ものづくりプレス

2025-09-25

熱硬化性樹脂の概要と特徴

熱硬化性樹脂とは、一度熱をかけて固めると硬化し、それ以上は形状が変化しない樹脂のことです。固めたり溶かしたりがある程度自由にできる熱可塑性樹脂とは、強度面や耐熱面などで違いがあります。

当記事では熱硬化性樹脂の特徴や硬化の原理、熱硬化性樹脂に適した成形方法、熱硬化性樹脂の種類などを解説します。

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熱硬化性樹脂とは

熱硬化性樹脂とは、加熱によって硬化し形状が固定される樹脂のことです。  


この変化は不可逆であり、一度でも加熱して固まった熱硬化性樹脂は、再度加熱しても液体に変化することはありません。加熱による化学変化によって、三次元的網目構造(三次元架橋ポリマー)が形成され、樹脂そのものが強固になります。  


熱硬化性樹脂は、構造材料や電気絶縁材料、耐食材料といったものとして活用されています。

◇熱硬化性樹脂の主な特徴

以下では熱硬化性樹脂の「長所」と「短所」を踏まえ、熱硬化性樹脂の特徴を解説します。なお、より細かな特徴は熱硬化性樹脂の種類によっても変わるため、ここでは熱硬化性樹脂全体の傾向をご紹介します。  


▼長所 

熱硬化性樹脂の長所は次のとおりです。


・耐熱性に優れている

・機械的強度に優れている(とくにクリープ特性)

・耐薬品性に優れている 

・樹脂組成の大幅変更が可能であることから、充填剤や補強材の利用域が大きい

・寸法精度や設計の自由度がよい  


▼短所

熱硬化性樹脂の短所は次のとおりです。  


・成形・加工に時間がかかる

・一度固まると液体にならないため成形上の管理がシビアになる

・溶融しないのでリサイクル性が低い

・成形後のバリが出やすく仕上げ作業(二次加工)が必要になる

・塑性が弱いので一定以上の圧力がかかると脆い

◇熱硬化性樹脂が熱で硬くなる仕組み

熱硬化樹脂が熱で硬くなる仕組みは、先述のとおり加熱したことによる化学反応です。化学反応によって組織が三次元的網目構造、つまり組織があらゆる方向で結合し、立体的な網目状を作り出します。  


この網目が、熱硬化性樹脂に固さを与えます。

◇熱硬化性樹脂と熱可塑性樹脂との違い

樹脂の分類として熱硬化性樹脂の他に、熱可塑性樹脂が存在します。熱可塑性樹脂とは加熱すると液状に溶融し、冷却すると再び固まる性質を持つ樹脂です。  


「可塑性」とは、ある一定以上の力を加えると、力を取り除いても変形が残る性質のことです。イメージ的には「鉄板を曲げたりパンケーキを潰したりしたときに形が戻らない」が近くなります。この可塑性を持つ樹脂のことを「熱可塑性樹脂」と呼びます。熱硬化性樹脂はクッキー、熱可塑性樹脂はチョコレートによく例えられてきました。  


熱可塑性樹脂のメリットは、成形の容易さやリサイクル性の高さです。一方デメリットには、機械的強度や耐熱性などの低さなどが挙げられます。  


熱可塑性樹脂には、「塩化ビニール」「ポリスチレン」「ポリプロピレン」「アクリル」などが存在します。

熱硬化性樹脂の成形

熱硬化性樹脂の成形は、熱可塑性樹脂と比べて成形方法が限定されます。以下では熱硬化性樹脂の成形について「熱硬化樹脂の成形に適した3つの方法」や「主な成形方法」などを解説します。  


熱硬化性樹脂の成形に適した3つの方法

熱硬化性樹脂を成形する際は、以下3つの方法が適しています。  


・熱をかけて流動させて、熱によって徐々に硬化させる方法

・低粘度樹脂と硬化剤を混ぜ合わせたものを金型へ注入して硬化する方法

・低粘度樹脂をガラス繊維などの強化材に浸み込ませたものを硬化する方法  


熱硬化性樹脂は、熱可塑性樹脂と比べると加工がしづらい樹脂です。たとえば成形の工程で延伸などを伴う場合は、熱硬化性樹脂の成形に用いるのが難しいと考えられます。  



一度硬化するともとに戻せないという前提をもとに、成形方法の選定や製造工程の設置などを考える必要があります。

◇主な成形方法

熱硬化性樹脂の主な成形方法は次のとおりです。


 

熱硬化性樹脂の成形方法

概要

射出(インジェクション)成形

  • 液体の樹脂原料を金型に流し込んで一定時間加熱、固めて成形していく方法
  • 小さい製品や複雑な形状の製品を作るのに適している

トランスファー成形

  • 液体の樹脂原料をポットに流し込んだ後、ポットの樹脂原料に圧力をかけて金型に流し込んで成形する方法
  • 圧縮成形より硬化時間が短く済み、成形による歪みが少なくなる傾向がある

注型成形(キャスティング)

  • シリンダーの中で加熱・流動させた樹脂原料を金型内に射出して成形していく方法
  • 均質な品質で成形しやすく、小ロット・低コスト生産に適している

圧縮(直圧/コンプレッション)成形

  • 液体の樹脂原料を金型に流し込み、圧縮成形機でプレス・加熱して成形していく方法
  • 大型・厚みある製品を作るのに適しており、原料の無駄を少なくできる

積層成形

  • 樹脂原料を含浸させた紙や布、ガラス不織布などを必要枚数重ね合わせた後、熱と圧力をかけて成形する方法
  • 成形時にガスが発生するユリア・フェノール・メラミン樹脂は高圧積層成形、ガスが発生しない不飽和ポリエステル・エポキシ樹脂は低圧積層成形で成形する

FRP成形

  • 線維を型にセットしてローラーなどで樹脂を塗布して含浸させながら脱泡させるハンドレイアップ法や、線維と樹脂をスプレーガンから型に吹き付けてローラーなどで含浸させながら成形するスプレーアップ法がある
  • 複雑な形状や大きな製品を作るのに適している

発泡成形

  • 発泡性のプラスチックを成形して多孔質成形品を得る成形方法
  • 気泡の状態によって、得られる成形品の特性が変化する

 

熱硬化性樹脂にはブロー成形、カレンダー成形、延伸成形、真空・圧空成形などが用いられないので注意が必要です。


熱硬化性樹脂の種類と特徴、用途

以下では熱硬化性樹脂の主な特徴や耐熱温度、用途などをまとめました。



熱硬化性樹脂の種類

耐熱温度

特徴

主な用途

ポリイミド(PI

250300

  • 熱硬化樹脂中最高レベルの耐熱性と耐寒性
  • 優れた難燃性や耐薬品性、寸法安定性

断熱軸、電子部品、電気絶縁材料全般など

ウレタン樹脂(PU

80110

  • 発泡体と非発泡体が存在
  • 優れた耐摩耗性や弾性、耐油性
  • 発泡したもの:クッション、断熱材など
  • 発泡していないもの:工業用ロール、パッキン、ベルト、塗料など

シリコーン樹脂(SI

200、条件次第で約300400

  • 非常に高い耐熱性・耐寒性
  • 優れた撥水性、電気的特性、耐候性

耐熱・耐寒容器、コーティング剤、医療部品など

ジアリルフタレート樹脂(DAP

150170

  • 不飽和ポリエステルやエポキシ樹脂に似た特性を有する樹脂
  • 優れた電気的特性、寸法安定性、耐薬品性

電機コネクター、スイッチ、コイル、ブラグカバーなど

エポキシ樹脂(EP

200300

  • エポキシ樹脂と硬化剤の組み合わせ次第で多種多様な特性を得られる
  • 極めて優れた電気的特性、優れた加工性、保存安定性、寸法安定性

電気絶縁剤、プリント配線基板、塗料など

ジシクロペンタジエン樹脂(DCPD

120

  • 汎用エンプラ相当の強靭な物性を持つ樹脂
  • 優れた耐衝撃性、電気絶縁性に加えて軽量な樹脂

強靭な物性を求められる大型成形品など

キシレン樹脂

130140

  • さまざまな特性を改質できる樹脂
  • 粘着力。密着性、耐水性、耐薬品性、電気絶縁性などが付与可能

電気絶縁材、化粧板材料、ゴムの改良材など

メラミン樹脂(MF

120

  • ユリア樹脂と似たような性質を持つ樹脂
  • 優れた機械的強度、光沢、電気絶縁性、耐候性

食卓用品、化粧板、合成接着剤、塗料など

不飽和ポリエステル樹脂(UP

130150

  • 強化プラスチック用によく使用される樹脂
  • 優れた機械的特性、耐薬品性、電気絶縁性

浴槽、ヘルメット、コンテナ、波板など

ユリア樹脂(UF

8090

  • 尿素樹脂とも呼ばれ、熱硬化性樹脂のなかでは非常に安価な樹脂
  • 優れた電気絶縁性、難燃性、耐薬品性

スイッチ、コネクター、木工用接着剤、塗料など

フェノール樹脂(PF

120

  • 歴史上もっとも古いと言われている合成樹脂
  • 耐熱性、断熱性、耐水性、電気絶縁性などのさまざまな特性のバランスがよい

配電盤ブレーカー、キッチン用品、合成接着剤など


熱硬化性樹脂の特徴を知り適切な製品をつくろう!

熱硬化性樹脂は、熱可塑性樹脂のように固体と液体の状態を行き来ができず、一度固まると形状が固定化される樹脂です。  


成形の難易度や自由度が少し低いものの、優れた機械的特性や耐熱性を持っています。工業用製品から家庭用製品まで、さまざまな用途での使用が可能です。熱硬化性樹脂を用いた製品を製造する際は、適した成形方法を用いましょう。