ものづくりプレス

2025-09-15

ポリスチレンの概要と特性

ポリスチレン樹脂は、工業用のプラスチック樹脂のなかでも非常にポピュラーなものです。高い加工性や素材の軽さなどの要因から、食品用製品から建築用素材など、さまざまな業界で使用されています。  


当記事ではポリスチレン樹脂の特性や長所・短所、ポリスチレン樹脂の種類、ポリスチレン樹脂の用途などについて解説します。

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ポリスチレン(スチロール樹脂)の特性と長所・短所

ポリスチレン(スチロール樹脂)とは、スチレンモノマー[A1] を重合して作られたプラスチック樹脂の1つです。スチレンモノマーは、ベンゼンとエチレンを組み合わせたエチレンベンゼンを加熱して作られます。  


ポリスチレンが登場したのは1830年代。ドイツのシモンによって、天然樹脂から抽出された固形物として発見されました。アメリカやドイツで工業用の樹脂として使われだした1930年代から現代まで、約80年以上に渡って用いられ続けています。 

◇ポリスチレンの特性

ポリスチレンは加工性やコスト面などの特性を持つことから、生産性に優れたプラスチック樹脂として知られています。生産現場においる「五大汎用樹脂」の1つです(他の五大汎用樹脂は高密度および低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル)。  


ポリスチレンは、熱をかけるとチョコレートのように溶け、冷やすと固まる熱可塑性の樹脂です。その用途は非常に広く、電機・工業用や包装容器をはじめ、雑貨・産業用製品の原料として使われています。


また、ポリスチレンは「汎用タイプ」と「耐衝撃性に優れたタイプ」に分けられます。特性や用途に細かい違いがあるため、それぞれに応じて使い分けましょう。 

◇ポリスチレンの長所と短所

ポリスチレン全般の長所(メリット)と短所(デメリット)を以下でまとめました。  


▼ポリスチレンの長所

ポリスチレン全般の長所(メリット)は次のとおりです。


・比重が約1.04~1.07と、比重1未満のポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)に次ぐ軽量性

・優れた絶縁破壊強さや体積抵抗率、ならびに誘電率と誘電正接の低さなどによる高い電気絶縁性(電気をほぼ通さない)

・性能が変化しづらいことによる優れた再利用性(リサイクルしやすい)

・溶融粘度の低さ(流動性の高さ)、溶融時の熱安定性、着色の自由度の高さ、寸法安定性などによる優れた加工性

・無味無臭

・耐放射線性などへの耐候性

・アルカリ、酸、塩類などへの耐薬品性に優れる など  


透明性や軽量性、加工性など、5大汎用樹脂と呼ばれるほど、生産性において優れた物性を持ってることがわかります。  


▼ポリスチレンの短所

ポリスチレン全般の短所(デメリット)は次のとおりです。  


・石油系や中鎖脂肪酸などには弱い

・硬いが脆いという耐衝撃性に難あり

・軟化温度が低い(60~80℃)  


ポリスチレンは原則として、溶剤や油への耐性が低めです。また、剛性を持つ反面、ガラスのような脆さを持っています。

◇ポリスチレンの加工法

ポリスチレンは自身の加工性の高さから、さまざまな方法を用いての加工ができます。射出成形、粉末成形、発泡成形などです。ブロー成形や圧縮成形、真空成形にも対応しています。  


ポリスチレンの成形加工時には、以下の点に注意します。  


・樹脂の分解が始まる280℃未満に成形温度を保つ

・加工前に異物が混入しないようにする

・原則としてポリスチレンに乾燥は必要ないものの、乾燥が必要な場合は70~80℃で約3時間の乾燥を行う など


ポリスチレン(スチロール樹脂)の種類と特徴

ポリスチレン(スチロール樹脂)の種類と特徴について解説します。


◇ポリスチレン(PS)の種類と特徴

ポリスチレンには(PS)には、主に「汎用ポリスチレン(GPPS)」「耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)」の2種類が存在します。 


▼汎用ポリスチレン(GPPS)

汎用ポリスチレン(GPPS)とは、一般的なタイプのポリスチレンです。非結晶性を持つGPPSは、他の汎用樹脂と比べても透明性に優れています。  


GPPS独自の特性は次のとおりです。  


・ガラスに近い光透過性を持った透明性を持つ

・発泡が容易で、かつ断熱効果が高くなる

・衝撃に弱い  


▼耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)

耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)とは、スチレンモノマーにブタジエン系のゴムなどのゴムを共重合させたポリスチレンです。色は乳白色の半透明です。  


耐衝撃性の名称のとおり、GPPSの短所である耐衝撃性を向上させています。ただし、GPPSより透明性や耐熱性が低下しています。  


透明性が必要となる製品の場合は、透明性を改善した透明HIPS[A3] を利用しましょう。

◇発泡ポリスチレン(発泡スチロール)

発泡ポリスチレンとは、いわゆる発泡スチロールのことです。GPPSに微細な泡を発泡させた後、固化させて作り出します。発泡ポリスチレン全般の特性は次のとおりです。  


・断熱性能が非常に優れている

・空気が98%を占める構造であるため、非常に軽い(水に浮く)

・軽量にもかかわらず耐久性に優れている ・容易に成形や切削ができる、非常に高い加工性を持つ

・耐熱性が低い(90℃で溶融する)

・耐油性、耐薬品性が低い



断熱性や加工性が容易であることから、断熱材として使ったり、氷を入れて魚を運搬する容器としたりなどの用途があります。  


発泡ポリスチレンは、さらに「ビーズ法発泡スチロール」「ポリスチレンペーパー」「押出ポリスチレン」に分類できます。   


▼ビーズ法発泡スチロール(EPS)

ビーズ法発泡スチロールとは、無数にあるビーズ状の小さなポリスチレンがお互いに癒着しあうことで成形する発泡ポリスチレンです。一般的な発泡スチロールのイメージになります。  


成形方法としては、まず直径約1mmのポリスチレン樹脂にブタンやベンタンなどの炭化水素ガスを吸収させます。その後、100℃以上の蒸気で加熱してポリスチレン樹脂を発泡させ、発泡させたビーズ同士を融着させて固めます。  

発泡工程にて、ビーズは約50倍にも膨らみます。  


▼ポリスチレンペーパー(PSP)

ポリスチレンペーパー(PSP)とは、ポリスチレン樹脂を数倍から数十倍に発泡させ、シート状に加工したものです。  


あらかじめ熱で溶融させたポリスチレン樹脂にガスや発泡剤を加え、押出機などを用いて引き伸ばします。その後、引き伸ばしたポリスチレン樹脂を、必要な大きさにカットしたり、ロール状に巻いたりして製品に仕上げます。  


▼押出ポリスチレン(XPS)

押出ポリスチレン(XPS)とは、押出機による押出成形を行った発泡ポリスチレンです。一般で流通する製品用というより、マンションや住宅の断熱材や畳の芯材などの建築用として用いられます。  


建築基準法に則した、安全性や断熱性、気密性などを持つ点がXPSの特徴です。  


ポリスチレンと難燃化剤、発泡剤などを溶かして混ぜた後、押出発泡成形や押出成形を行い生産します。難燃化剤を使用している分、他のポリスチレン樹脂製品より燃焼に強いのもXPSのメリットといえます。  


XPSはPSPよりも発泡率が高く、おおよそ50倍~100倍に上ります。  


▼発泡ポリスチレンと発泡ウレタンの違い

発泡ウレタンとは、ウレタン樹脂を発泡ポリスチレンと同じように発泡させて作られたものです。断熱材や充填剤として使用されます。  


発泡ウレタンは発泡ポリスチレンと比べると価格が高いものの、厚みが薄くても優れた断熱性を発揮する点がメリットです。断熱性に関しては、発泡ウレタンのほうがよい傾向が見られます。  


発泡ウレタンのなかには、工場現場ではなく建築現場で発泡させて利用するタイプがあります。現場で発泡させたものを、そのまま壁の内側などの隙間に吹き付け、断熱材として用いるのです。  


工場で製造された発泡ウレタンは、発泡ポリスチレンのようにシート状に生産されるのが一般的です。

◇ポリスチレン(PS)と他樹脂との違い

ポリスチレン(PS)のほかにも、さまざまなプラスチック樹脂が存在します。以下では他樹脂の特徴をまとめました。


樹脂名

加工性

耐熱性

耐衝撃性

耐薬品性

電気特性

比重

ポリエチレン(PE

90

酸、アルカリ、有機溶剤どれにも強い

絶縁

0.910.93

ポリプロピレン(PP

120

酸、アルカリ、有機溶剤のどれにも強い

絶縁

0.900.91

ポリエチレンテレフタレート(PET

80

酸には強いが、アルカリに弱い

絶縁

1.381.39

ポリカーボネート(PC

130

化学物質全般に弱い

絶縁

1.161.2

アクリル樹脂(PMMA

105

酸、アルカリには強いが有機溶剤に弱い

絶縁

1.161.2

ABS樹脂

80

薬剤全般に弱い

絶縁

1.031.04



あくまで参考値です。   以下では、それぞれの樹脂の主な用途をまとめました。  


・ポリエチレン(PE):フィルム、バケツ、灯油タンク、ポリ袋、ラミネートなど

・ポリプロピレン(PP):台所用品、風呂用品、荷造り用の紐、テレビなど

・ポリエチレンテレフタレート(PET):ペットボトル、卵用のパック、ビデオテープなど

・ポリカーボネート(PC):CD、ノートパソコン、カーポートなど

・アクリル樹脂(PMMA):液晶ディスプレイ、テールランプ、メガネのレンズ、時計のガラスなど

・ABS樹脂:家具、家電、OA機器、おもちゃ、雑貨、プラモデルなど

ポリスチレン(スチロール樹脂)の用途

ポリスチレン(スチロール樹脂)の用途は、汎用ポリスチレン(GPPS)・耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)・発泡ポリスチレン(発泡スチロール)によって異なります。  


GPPSは、主にコップやコンビニのお弁当ケース、惣菜用の容器など、大量生産されるものに利用されます。HIPSは、耐衝撃性が求められる家電やOA機器のハウジング材・内部部品、食品用の梱包容器などです。  

発泡ポリスチレンは、断熱材や緩衝材などに用いられます。ビーズ法発泡スチロール(EPS)は保冷用容器や食器トレーに、ポリスチレンペーパー(PSP)はカップラーメンの容器や食器トレー、押出ポリスチレン(XPS)は建築用の断熱材や緩衝材などです。  


また、昨今の環境やゴミ問題に対応した、紙51%・樹脂49%配合のポリスチレンペーパー(PSP)も存在します。

ポリスチレン樹脂で効率的な生産を

ポリスチレン(PS)は、軽量かつ電気絶縁性に優れており、加工性もよいことからさまざまな製品に用いられています。  


汎用ポリスチレン(GPPS)・耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)・発泡ポリスチレン(発泡スチロール)それぞれで特徴や用途が異なるので、自社で製造予定の製品の特徴に合わせたポリスチレン樹脂を選定しましょう。