くする加工は苦手
材料の内側に穴を開ける加工は可能ですが、外側に丸みを持たせる加工は不得意です。また加工の性質上、すべての面が直角になるような内角部(ピン角)の切削もできません。
フライス加工の種類
フライス加工は、以下のフライスに交換することで、特徴ある加工が可能になります。
フライスの主な種類
▼正面フライス(フェイスミル)
・たて型フライス盤で使用 ・円筒外周面と端面に複数の刃がついた形状
・広めの切削面で、主に平面加工に使用
・切削面の仕上がりがきれい
・すべての刃の管理がやや難しい
▼平フライス
・よこ型フライス盤で使用
・効率よく削れる反面、正面フライスより仕上がり面が粗い
・溝・穴加工ができないため、使用機会が減少傾向
▼エンドミル
・平面、側面、穴、溝など幅広い加工が可能
・外側の刃の形状により数種類あり、用途に応じて使い分ける
・複雑な加工や、細かい加工向き
▼溝フライス
・外周だけに刃を持ち、材料の端面や側面の溝加工を行なう
・エンドミルより速い加工速度と高い精度
これらのフライスを使用した加工方法には、主な以下の種類があります。
平面切削
正面フライスや平フライスを使用し、フライス盤のテーブルを前後左右に動かしながら、材料を平らに仕上げていく加工方法です。エンドミルなどのフライスでも平面切削は可能ですが、広範囲の加工はできません。そのため、小さい材料を加工する場合以外は、一般的に正面フライスを使用します。
側面切削
主によこ型フライス盤を使った加工方法です。材料を平面切削した後、工具を上下方向に送り出して側面を加工していきます。切削には、正面フライスやエンドミルなどを使用します。
溝加工
たて型フライスではエンドミル、よこ型の場合は側フライスを主に使用し、平面の材料に溝をつける加工です。溝の深さがある場合、いきなり深く差すとエンドミルが折れてしまうため、数回に分けて徐々に深くしていきます。溝の底部分が広いT溝加工を行なう場合は、エンドミルとT溝フライスのふたつの工具を使用します。
穴あけ加工
センタードリルで先に下穴をあけた後、ドリルでその穴を深く掘っていく加工です。穴の大きさによっては、エンドミルでも加工が可能です。
段加工
平面部分に段差をつける加工です。使用するフライス盤に応じて、正面フライスまたは平フライスを使用し、溝を作ります。その後、さらに深く掘り、段差をつけていきます。狭い部分の段加工を行なう場合は、エンドミルまたは側フライスが適しています。
フライス加工は切削加工の基本、複雑な形状の加工もできる
フライス加工は、フライスの種類を変えれば複雑な形状の加工も可能なため、さまざまな製品づくりに用いられている基本的な切削加工です。その一方で、表面を滑らかにしたり、外周に丸みを持たせたりする加工は苦手としており、この場合は旋盤加工が選択肢になります。
このようにフライス加工が持つ特徴を理解し、製品の形状や用途に応じた加工方法を選ぶことが、高品質な製品をつくるためには重要です。
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