ものづくりプレス
2025-09-30
金属代替素材として有望なPEI(ポリエーテルイミド)樹脂
PEI(ポリエーテルイミド)は、優れた耐熱性を有する加工性に優れたスーパーエンプラとして近年注目を集めています。従来から用いられている主要な合成樹脂の成形方法や加工方法に対応するほか、3Dプリンタでの造形にも適した樹脂です。
この記事では、PEIの特性や成形・加工方法、用途、ポリイミドとの違いなどについて詳しく解説します。
PEI(ポリエーテルイミド)とは
PEI(ポリエーテルイミド)は、1980 年代にアメリカの GE社(現 SABIC イノベーティブプラスチックス)によって開発された樹脂です。耐熱特性と高い強度が特徴のイミド結合(-CONHCO-)と、耐熱水性で加工しやすく、溶融時の流動性が良い特性を持つエーテル結合(-O-)が交互に結びついた非晶性の熱可塑性樹脂で、双方の長所を受け継いでいるのが特徴です。
連続耐熱温度が約170℃と耐熱性に優れた特性を有しつつ、射出成形や3Dプリンタのプリント材料の原料としても使用できる「加工性に優れたスーパーエンプラ」のひとつであり、金属部品の代替に用いられるほどの機械的強度や耐熱性を有するのに加え、スーパーエンプラの中では秀でた弾性率を示します。
現在では、透明・不透明の非強化グレードや、ガラス繊維による強化グレードなども提供されています。
PEI(ポリエーテルイミド)の特徴
PEI(ポリエーテルイミド)は琥珀色で透明性のある非晶性樹脂です。一般に非晶性樹脂は薬品耐性が低いという性質を持っていますが、PEIは有機溶剤を除けば酸・アルカリにも耐性があり、耐薬品性は比較的優秀です。
また連続耐熱温度は170℃程度と高い耐熱性を備えているほか、難燃性や耐スチーム性に優れ、沸騰水内でも機械的強度は変わりません。そのため、スチーム滅菌を行なう医療分野や食品分野などで重宝されている素材のひとつでもあります。
◇PEI(ポリエーテルイミド)の優れている点
PEIはエーテル結合とイミド結合の長所がバランス良く受け継がれている合成樹脂です。
以下、PEIの優れている点について解説します。
▼耐熱性、耐熱水性、難燃性
ガラス転移点が215℃前後と高く、高温下でも高強度を保ちます。また耐熱水性にも優れ、高温スチーム滅菌も使用可能です。
このほか、難燃剤を添加しなくても充分な難燃性が認められ、燃焼時の発煙量も極めて少なく、有毒ガスも発生しません。
▼電気絶縁性、誘電率
幅広い周波数帯での電気絶縁性が確認されており、誘電率が低いという性質も持っています。
▼寸法安定性
耐熱性や耐加水分解性に優れ、熱や水分による影響を受けにくいことから、高い寸法安定性を示します。そのため、成形加工や切削加工のいずれに対しても、高い精度での加工が可能です。しかし吸湿性があるため、成形前に適切な温度で2〜3時間乾燥させることが必要です。
▼耐放射線性、耐紫外線性
放射線や紫外線に対して影響を受けにくい特性を有しているため、これらの環境に対して耐性が求められる航空機などの部品としても使用されています。
◇PEI(ポリエーテルイミド)の弱点
PEI(ポリエーテルイミド)は耐熱性が高く、劣化しにくいという性質のため、使う環境を比較的選ばないスーパーエンプラ(スーパーエンジニアリングプラスチック)です。しかし、次のようにいくつか弱点もあるので、使用時には注意が必要です。
▼有機溶剤に弱い
非結晶性樹脂の中においては耐薬品性に優れていますが、有機溶剤には侵される傾向があります。ガソリンやアルコールに対しては耐性を持っています。しかし、ほかの有機溶剤の使用は控えるようにしましょう。
▼耐摩擦性
優れた機械的強度を有している一方で、耐摩擦性が低いため、軸受やライナーなどの材料としては適していません。また、成形後に角部や薄肉部に衝撃、または強い力がかかると、ひび割れする可能性があります。
◇PEI(ポリエーテルイミド)とポリイミド(PI)の違い
PI(ポリイミド)は、超耐熱エンプラ(エンジニアリングプラスチック)とも言われる耐熱性に優れた熱硬化樹脂で、PEI(ポリエーテルイミド)と同じイミド結合を含む高分子です。しかし。結晶性樹脂である点がPEIとは異なり、また基本的な特徴や性質はほぼ正反対と言えます。
このほか、PEIはエーテル結合を含むため成形加工に優れており、射出成形や切削成形などで自在に成形できますが、PIはフィルムやコーティング材として電子回路や半導体の絶縁、航空宇宙分野で使用されるなど、特殊成形用途で用いられる傾向があります。
PEI(ポリエーテルイミド)の成形、加工
PEI(ポリエーテルイミド)は、エーテル結合の長所である流動性の良さという特性を有するため、耐熱性が高いスーパーエンプラの中では比較的成形や加工がしやすい樹脂です。
◇成形(押出成形、射出成形など)
合成樹脂の主な溶融成形法(押出成形、射出成形、ブロー成形、熱成形)に対応しています。また、射出成形時の溶融温度を350℃以上の高温にすることで、PEIの持つ剛性を最大限引き出すことが可能ですが、成形前にはペレット材料時に150℃前後で2〜3時間以上乾燥することが推奨されています。
◇加工(切削加工など)
PEIは切削加工も可能です。寸法安定性に優れているため、精密機器の製造にも適しています。ただし、PEIはノッチ感度が高いという特性があり、コーナーに十分な「R」を設けないと強度低下を招くおそれがあります。衝撃で欠けや割れが生じる原因となりますので注意しましょう。
さらに切削加工の際にバリが発生しやすいことから、送り速度や切削速度をほかの樹脂よりも少しゆっくり目に調整することが推奨されています。
接着加工も可能ですが、アクリルや塩化ビニルのような溶着ではなく、物理的な接合方法を行なうのが一般的です。
PEI(ポリエーテルイミド)の主な用途
PEI(ポリエーテルイミド)は機能性に優れ、成形加工も比較的容易に行なえるため、多くの分野で重宝されている素材のひとつでもあります。
◇自動車関係
近年、軽量化やコストダウンを目的とし、部品の素材を金属から樹脂素材に変更する傾向があります。PEIは耐熱性・耐薬品性などに秀でているため、スロットルボディやキャブレーター部品などに多く使用されています。
主な用途:
トランスミッションバルブ、スピードセンサー、スロットルボディ、ヘッドランプ、スピーカー振動板、イグニッション部品など
◇電子・電気関係
使用温度帯による制限がないため、ICパッケージのバーンイン試験(高温と高電圧でストレスをかけ、初期不良を事前に取り除く試験)ソケットに使用されます。また、優れた電気特性からブレーカーやスイッチなどにも使用されています。
主な用途:
コイルボビン、スイッチ、ボビンコネクタ、プリント基板、ブレーカー部品、バーンインソケット、プロジェクター、照明など
◇3Dプリンタ用造形材料
3Dプリンタ用造形材料(フィラメント)としても使用されていますが、出力するための溶融温度が高いため、対応する3Dプリンタを使用する必要があります。航空機や医療用器具部品として実用化されるほど、精度の高い造形が可能なのが特徴です。
◇その他
耐熱性や耐薬品性に優れ、劣化しにくいため日用品にも幅広い用途で使用されています。
主な用途:
ヘアドレッサー・ヘアアイロン部品、炊飯器などの家電、電子レンジ対応食器、メガネ、フィルムなど
PEI(ポリエーテルイミド)樹脂の将来性
近年PEI(ポリエーテルイミド)は、自動車や航空機部品の金属部品の代替素材として、急速にシェアを拡大してきています。またPEI市場の年平均成長率は、2030年までに約5%を示すとの予測がされています。
加工しやすく機能性の高いPEI樹脂は、今後ますます身近な素材として発展していくでしょう。
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