ものづくりプレス

2025-06-05

ゴムが静電気を通さないのはなぜ?

普段の生活ではあまり気にしない静電気ですが、モノづくりの現場にとっては製品の品質にも関係する重要な問題です。そのためゴムが多用されていますが、なぜゴムが電気を通さないのご存知ですか。

この記事では、静電気が発生する仕組みと対処法、ゴムが静電気を通さない理由などについて解説します。


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▪️静電気発生のメカニズム



◇静電気が発生する原因



あらゆる物質は、プラスとマイナスの電子を持っています。通常は、双方の数のバランスが取れているため安定していますが、物質同士が接触(衝突)すると、いずれかの電子が相手の物質に移動します。この電子数のバランスが崩れた不安定な状態を「静電気」と言います。静電気状態の物質は、ほかの物質と接触した際に元に戻そうとして失った分の電子を引き寄せるように働きます。このとき、電子の移動により起こるのが「放電」と呼ばれる現象です。人が静電気で痛みを感じるのは、この放電による感電が原因です。一般には、これも含めて静電気と呼ぶことが多いようです。


◇静電気が発生する原因

静電気(放電も含む)は異なる物質同士の間に起こりますが、その原因は大きく3つに分けることができます。


▼接触

物質が持つマイナス電子は、ほかの物質と接触しただけでも移動します。これを接触帯電と言います。この際、電子を放出した側はプラス、受けた側はマイナスに帯電します。


▼剥離

異なる物質が接触している状態から離れる(剥離する)際に、接触帯電と同じ原理で静電気が発生します。例えば、テープやシールを台紙からはがす際や、食品ラップなどでよく見られる現象です。



▼摩擦

摩擦は物質同士をこすり合わせることですが、原子レベルで見ると「接触」と「剥離」が激しく繰り返されている状態です。そのため、摩擦による帯電量は、接触帯電よりもはるかに多くなります。

▪️静電気対策、静電気を除去する方法



静電気は、ホコリなどを引き寄せて製品の品質や機械の作動に影響を与えたり、塗装を付きにくくしたりするほか、火花放電が発生した場合は火災などの原因にもなります。このような静電気による影響を受けないためには、静電気を発生させない、または静電気の放電や帯電、導電を防ぐための対策を行なうことが大切です。


◇アース(接地)


電気を通す性質を持つ物質に対して有効な方法です。この物体と地面をアースで繋げると、電子が行き来して帯電状態にある物質の電子バランスが取れ、安定した状態になります。


◇湿度調節


湿度が高いと、物体に表面に付着した水分が誘電層を形成することで電気が逃げやすくなります。湿度が高いほど静電気が散乱する時間が短くなりますが、過度な加湿は機械や製品などに悪影響を与える可能性があるため、湿度調節の際は注意が必要です。


◇静電気防止グッズ


帯電しやすい物質に対して、帯電防止スプレーなどを使用したり、床に帯電防止用マットを敷いたりすることで静電気の発生を抑えることが可能です。また人であれば帯電防止用の靴やリストバンドの着用なども有効です。


◇除電機(イオナイザー)


除電器(イオナイザー)は、物体が帯びている電気と反対のイオン(電気を帯びた粒子)を発生させてぶつけることで、電気的に中性の状態に戻す機械です。電気を通さない物質に対しても使用することができます。


▪️ゴムが静電気を通しにくい理由


すべての物質は電子を持ち、また静電気が発生します。しかしなぜゴムが電気を通しにくいのかを説明する前に、電気の通しやすさは物質が持つ性質によって異なることを、理解しておく必要があります。


◇物質で異なる電気の通しやすさ


物質は、電気の通しやすさによって「導体」「半導体」「絶縁体」に分類することができます。この違いは、原子の結合から離れて自由に動き回れる自由電子の数によります。


▼導体

原子は電子核と電子から構成されていますが、導体はこの結合が弱いため自由電子の数が多く、電気を通しやすくなっています。代表的な導体には、銅、アルミニウム、金、銀、鉄、黒鉛などがあります。


▼半導体

導体と絶縁体両方の特性を持つ物質です。集積回路のことも同じく半導体と呼んでいます。半導体物質そのものはほとんど電気を通しませんが、特定の元素との組み合わせなどにより絶縁性が変化するという特徴があります。主にシリコンが相当します


▼絶縁体

電子核と電子の結びつきが強く、自由電子が存在しないため、電気をほとんど通さない物質です。ゴム、ガラスなどが絶縁体に含まれます。

◇ゴムは絶縁体


前述のとおり、ゴムは絶縁体物質です。ゴムが持つ原子の原子核と電子の結合は強く、電気を伝えるように働く自由電子が存在しません。そのため、ゴムはほとんど電気を通しませんが、極高電圧をかけたり、導電性を持つ薬剤などを加えたりした場合は通電することもあります。

絶縁性に優れたゴムには、シリコーンゴム(VMQ)、ブチルゴム(IIR)、フッ素ゴム(FKM)、エチレン・プロビレンゴム(EPDM)などがあります。またゴム以外で同じような性質を持つ物質には、ガラス、プラスチック、木、セラミック、木などがあります。


絶縁体としてのゴムは、主に以下の用途で使用されています。

・電線などのカバー

・絶縁ゴムシート、ゴム板

・建築用、医療用などのゴム部品

・安全手袋、靴

・梱包資材 など


◇ゴムの帯電を逃す方法


ゴムのような絶縁体物質であっても、帯電することに変わりはありません。これを防ぐには、帯電防止剤の使用や表面を導電性のある金属で覆うなど、表面電気抵抗を低下させる方法と、カーボンブラックなどの導電剤(体)を付与して電気を通しやすくし、帯電を緩和させる方法があります。


▪️ゴムは「絶縁体」の代表


「たかが静電気」という考えは、モノづくりの上では通用しません。例えば作業現場で静電気が発生した場合、ホコリを引き寄せることで製品不良が生じたり、最悪の場合は火災を引き起こしたりする原因にもなりかねません。この静電気の発生の防止に役立つのが絶縁体であるゴムです。電気を通しにくい性質を持つ種類のゴムは、絶縁体の代表のひとつとして汎用的に使用されています。 しかしゴムは静電気を通さないだけであって、実際には帯電します。可能性こそ低いものの、何かの拍子に問題を起こさないとも限りません。そのため、ゴムが持つ絶縁性について理解し、過信することなく正しく使用することが大切です。不明な点などがあれば、専門家に相談しましょう。