ものづくりプレス
2024-07-20
磁性ゴムの材料や作り方、用途
ゴムと磁石粉末、磁性粉末などを混ぜて作られるのが磁性ゴムです。磁性ゴムはさまざまな用途で用いられますが、用途に応じた原料選びが重要です。磁性ゴムの製造を検討している人のために、磁性ゴムの材料や製造方法、磁性ゴムの用途について解説します。これからの磁性ゴムの製造や材料選びにぜひ役立ててください。
▪️磁性ゴムとは
ゴムの中でも、磁気や磁性を有するものが磁性ゴムです。
磁石はご存じのように金属製の物質に吸着する物質です。この性質を利用してテレビボードの扉や家電製品のフタなどにも用いられています。
しかし、磁石には柔軟性がない、落とすと割れる、重いといった弱点があります。任意の形に折り曲げることもできません。これらの弱点をおぎなえるのが磁性ゴムです。柔軟性が高く加工も容易なため、さまざまな用途で使用できます。
▪️磁性ゴムはどう作られる?
もともとゴムは磁性や磁気を持っていません。そのため、磁性ゴムを製造することはなかなかイメージが付かないという人も多いのではないでしょうか。磁性ゴムの材料や、加工方法について解説します。
◇磁性ゴムの材料
磁性ゴムの材料は、各種ゴムに磁性のある粉末を混ぜて作られます。磁性ゴムの用途や形状に応じて、以下の材料が使われています。
ゴム原料
・天然ゴム
・クロロプレンゴム
・ブチルゴム
・シリコーンゴム
・ニトリルゴム
・塩素化ポリエチレンゴム など
粉末材料
・磁石粉末
・磁性粉末
・研磨剤
・高比重粉末
・低比重粉末 など
◇磁性ゴムの作り方
磁性ゴムは以下の工程で作られています。
1.ゴムと粉体を混錬する
2.混錬した材料をシート状にする、もしくは押出か型によって成形する
3.加硫する
4.必要に応じて抜きや切断で加工する
5.着磁(磁化)する
磁性のある材料を混練するだけでは磁力を得ることはできません。これらを磁石のように磁気のある製品にするために、着磁という工程が必要になります。
着磁して磁気特性の強いものは、ゴム磁石はハードフィライトと呼ばれます。破損に強く欠けにくい、磁気の強さを活かしてマイクローモーター用などに使用されています。
シート状の磁性ゴムはソフトフィライトと呼ばれ、吸収材やシールド材として使用されます。必要に応じてカットも可能です。
▪️磁性ゴムの用途例
磁性ゴムの用途は、大きく二つに分かれます。磁性によりゴムにものが引き寄せられる、密着するという性質をうまく利用するケース、ゴムの加工のしやすさを活用したケースです。おもな磁性ゴムの用途を具体例とともに解説します。
◇ガスケット
磁性ゴムは密封性、気密性の高いガスケットとして使われることもあります。冷蔵庫用、配電盤のドアなどに使用されます。
◇防音材
製缶作業(金属板を加工し、骨組みや容器などを製造する作業)では、金属同士が触れ合うため大きな音が出ます。製缶作業などの際、騒音を防止するために磁性ゴムが防音材として使用されます。シート状の防音ゴムの磁気を利用して金属板や加工物に吸着させることで、騒音を防止します。
◇磁気による搬送・除去
磁性を利用して、搬送や鉄粉の除去にも使用されます。たとえば、シート状の磁性ゴムをコンベアにセットすれば、磁性を利用して搬送したいものを吸着できます。しっかり固定できるのはもちろん、取り外すことも簡単です。工場内のベルトでの運搬中にズレが生じると困るシーンなどで用いられます。
鉄粉などのこまかいものを除去する場合にも磁性ゴムが役立ちます。ただし、油のなかにある鉄粉を除去する機会も多いため、耐油性の高いゴムを磁性ゴムの材料として選ばなければいけません。
◇回転検出用動作マグネット
ビデオプレーヤーやディスクプレーヤー、テープレコーダーなどの回転式録音再生機やエンジンなどの原動機は、回転数や速度を検出するためにマグネットが使用されています。ただし、回転検出用動作マグネットは形状が複雑、大きい回転数に耐えられるものが求められます。そのため加工が容易で耐摩耗性も付与できる磁性ゴムが用いられています。
◇計器用マグネット
自動車の速度計やタコメーターなど、計器には微調整のために磁石が使用されています。計器用マグネットには鋳造アルニコ磁石(アルミニウム、ニッケル、コバルトを鋳造して作る磁石)が使われますが、ややコストが高いです。コストを下げるために、磁性ゴムが計器用マグネットして使われることも多くなりました。
◇モーター用マグネット
モーターのステーター(モーターの回転部分であるローターに力を送る部分)はリング状であることが必須のため、磁石を用いると加工がむずかしく、どうしてもモーター全体が大きくなってしまいます。このモーター用マグネットに磁性ゴムを使用することで、モーターの小型化も可能になりました。
◇スピーカー用マグネット
マイクロカセット用、薄型スピーカーなど小型、軽量型のスピーカーのマグネットには磁性ゴムが使用されています。また、イヤホンのマグネットも磁性ゴムが活用されています。
◇医療用マグネット
表面磁束密度500ガウス以上の医療器具用マグネットとして磁性ゴムが使用されています。磁気ネックレスやバンド、小さい磁気治療薬などにも加工のしやすい磁性ゴムが活用されています。
▪️磁性ゴムは工業製品から日用品まで活用されている
磁性ゴムの特徴や概要、材料や作り方、種類ごとの用途について解説しました。磁石は磁気や磁性を活かして、吸着力や精密機器の微細な調整などにも役立つ一方、加工がむずかしく破損しやすい、といった弱点があります。柔軟性が高く加工しやすい磁性ゴムは、いろいろな形状の機器に使用できる、機器の小型化や薄型も可能になるなどのメリットがあります。材料として使用する合成ゴムや粉体を選べば、さまざまな特性をつけられるのも魅力です。用途に応じた磁性ゴムの材料を選びましょう。
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