ものづくりプレス

2025-08-30

ガス透過性とは・ガス透過性の高い素材

みなさんは「ガス透過性」という言葉を聞いて、どのような性質のことか、すぐにイメージすることができるでしょうか。専門知識をお持ちの方でなければ、実際のところピンとこない方も多いかもしれません。ガス透過性を活用した製品は、実は身の回りでたくさん使われています。今回は具体的な活用事例と共に、ガス透過性について知っておきたい基本的な情報をお伝えいたします。 


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そもそも「ガス透過性」とは?ものづくりに必要な性質とその理由

「ガス透過性」とは、簡単にいえば、分子レベルの物質層や膜にガス(気体)を通過させる性質のことで、通過させる働きが大きいほど”ガス透過性が高い”と表現されます。ガス(気体)には多くの種類がありますが、透過性の対象とされるものには、酸素(O₂)や二酸化炭素(CO₂)をはじめ、窒素ガス(N₂)・水素ガス(H₂)・ヘリウムガス(He)・メタンガス(CH₄)などが挙げられます。


一方、ガスを通過させにくい性質は”ガス透過性が低い”と表現され、透過度がより小さいほど”ガスバリア性が高い”と言い換えることができます。ガスバリア性を示す対象としては、主に窒素ガス(N₂)・酸素(O₂)・二酸化炭素(CO₂)の3種が用いられます。


こうしたガス透過性やバリア性を利用した製品は、工業製品や食品・医療品の劣化防止パッケージなど、さまざまなシーンで活用されています。つまり気体(ガス)の透過性は、ものづくりの現場で非常に注目される性質といえます。


では、素材の透過性の違いや活用例にはどのようなものがあるのでしょうか。 

透過性が高い素材にはどんなものがある?その働きは?

ゴムやプラスチックなどは、一見すると気体を通さない素材のように見えますが、分子と分子の間にはごくわずかな隙間が存在し、その部分を気体が通過していきます。例えばパンパンに膨らませたはずの風船が、時間がたつとクタクタにしぼむ状態も、同じ働きによるものだと言えます。以下で具体的に、ガス透過性が高い素材や製品にはどのようなものがあるのか、一例を見てみましょう。

◇樹脂 (ここでは合成樹脂=プラスチック)

 ▼軟質ポリ塩化ビニル(PVC)  

製造段階で硬さを調節することができ、容易に切る・曲げる・溶接するといった加工がしやすい汎用性の高い素材です。燃えにくく、酸素の透過度は300~1100mlと、ガス透過性が高い性質を持っています。  


【活用例】傘・レインコート、浮き輪、ホース、農業用資材(ビニールハウス)、ほか多数  


▼ポリエチレン(PE)

非常に軽くて成形がしやすいながら、耐水性もある素材です。家庭では馴染みの高い素材としてキッチン回りなどを中心に、安価で幅広く使われています。高密度(HDPE)と低密度(LDPE)の2種があり、低密度のものは特に3900~13000mlと、酸素の透過性が高いので、青果の保存に向いています。  


【活用例】使い捨て手袋、洗剤やチューブ式調味料の容器、パイプ、漁網、コンテナ、各種食品包装、ゴミ袋、保護フィルム、ほか多数  


▼ポリスチレン(PS)

安くて成形性があり使いやすいのですが、硬くてややもろいという弱点もあります。この汎用ポリスチレン(GPPS)のもろさを改善したものが、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)です。別名はスチロールと呼ばれ、数あるプラスチック素材の中でも、最高位の耐放射線性(耐候性)を持つ素材です。フィルム状の延伸ポリスチレでは53900mlの酸素透過度がみられるなど、ガス透過性の高さが特徴です。  


【活用例】食品パック、液体調味料などのミニ容器、ゲーム機、OA機器、カップ麺のカップ、ほか多数  


▽OPSフィルム

酸素ガス透過性の高いポリスチレンを、加熱時に縦と横に延伸加工した、レタスなど青果の鮮度保持に非常に有効なフィルムです。"とれたて"に近い状態で保管可能な強みがあります。


【活用例】売り場に陳列する農産物の包装(レタスやイチゴほか)、封筒の窓、表示・封緘用のテープ、ほか多数

◇ゴム

 ▼シリコーンゴム(SR)

高度の耐熱性や耐薬品性など優れた性質を多く有するため、自動車・食品・医療現場での製品にも広く利用されています。金属を傷つけにくい使い勝手の良さで、調理用器具としても今ではマストな素材です。ガス透過度は、酸素で400~500ml[A1] 、二酸化炭素で1600ml~など、透過性が高いゴムです。  


【活用例】お玉や菜箸などの調理ツール、家電製品のパッキン、マウスピース、キャスターの車輪、キーボードカバー、ほか多数   ▽シリコーンハイドロゲル[A2] (SH)  以前からコンタクトレンズに使われているヘマ素材に、ガス透過性の高いシリコーンをあわせた素材です。酸素透過度が非常に高く目への負担も低いということで、酸素透過性ソフトコンタクトレンズに使用されています。   【活用例】ハイスペックソフトコンタクトレンズ、ほか  


▼スチレンブタジエンゴム(SBR)

天然ゴムの代用として開発され、ゴム全体の8割のシェアを誇る合成の汎用ゴムです。弾力や強度には優れていますが、耐熱・耐油性には劣ります。ガス透過度は、酸素で13~34.5ml[A3] と高めです。  


【活用例】車のタイヤ、運動用品、シューズ類、ほか多数  


▼エチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM)  

非常に生産量の多い、寒さにも水分にも強い万能タイプの石油系の合成ゴムです。酸素ガスの透過度は16.5~46.6ml程度あります。  

【活用例】水道配管・自動車のパッキン、窓、電線、ほか多数

透過性が低い素材にはどんなものがある?その働きは?

前述したように、ガス透過性が低いという表現は、通常ガスバリア性が高いと表現されます。透過率の低い素材には、自家用車のタイヤに使われるようなゴム素材や、接続部分や開閉部分で気密性を保つゴムパッキン、食品の品質劣化の原因となる酸素等をカットするためのビニールやフィルムなど、たくさんの種類があります。また、コーティングを施したり、気密性の高い素材をあわせて多層化[A1] させるなど、包装する内容物を守るための研究も盛んです。ものづくりの現場ではこうした技術を活かし、よりバリア性を強化させた新製品が開発され続けています。


では具体的に、ガス透過性が低い素材や製品を見てみましょう。  

◇ゴム

 ▼ブチルゴム(IIR)

気体を通しにくい(天然ゴムの5分の1以下)だけでなく、衝撃エネルギーを吸収したり、電気の絶縁性や耐熱性が高いなど数々の特性を持つ、工業用になくてはならない素材です。  


【活用例】タイヤのインナーチューブ、スポーツ用のボール、家電の防振防音材、絶縁テープ、医薬品用ゴム栓、ほか多数  


▼ウレタンゴム(U)

摩擦や強度にたいへん優れており、強力な圧力のかかる部分にもよく利用される合成ゴムです。酸素の透過度は7ml程と、ガスバリア性の高い素材として、モノづくりの現場で重宝されています。  


【活用例】ソリッドタイヤ、高圧ゴムパッキン、カップリング、ほか多数  

◇樹脂 (ここでは合成樹脂=プラスチック)

▼ナイロン(ONY)

食品などの包装用に使われることが多い素材で、耐寒性にも優れています。延伸と無延伸タイプがありますが、どちらも酸素ガス透過度は30~110ml[A1] 程と、ガスバリア性の高さを誇ります。わずかに劣りますが、透過性の近い素材にはポリエステルもあります。  


【活用例】冷凍食品、レトルトパウチ、コーヒー豆の包装、ほか多数  


▼エチレン-ビニルアルコール(EVOH)  

ポリエチレンに比べて、1万倍以上のバリア性を誇る素材です。透明性が高く、溶剤や化学物質なども通しませんが、高湿度環境での吸水で、ガスバリア性が低下する弱点もあります。


【活用例】ガソリンタンク、劇薬(農薬ほか)の容器、真空断熱板、食品の包装材、ほか多数


▽透明蒸着フィルム

シリカ(酸化シリコン)などを蒸着でコーティングした透明の多層フィルムで、ガスバリア性に優れ、酸素透過度は6~12mlとわずかです。


【活用例】スナック菓子・レトルトパウチなど食品包装、医薬品の包材、ほか多数

◇アルミ

▼アルミニウム(Al)

ガス透過性はなく、防湿性や遮光性も高い用途の広い素材です。アルミニウムを薄く伸ばしたアルミ箔は、キッチンの必需品としても身近な製品のひとつです。  


【活用例】アルミ箔、ほか

透過度はこうして測る!”ガス透過性試験 ”

ところで、分子レベルの物質層を通過するガスの量は、いったいどのように計測されているのでしょうか。ゴムやプラスチックといった工業製品の透過度を把握するには、試験片を透過するガスの量る専門を測的な方法が実施されています。ここでは、「差圧法」と「等圧法」に分けられる主な試験についてご紹介いたします。

◇測定に使われる試験方法 の一例

▼差圧法

・圧力センサ法

高圧側にガスを導入し、低圧側を真空に保って透過したガス量や圧力の変化を測る方法で、高感度で測定することが可能です。    


・ガスクロマトグラフ法

測定する素材を境にして、高圧側にガスを導入し、透過側は減圧状態で濃度の変化を測る方法で、高感度で測定することが可能です。  


▼等圧法

・モコン法

素材の気圧を等しく保ちつつ、分圧差で透過した分子をクーロメトリックセンサーで検知する方法です。  


▼【知っておきたい予備知識】“JIS規格” って?透過性の試験にも規格がある!

上でご紹介した透過率を測る試験には、実はそれぞれ「JIS」という文字列で始まる番号が付与されています。JISとは、正式には「Japanese Industrial Standards(日本産業規格)」と表記され、日本の産業標準化法に基づいて制定される任意の国家規格です。こうしたガス透過性を測る多くの試験法も、生産効率の向上・品質の確保・安心安全の確保・環境保護など多様な観点から判断され、経済産業省からその品質・性能・安全性などが認められた測定方法です。JIS規格は、安全かつ正しい測定のため、欠かせない指標といえるのです。

◆参照:経済産業省HP日本産業標準調査会HP 

ガス透過性のまとめ

今回はガス透過性についての概念や、具体的な製品事例の一部など、基本的な知識をご紹介しました。日常生活では、目に見えないガス透過性について意識する機会は少ないかもしれません。ガス透過性が活かされ、高い技術が集約された小さなゴム製品や樹脂の加工品は、多くの場合、目に触れにくい場所で優れたパフォーマンスを発揮しているからです。こうしたモノづくりの技術は、人々の生活を下支えし、ますます便利で豊かなものへと導いてくれるはずです。これを機にいろいろな製品の透過性に注目し、製品製造の際にもぜひお役立てください。