ものづくりプレス
2025-05-05
バイオマスプラスチックとは
バイオマスプラスチックは再生可能な有機資源を含むプラスチックです。2050年カーボン
ニュートラルの実現に向けて期待の目を向けられているバイオプラスチックの一種でもあ
ります。自社製品にエコフレンドリーな素材を使いたいと考えている方へ、バイオマスプ
ラスチックの種類やメリット・デメリット、主な製品・用途について解説します。
◇バイオマスプラスチックとは
バイオマスプラスチックとは、植物などの有機資源を含んだプラスチックのことです。
CO2排出量を増やす原因となる従来型の合成プラスチックのように石油のみを原料としな
いことで、カーボンニュートラル社会の実現に貢献できる次世代のプラスチックです。
◇バイオマスプラスチック
従来の化石由来な合成プラスチックと異なり、植物などの「再生可能な有機資源」=「バ
イオマス」を原料として製造するプラスチックを総称して「バイオマスプラスチック」と
いいます。生分解性の有無は問いません。(混同を避けるために生分解性のないバイオマ
スプラスチックのことを、非生分解性バイオマスプラスチックと区別する場合もありま
す。)
※一部、化石由来のバイオプラスチックもあります
原料となる主な有機資源はサトウキビ・とうもろこし・ジャガイモなどの、デンプン・糖
を多く含む植物です。廃棄時に燃やされて「排出されるCO2(二酸化炭素)」と、原材料
である植物が光合成で「消費するCO2」がイーブンになることでカーボンニュートラルを
達成できるので、結果的に環境に負荷を与えないエコフレンドリーな素材であるとされて
います。
◇生分解性プラスチック
生分解性プラスチックは、自然界に存在する微生物が二酸化炭素と水に分解できるプラス
チックです。従来の合成プラスチックは自然環境ではほとんど分解されないため、ポイ捨
てや不法投棄などで自然界に放置された場合、数百年も地中や海中に残ってしまったり、
廃棄時にも大量のCO2を排出することになったりと環境破壊につながる要因を複数持って
います。
しかし、生分解性プラスチックは微生物によって完全分解・一定数分解されるものがあり
ます。分解へのトリガー(条件)は様々ありますが、環境に優しいとされています。
生分解性プラスチックは生分解される性質をもったプラスチックの総称なので、原料は化
石由来・植物由来を問いません。
◇生分解性バイオプラスチック
生分解性バイオプラスチックは名前の通り「生分解性」の性質を持ち「バイオマス原料」
で作られたプラスチックです。生分解性の機能を持っているので、非常に環境に優しく、
次世代のプラスチックとして期待されています。
後述するポリ乳酸(PLA)は最も実用化が進んでいる生分解性バイオプラスチックとして
知られています。
行われています。
現在、
問題の救世主として、海中で生分解性を発揮する海洋生分解性バイオマスプラスチックの
研究が急ピッチで進められています。
◇植物由来バイオプラスチックの主な原料
バイオプラスチックは先述したとおりサトウキビやとうもろこし・ジャガイモなどのデン
プン・糖を多く含む有機資源から作られます。それらの資源から抽出されたポリマーがバ
イオプラスチックの原料となるのです。
バイオプラスチックの代表であるポリ乳酸(PLA)と、今後実用化が期待されているデン
プン・セルロース原料についてご説明いたします。
ポリ乳酸(PLA)は生分解性バイオプラスチックに最も使用されている原料です。とうも
ろこしやサトウキビなどの物からデンプンや糖分を抽出したものを発酵させ、精製・重合
するとポリ乳酸が出来上がります。
コンポスト(堆肥をつくる容器のこと)や適度に高温多湿な土の中に埋めることで加水分解
され微生物による生分解が行われます。従来の合成樹脂と比較して、耐熱性や強度、対環
境性が劣ることから、機能面での研究・開発が進められています。
近年では植物由来の天然ポリマーであるデンプン・セルロースを原料とした、海洋生分解
性プラスチックも開発されました。開発した大阪大学大学院工学研究科によれば、優れた
耐水性と高強度を実現しつつ、海水中での高い生分解性を実現し、早期実用化が期待され
る新素材であるとのことです。
原料となるデンプン、セルロースはバイオマス資源の中でも特に注目されている資源です。
デンプンはトウモロコシやジャガイモなどに含まれ、非可食部分から精製することも可能
です。セルロースは植物繊維の主成分で、地球上で最も多く存在する炭水化物です。共に
非常に安価なこともメリットとしてあげられます。
◇バイオマスプラスチックの種類
現在実用化されているバイオマスプラスチックは2つに分けることができます。1つは
100%バイオマス原料から作られた「全面的バイオマス原料プラスチック」、もう1つは
原料の一部をバイオマス原料に置き換えて作る「部分的バイオマス原料プラスチック」で
す。
全面的バイオマス原料プラスチックには、先述したポリ乳酸(PLA)やデンプン・セルロ
ースで作られるプラスチックが含まれます。今後はポリブチレンサクシネート(PBS)、ポ
リブチレンサクシネートアジペート(PBSA)などの生分解性プラスチックを、100%バイオ
マス原料へ切り替えることが期待されています。
部分的バイオマス原料プラスチックは、
バイオマス原料を一定のパーセンテージ以上使用している部分的バイオマス原料プラスチ
ックは、ロゴマークを表示することもあります。たとえば、日本バイオプラスチック協会
(JBPA)では重量に対して「バイオマス原料が25%以上の製品」、一般社団法人日本有
■バイオマスプラスチックのメリット・デメリット
バイオマスプラスチックはカーボンニュートラル社会の実現に向けて、SDGsの観点から
もメリットが多くあります。しかし、技術面やコスト面ではまだまだ課題があるのも事実
です。
◇メリット
有機資源から作られるバイオマスプラスチックは、廃棄時に焼却処分されたとしても、原
料として用いられる有機資源の植物が光合成時にCO2を吸収することからカーボンニュー
トラルが実現でき、地球温暖化対策・脱炭素社会の実現に向けて貢献できます。また、限
られた資源である石油をつかわず、再生可能な植物資源から作ることができるのも地球に
優しくサステナブルな点がポイントです。
◇デメリット
普及への大きな課題としては、コストの問題があります。現在バイオマスプラスチックは
石油由来の合成プラスチックの1.5〜5倍程度のコストがかかります。また、PLAなどの生
分解性バイオマスプラスチックは、まだ物性の面で課題が残ることもあり、高コストでは
導入を見送る企業が多い模様です。
また、従来の合成樹脂と比較して生産できる工場も多くないことから、流通の段階でも取
り合いになっており、安定供給も難しいとされています。
今後、食糧難になった時に、原料のバイオマス資源が食料作物や耕作地の競合を招くこと
で食糧難や価格高騰を悪化させる恐れがあるのではないかとも指摘されています。
■バイオマスプラスチックの主な製品・用途
近年、SDGsの取り組みの一環としてバイオマスプラスチックの使用を検討する企業が増
えてきています。中でも
・レジ袋
・食品パック
・プラ製スプーン
など、使い捨てのプラスチック製品の多くはバイオマスプラスチックで作られるようにな
ってきています。
また、農業と生分解性プラスチックはとても相性がよく、農地を覆うマルチフィルムや育
苗箱に生分解性部分的バイオマス原料プラスチックを用いる取り組みが広まっています。
■バイオマスプラスチックの今後(まとめ)
スチックでできたゴミ袋が推奨されるようになりました。また、環境省が作成した持続可
能なバイオプラスチックの導入を目指す『バイオプラスチック導入ロードマップ』では
2030年までにバイオマスプラスチックを約200万トン導入することを政府目標としていま
す。
2021年4月1日より施工された、プラスチック資源循環促進法がこれらの環境を加速させ
ようとしています。
地球温暖化を防止するために限りある資源を守り脱炭素社会の実現を急ぐ必要があり、バ
イオマスプラスチックは、環境問題を考えながら文化的な生活を維持するために最適な解
決方法のひとつです。
未来の地球を守るためにも、バイオマスプラスチックを導入し、地球に優しい製品作りを
心がけましょう。
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