ものづくりプレス

2024-06-10

発泡ゴムとは

工業用製品から生活用品まで、幅広く用いられているのが発泡ゴムです。その種類はいくつかあり、特徴も異なるため、製品に適した発泡ゴムを選ぶことが重要になります。 この記事では、発泡ゴムの種類やそれぞれの特徴、用途などについて解説します。

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■発泡ゴムの種類


発泡ゴムとは、内部に気泡が入っているゴムのことです。細胞のように多数の「気泡の部屋」を持つ構造から、多孔質ゴム(セルラーゴム)とも呼ばれています。原料ゴムに発泡剤を混ぜ、加硫することで気泡をつくります。  


発泡ゴムは、フォームラバー(連続気泡)、軟質ウレタンフォーム(ポリウレタンフォーム)、ゴムスポンジ(独立気泡)の3種類に分けることができます。

◇フォームラバー(連続気泡)


合成ゴム天然ゴム機械などで攪拌して泡立て、硬化後に加硫してつくられた発泡ゴムです。メッシュ状の断面をイメージするとわかりやすいかもしれません。

気泡同士が繋がった構造のため通気性が高く、反発力に優れているのが特徴です。強く押しても戻ろうとする力が強いため、寝具や家具などのクッション部分に多く用いられています。さらに、吸水性が高さに加え、気泡の粗さが表面の汚れ落としに向いていることから、コンクリートなどの洗浄に使用されることもあります。

◇軟質ウレタンフォーム(ポリウレタンフォーム)


液状ゴムを化学反応させ、生じたガスで発泡させてつくります。フォームラバーと比較して成形しやすく、より軟らかな性質を持つため、押した際の反発力が高いのが特徴です。 主な用途は、フォームラバーと同じくソファやベッドのクッション材、また車両インテリア用の大きめのクッション材などです。またその吸水性を活用して、パッキン材やシール材のほか、緩衝材、建物や住居の防音材、断熱材などにも使用されます。


◇ゴムスポンジ(独立気泡)

連続気泡とは異なり、気泡の部屋が独立した構造を持つ気泡密度が0.1~0.3g/cm3ほどの発泡ゴムです。気泡の部屋同士が離れているため外部へ空気を逃しにくく、断熱性が優れている反面で、吸水性が低いという特徴があります。  


なお一般には、固形ゴムを原料として作られた発泡ゴムを「スポンジ」、液状ゴムを原料としたものを「フォーム」と呼びますが、総称してスポンジゴムと呼ぶこともあります。

■発泡ゴムの特性

発泡ゴムには、以下の6つの代表的な特性があります。これらの特性は、発泡ゴムの種類や使用する原材料のゴムによって異なります。

◇高反発性


外部からの力をはね返すことを反発と言います。発泡ゴムは柔軟な性質を持つため、反発力が高いのが特徴です。この高反発性を生かし、緩衝材や保護材、クッション材などに使用されます。中でも連続気泡の発泡ゴムは反発性に優れており、種類としてはクロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)などが相当します。


◇非吸水性


発泡ゴムの中で独立気泡の構造を持つものは、水を吸収しにくいという特性があります。その気密性の高さから、食品や薬剤などに触れるパッキンやシール材によく使用されています。特に非吸収性に優れたゴムの種類には、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPDM)などがあります。

◇耐熱性、耐寒性


概してゴムは耐寒性が低いという性質を持っていますが、ブタジエンゴム(BR)の場合はほかの合成ゴムよりも良好です。また熱に対しては、フッ素ゴム(FKM)が非常に高く、エチレンプロピレンゴム(EPDM)が比較的耐熱性に優れています。これ以外に、シリコーン(Q、SI)系のゴムの場合では、マイナス60℃から200℃程度までの温度に対する耐性があり、幅広い温度下で使用することができます。

このように、使用する合成ゴムの種類によって、発泡ゴムに高い耐熱性や耐寒性を持たせることができます。

◇断熱性

発泡ゴムは、気泡を含む構造上の理由から熱伝導性が低く、高い断熱性を示します。特に独立気泡体タイプの発泡ゴムは、保湿性も非常に優れていることから、保湿・保冷材や断熱材としての用途に適しています。

◇耐候性

エチレンプロピレンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)などの合成ゴムは、太陽光や雨・風など、天候による要因に対して変形、劣化、退化、退色などの変化を起こしにくい性質を持っています。そのため、これらを原料とした発泡ゴムは概して耐候性が強く、屋外で使用するシール材やパッキン、クッション材などに適しています。

◇耐油性、耐薬品性


ゴムの耐油性とは、主に石油から合成される鉱物油に対するゴムの膨潤や収縮などの変形・変質の程度を評価したものです。これには、ガソリンやスチレン、ブタノール、クロロホルムなど、物質を溶かすために使用する触媒である溶剤に対する耐性が含まれることもあります。また同様に、各種薬品に対する耐性を評価したものが、耐薬品性です。 発泡ゴムは、使用するゴムの種類により、これらに対して高い耐性を示すものがあります。

それぞれの耐性に優れた主な合成ゴムは以下のとおりです。

■耐油性:フッ素ゴム(FKM)、ニトリルゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)

■耐溶剤性: エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)※一部の溶剤を除く

■耐薬品性:フッ素ゴム(FKM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)  


耐油性や耐薬品性に優れた発泡ゴムは、薬剤や油のシール材やパッキンとしても多く使用されています。

■発泡ゴムの用途例


発泡ゴムは、その特性を生かして、さまざまな用途に用いられています。


◇各種タイヤ


空気入りタイヤと同じようなクッション性に加え、中が空洞ではなくパンクの心配がないことから、キャスターなどのタイヤに利用されています。また発泡ゴムの気泡が持つ吸水性を生かし、凍結した道路表面の水膜を取り除いてスリップを防ぐ自動車用スタッドレスタイヤにも使用されており、ブリジストンなどから発売されています。

◇防音シート


連続気泡発泡ゴムは、いくつもの気泡同士が繋がった構造になっています。外部から入り込んだ音エネルギーはこれらの気泡の壁に何度も当たりながら減少していき、再び外に戻りにくくなります。この仕組みを利用し、連続気泡発泡ゴムは防音シートなどの吸音材としても使用されます。

◇低反発製品(寝具、家具、衝撃吸収材、制振材)


弾性と粘性を兼ね備えた性質を持つ軟質ウレタンフォームの中でも、特に粘性を高め、弾性を抑えたものが低反発フォーム(低反発弾性フォーム)です。圧力を加えた後、ゆっくりと元に戻るのが特徴で、局所的な圧力を全体的に分散する特性も併せ持っています。そのため、マットレスや枕などの寝具や、ソファ、椅子などの家具のほか、衝撃吸収・緩衝性や制振性などのエネルギー吸収性を利用して、梱包資材などの用途としても使用されています。

■素材や種類によって特性や用途が異なる発泡ゴム


使用するゴム原料の種類によって、発泡ゴムとしての特性は異なります。また、射出成形や圧縮成形はパイプやホースに適し、金型成形では表面に被膜を持つ軟らかい感触の製品ができるなど、成形方法の違いも適性や特徴、用途などを決める重要な条件になります。 発泡ゴムの特徴を充分に理解し、用途に合わせた材料や加工方法の選択が、優れた製品づくりにつながります。発泡ゴムについて、さらに詳しく知りたい場合は、豊富な経験と実績を持つ当社までお問合せください。