ものづくりプレス

2025-05-10

オイルブリードの影響と活用

ゴム製品を使用していると、突然表面がベタついたり滑りやすくなったりなどが起こることがあります。ゴム表面に油分がにじみ出る「オイルブリード」という現象かもしれません。


当記事ではオイルブリード(およびブリードとは)についてや、オイルブリードの影響、オイルブリードを利用したゴム製品について解説します。

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■オイルブリードとは


ブリードとは、ある製品・壁面に含まれる可塑剤(製品を柔らかくしたり加工しやすくしたりするために配合する物質)や軟化剤、加工助剤、油などの配合剤の成分が、製品・壁面の表面へ液体としてにじみ出てくる現象をいいます。  


シリコン製の腕時計が、時間が経つにつれてベタつくようになってしまったことはありませんか? これも、表面に油がにじみだしたことによって生じた現象であるケースが多いです。   つまりゴム製品におけるブリードとは、ゴムから分離した成分がゴム表面に液体としてにじみ出す現象のことです。オイルブリードは成分のうち、オイル(油分)が表面ににじんだ際にそう呼びます。あくまでブリード現象の1つと捉えておきましょう。  


ゴム製品にも柔軟性や弾性、耐寒性、耐屈曲性などを付与するために可塑剤や軟化剤を配合します。そのためゴム製品とブリードによるトラブルは、現場にとって切り離せない問題といえます。

◇ブリードとブルームの違い


ブリードと同じような現象としてブルーム(ブルーミング)があります。ブルームとは、ゴム製品に含まれる配合剤が結晶化し、表面に白っぽい粉として発生する現象です。老化防止剤といった配合剤が、原料ゴムと相性が悪いと発生します。 


簡単に言えば、ブリードは「液体としてにじみ出る現象」のに対し、ブルームは「固体として発生する現象」です。どちらもゴムから分離した成分が表面に出ていることに変わりはありません。

◇オイルブリードの原因 と防止


オイルブリードの主な原因は、原料ゴムのポリマーとオイルの相溶性が悪く、配合段階でうまく溶け合っていなかったこととされます。またゴム製造時に練りが甘かったり、時間が足りなかったりすると起こりやすいようです。  


とはいえ、ブリードの原因については完全には解明されていません。挙げた例は、あくまで主原因の1つだと考えられています。  


製造する前に相性を考慮した原料ゴムとオイルの組み合わせを考えたり、十分に混ざり合う製造工程を整えたりする必要がありますので、ブリードしない製造のためには試行錯誤と経験と技術が必要になります。  


上記のようにブリードはゴムの製造段階での問題が原因になるため、現場や家庭などの完成品を使う場では発生を防げません。   次の項目では「発生した後にどうすればよいか」も紹介いたします。

■オイルブリードが起こったら


もしオイルブリードが起こったときに問題が発生する場合は、速やかな除去が必要です。

◇オイルブリードによる影響・問題


オイルブリードの発生によって考えられる悪影響は次のとおりです。  



●液体で滑るため、クリップやクランプで締めても装着が不完全になる

●部品へゴムを組み込むときに滑ってうまく固定できなくなる

●にじみでた液体が別のゴムやプラスチックに移って、変形や亀裂、軟化などの原因になる

●手触りや外観が悪くなる など  


上記の影響が原因で、製造時のトラブルにつながったり、製品の品質が落ちたりなどの問題が出てきます。


◇オイルブリードの除去方法


もしゴム表面がベタベタしてオイルブリードの発生が確認できたときは、油分をうまく除去する方法が効果的です。具体的にみていきましょう。  


●重曹で拭き取る

●エタノールで拭き取る

●プラスチック用の洗浄スプレーを使う  


とはいえ根本の原因が製造段階にあるため、あくまで一時的な対処です。オイルブリードの発生が止まらないのであれば、新しいゴム製品と取り替えましょう。

■オイルブリードを活用したゴムもある


オイルブリードの影響は通常、製造において悪影響になります。しかし最近ではオイルブリードの特性を生かし、あえてオイルブリードさせたゴム製品が登場しています。

◇オイルブリードを生かした「オイルブリードシリコンゴム」


オイルブリードシリコンゴムとは、ゴム製造時に原料ゴムと混ざりにくい非相溶性のオイルを添加し、オイルブリードをわざと発生させるゴムのことです。  


当然、ゴム表面に油がにじみ出てきます。しかし逆に言えば、このゴム製品は自己潤滑性が高く、普通のタイプより滑りの良いゴムになります。  


オイルブリードシリコンゴムを利用するメリットは次のとおりです。  



●滑りが良いためゴム部品の交換がやりやすくなる

●摩擦性が低いので他の機械部品にくっつきづらく、ゴムの摩耗や機械部品のキズを防げる

●空気中にあるオゾンや酸素などのゴム製品を劣化させる物質から、油膜によって防御する(耐候性や寿命を向上させる) など

◇オイルブリードシリコンゴムの使用例


オイルブリードシリコンゴムは、装着や交換が難しい箇所のパッキンやガスケットなどに最適です。具体的には以下のとおりです。 



●小さな端子や細いコネクタの防水用のシール部品

●L型や曲がり部分など特殊な形状で交換がしづらい異型のパッキン・ガスケット

●電線などの小さな線を被覆する用のゴム(滑りがないと電線を中に通すときにひっかかって作業しづらい)

など

■ゴム製品のブリードとうまく付き合った製造を


ブリードはゴム表面に油や可塑剤などがにじみ出て、表面をベタつかせたり滑りやすくしたりさせる現象です。ゴム製品本来の役割を阻害する、摩擦性能を失わせるなどの影響があります。しかし最近は、あえてブリードさせて潤滑性能を得るオイルブリードシリコンゴムも重宝されています。  


現場のゴムはブリードを防いだほうが良いのか、最初からオイルブリードシリコンゴムを 使うのかなど、導入担当者は事前に検討しておきましょう。