ものづくりプレス

2025-07-05

オレフィン系とは? 樹脂やエラストマーについて

炭素と水素が結合したオレフィン構造を持つ樹脂やエラストマーは、その特性からさまざまな分野で広く使われています。また燃焼しても有害な物質が発生せず、安全性が高いのもその理由のひとつです。

この記事では、オレフィンと、オレフィン系の樹脂とエラストマーの特徴と用途について解説します。


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■オレフィン系の「オレフィン」とは


オレフィンは、二重結合を持つ不飽和炭化水素の総称で、正式名称はポリオレフィンと言います。炭素と水素の化合物であるため、燃焼させると最終的に水と二酸化炭素に分解され、有害物質は発生しません。

◇オレフィン系樹脂(ポリオレフィン)とは


オレフィン系樹脂とは、特定の樹脂を指すのではなく、炭化水素の二重結合を持つ樹脂をまとめた呼び方です。結晶化の程度により異なる物性を示すのが特徴で、硬質・軟質の性質を持たせることができるほか、容器やフィルムなどさまざまな形状に対応できます。

もっとも代表的なのはポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)で、ほかにもEVA(エチレン酢酸ビニル共重合体)やポリメチルペンテン(TPX)などがあります。

◇オレフィン系樹脂の特徴

オレフィンを持つ樹脂は、ほかの樹脂には見られない特徴があります。


▽オレフィン系樹脂の長所

汎用性の高いオレフィン系樹脂は、主に以下のような長所を持っています。

・比重が軽い

・機械的強度(耐衝撃性、引張強度、引裂強度など)が高い

・耐薬品性が高い

・防水性や防湿性が高い

・優れた加工性 

など 


▽オレフィン系樹脂の短所

主な短所は以下のとおりです。

・耐熱性が低い

・剛性に劣る

・クリープ特性(荷重に対する時間経過による変形程度)が低い 

など

◇オレフィン系樹脂の用途


形状や硬度を柔軟に調節できるオレフィン系樹脂は、主に以下のような用途に使用されています。

・各種ラップ、シート、フィルム

・各種容器(シャンプーやリンスなど)

・食品容器、食品チューブ

・ガソリンタンク

・ケーブルなどの被覆材

・建設資材

・繊維 など  


このほか衝撃を吸収する柔軟性や、一般に短所と考えられている低温環境下での変形しやすさなどの特性を生かした目的で使用されることもあります。

■オレフィン系熱可塑性エラストマーについて


一般に樹脂は熱を加えると軟化する熱可塑性、反対にゴムは加熱により硬化する熱硬化性の性質を持っていますが、この中間の性質を持つゴム状の弾性体がエラストマーです。熱可塑性樹脂と同じ加工に対応し、常温ではゴム状の弾性を示すため、使いやすい素材でもあります。ゴムと比較して比重が低い、加工性が高い、コストが安いなどの特徴を持っていますが、強度は劣ります。


◇オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)とは

オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)は、塩ビ系エラストマー、スチレン系エラストマーと並び「三大熱可塑性エラストマー[A1] 」と呼ばれる代表的な熱可塑性エラストマーのひとつです。

耐熱性や耐寒性に優れ、高い耐候性・耐オゾン性を示します。また耐摩耗性をはじめ、耐油性、永久圧縮歪、耐屈曲性などが低いのが短所です。

◇オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)の種類と特徴

熱可塑性エラストマーは、樹脂の性能を示すハードセグメントと、柔軟性や弾性などのゴム成分を持つソフトセグメントで構成されており、オレフィン系ではハードセグメントとして主にポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)を使用します。またこれらをどのように配合するかにより、大きく2つのタイプに分けることができます。  


▽TPO(非架橋タイプ/単純ブレンドタイプ)

ハードセグメントとしてポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン樹脂、ソフトセグメントに非架橋性であるエチレンプロピレンゴム(EPM/EPDM)を混合したエラストマーです。中でもポリプロピレンとの組み合わせが一般的で、比重が低く、耐候性や耐オゾン性に優れているのに加え安価であることから、自動車の外装などに多用されます。しかしその反面で、耐摩耗性や耐油性が低く、また圧縮永久ひずみ性が大きいという欠点があります。  


▽TPV(動的架橋タイプ)

架橋剤を加えて混合したタイプで、ソフトセグメントにはポリプロピレン(PP)のほか、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブチルゴム(IIR)などが使用されることもあります。TPOの欠点を補うよう改良されており、架橋ゴムの代替として用いることも可能です。   なお、TPVを含むすべてのオレフィン系熱可塑性エラストマーをTPOと呼ぶこともあります。

◇オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)の用途

ゴムのような弾性を持ち、プラスチックとしての加工が可能なことから、オレフィン系熱可塑性エラストマーは身の回りの幅広い製品に使用されています。

・自動車関係:

ウェザーストリップ、バンパー、エアホース、ダクトホース、ブーツ、シート表皮材

・家電・電気関係:

パッキン、電線ケーブルのカバー、ホース(洗濯機、掃除機など)、コード

・建築関係:

防水シート、ガスケット、フィルム

・日用品:

筋膜リリース用ローラー、デスクマット、名札ケース、文房具類、歯ブラシ

など

■汎用性の高いオレフィン系樹脂とエラストマー


オレフィン系の特徴は樹脂とエラストマーで異なりますが、比重の軽さと安全性は共通しています。そして何よりも加工性に優れていることから、いずれも汎用性が高い素材と言えます。両者が持つ性質や機能を理解し、使い分けることで、高品質な製品づくりへとつながります。 オレフィン系樹脂やエラストマーに関する質問やご相談は、お気軽に当社までご連絡ください。