ものづくりプレス

2025-05-30

再生ゴムとは?概要や用途を解説

工業製品を中心に、幅広く利用されているのが再生ゴムです。タイヤやマットなど、さまざまな用途で活用されていますが、利用するメリット以外にデメリットも存在します。本記事では、再生ゴムの特徴から普及した背景、用途まで解説していくので、ゴム製品に携わる方はぜひ参考にしてください。

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■再生ゴムとは


使用できなくなったゴム製品に再び粘着性・可塑性をもたせるため、物理的・化学的処理を加え、原料ゴムとして使えるようにしたものを再生ゴムと呼びます。再生ゴムの製造過程の一例としては、下記の通りです。

1.ゴムを洗浄し、異物や異材を取り除く

2.クラッカーロールに通し、粗砕する

3.グラインダーロールに通し、粉末状にする

4.かくはん機で再生剤と粉末ゴムを混合する

5.圧力容器で脱硫する

6.リファイナーロールで粒状のゴムをすり潰し、粘着性・可塑性を与える

7.金網でこして異物を取り除く

8.シューティングロールで可塑性を増し、ゴムをシート状にする

9.冷却・巻き取りを行い、再生ゴムは完成

再生ゴムは高分子鎖が切断しており、機械的強度は劣ります。単体で利用するケースは少ないですが、膨張・収縮が起きにくいため、加工性に優れているのが特徴です。

■再生ゴムの特徴


再生ゴムには、利用するさまざまなメリットがありますが、デメリットも存在します。ゴム製品に利用する際は、必ずデメリットも押さえておきましょう。

◇再生ゴムのデメリット


再生ゴムのメリットとしては、下記のような点が挙げられます。

・ゴムの流れが良く、押出工程の作業性が向上する

・優れた可塑性で混練時間の短縮、動力消費の削減を期待できる

・安定した可塑性で、製品の均一性保持が高い

・加工中の発熱が少ないため、スコーチを引き起こしやすい配合に有効

・加硫時の速度変化が少なく、平たん性もあるため、安定性が高い

・耐老化性・耐油性に優れている

・大型タイヤの主原料となり、カーボン・酸化亜鉛の配合量を少なくできる

再生ゴムを配合する際、作業のしやすさや効率性向上、ゴム製品の品質保持など、多種多様なメリットがあると分かります。また、再生ゴムながら耐老化性・耐油性が高いため、ゴム製品の性能を向上できるとして評価され、幅広い用途に活用されているのも特徴です。

加えて、再生ゴムを利用するとコスト削減も見込め、製造工程面・品質面以外でも大きなメリットがあると言えます。

◇再生ゴムのデメリット


再生ゴムのデメリットとしては、下記のような点が挙げられます。

・屈曲亀裂性が低い

・耐摩耗性が低い

・弾力性・引張強度・引裂強度が低い

・圧縮永久ひずみが悪い

再生ゴムはコストを抑えられますが、一部強度面の低さが課題であることを覚えておきましょう。 

■再生ゴムが普及した背景


ここでは、再生ゴムが普及した背景を、歴史と現在を踏まえて解説していきます。

◇再生ゴムの歴史


日本で再生ゴムの工業化が進められたのは、昭和初期です。再生ゴムの需要が増加したのは第二次世界大戦時で、天然ゴムが物資の統制品となり、加えて輸入も困難な状況だったため、代替品として再生ゴムが利用されました。しかし、当時は再生ゴムの材料自体の品質が悪く、急激に増産したことも影響し、決して良質な再生ゴムではなかったようです。 昭和30年代には、日本でタイヤ・チューブの生産が始まりましたが、その工程でくずゴムが大量発生し、再生ゴムの製造も活発化しました。昨今、廃棄物を適正にリサイクルすることが重要視されている一方、ゴムの再利用は古くから行われていたと言えます。

◇現代の再生ゴム


現代における再生ゴムの消費量は減少傾向にあり、その背景には天然ゴム価格の低位安定が影響しています。コストの低さが売りであった再生ゴムのメリットが薄れ、加えて加工助剤として利用されるケースも多いため、配合量が減少し、需要も低下しているのが実情です。

世界で見ると、中国が膨大な量の再生ゴムを製造・消費しています。日本の再生ゴムの年間消費量は約2トンですが、中国は年間約300万トンの再生ゴムを消費しており、およそ150倍です。中国で再生ゴムが注目される理由としては、下記のような点が挙げられます。

・天然ゴム・合成ゴムの半額以下で、コストを削減できる

・天然ゴムの需要に供給が追い付いていない

・ゴムに対する品質要求が低い

・再生ゴムメーカー数が多い

・再生ゴム産業・研究が活発的

中国の再生ゴムは安価であるのに対し、天然ゴム・合成ゴムは2倍以上のコストがかかり高価なため、必然的に需要が増加しています。また、性能が低い再生ゴムでも、中国ではゴムに対する品質要求が低く、多少物性が悪い場合でもゴム製品は許容されるのが一般的です。

日本では、再生ゴムの消費量こそ減少していますが、輸入量は年率10%ペースで増えています。中国製も多く、国内の再生ゴムの3分の1は輸入品です。今後も、再生ゴムの輸入品に頼ることが予想されます。 

■再生ゴムの用途


次に、工業製品を中心に利用される再生ゴムの、具体的な用途を見ていきましょう。

◇タイヤ

 再生ゴムの用途として比較的多いのが、自動車・二輪車・自転車などのタイヤ製品です。自動車のタイヤにおいては、サイドトレッド部・ビードフィラー部・インナーライナー部・フラップといった部位に利用されています。

原料コストの削減や製造時の電力消費を抑えられるため、タイヤ再生ゴムを販売するメーカーも多いですが、強度や耐摩耗性の低さが難点です。設計強度の低いタイヤや許容度の大きいタイヤ、寿命が短く設定されたタイヤなどに、再生ゴムは採用されています。 ただし、日本におけるタイヤ用途の再生ゴムの利用は年々減少しており、現在は天然ゴムの割合が多いです。

◇ゴムホース・ゴムベルト

日本では、自動車部品のゴムホースや産業用のコンベアベルトに、再生ゴムを利用しています。コンベアベルトで見ると、以前は再生ゴムを配合すると物性の低下を引き起こすため、品質要求の低い分野に限り、採用されていました。

しかし、近年は再生ゴムの品質や配合技術が向上し、産業用としても利用する企業が多いです。具体的には、シビアリティが比較的低い砕石・セメント・木材チップなど、バラ物の運搬に利用するコンベアベルトに、再生ゴムの配合が進んでいます。

◇ゴム板

パッキン材や滑り止め、防振マットなどの用途で利用されるゴム板にも、再生ゴムが採用されています。一般向けのゴム板用途にも利用され、コスト削減を図る企業も多いです。

◇防水シート

防水シートには、再生ゴムがよく使用されています。例えば、ブチル防水シートやEPDM防水シートには、再生ゴムが多く配合されており、雨水などによる劣化を受けにくいのが特徴です。

◇耐油性ゴム製品

ニトリルゴム(NBR)再生ゴムを配合し、耐油性をもたせたゴム製品も生産されています。耐油性は主に自動車部品で必要とし、中国ではニトリルゴム再生ゴムの生産も多いですが、日本ではほとんど生産されていません。

理由として、再生ゴムの品質は向上している一方で、まだまだ性能にばらつきがある点が挙げられます。また、原材料が明確ではないため、物性要求の高い日本では利用の機会が少ないです。

■まとめ


再生ゴムは再生資源原料として、古くから活用されています。性能面は天然ゴムに劣る部分があり、日本では消費量も減少していますが、作業の効率性向上などメリットも非常に多いです。

さらに、再生ゴムは多様な用途で利用され、配合することでコスト削減も見込めます。ゴム製品を扱う企業様は、一度再生ゴムをチェックしてみてください。