ものづくりプレス

2025-07-10

ゴムに似た弾性持つ樹脂「エチレン酢酸ビニル(EVA)」

ゴムに似た弾力性を持つエチレン酢酸ビニル(EVA)。低温でも硬くなりにくい特性を持ち、軽量で耐久

性が高いことからサンダルや長靴、靴のソール素材として重宝されています。また、口に入れても無害な

のでチューインガムの原料としても使用されています。


この記事では、性能による特徴や主な成形方法など、エチレン酢酸ビニルについて解説します。

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■エチレン酢酸ビニル(EVA)とは

エチレン酢酸ビニル(EVA)とは、エチレン(Ethylene)と酢酸ビニル(Vinyl Acetate)を共重合させ

た熱可塑性合成樹脂です。柔軟性や弾力性に富み、低温でも硬くなりにくいのが特徴で、ゴムやシリコ

ン、LDPE(低密度ポリエチレン)などと類似した性質を持っています。


また、エチレンと酢酸ビニルの含有比により特性が異なり、酢酸ビニルの含有量が多くなればなるほど

ゴムに近い特性を持ちます。

■エチレン酢酸ビニルの特徴

原料となるエチレンと酢酸ビニルは、どちらも適度な柔軟性を持つエラストマー重合体なので、溶融体

時の安定性・流動性が良く、加工しやすいという特徴があります。


また原料モノマーはいずれも安価であり、今後はますます供給が安定化することが予測されていること

から、低コストで大量生産できる可能性が期待されています。

◇性能による特徴

エチレン酢酸ビニルの外観は、エチレンを原料とするLDPE(低密度ポリエチレン)とほとんど変わりま

せん。しかし、加圧や加熱によってフィルムを溶融密着させるヒートシール性については、低温でもLDPE

より高い性能を持っています。


このほか、軽量で耐水性に優れているなどメリットが多く、用途が広い合成樹脂です。

エチレン酢酸ビニルの主な性能・特性は以下のとおりです。

▼熱的性質・低温特性

マイナス20℃から60℃の環境下で連続使用が可能です。未架橋のため耐熱性が低く、高温では熱によ

る変性が起こりやすいというデメリットがあります。しかし低温でも硬くなりにくく、高いクッション

性を保つことができます。

▼耐候性・耐オゾン性

ゴムやPVC(ポリ塩化ビニル)に比べ、エチレン酢酸ビニルは耐候性に優れています。風雨や紫外線に

さらされ続けても劣化しにくいので、人工芝など屋外使用される製品の原料として重宝されています。


耐オゾン性も高く、オゾン老化現象も起こりません。

▼耐薬品性

弱酸性薬品やアルカリ性薬品など、各種の無機・有機薬品に対しては比較的耐性が強く、安定した性質を

持っています。


しかし、トルエンなどの芳香族化合物やクロロベンゼン、テトラクロロエチレン、ガソリンなどの鉱物油

には浸されてしまうため、注意が必要です。使用する場合は事前テストを行ないましょう。

▼軽量性

比重が約0.95と、PVC(ポリ塩化ビニル)に比べ軽いので、製品の軽量化を図ることができます。また、

発泡形成することにより軽さと弾力性の両方を兼ね備えるため、靴底や自動車の部品用の素材としても

注目されています。

▼環境性

熱を加えると軟化する熱可塑性樹脂であるためリサイクル性に富むほか、塩素を含まないので加熱して

も環境ホルモン(ダイオキシンなど)が発生しません。また、可塑剤がなくても高温で溶けることから、

移行汚染の心配もありません。


ただし、燃やすと熱分解により酢酸が発生します。

▼その他の特性

エチレン酢酸ビニル(EVA)は、エチレンと酢酸ビニルの含有比を変えることで異なる性質を持たせるこ

とができます。酢酸ビニル(VA)の含量比が低いと耐摩擦性、剛性、電気絶縁性などが向上し、反対に

高い場合は柔軟性、ゴム弾性、透明性、接着性などが上がります。


流動性や接着性に優れていることからホットメルトとして汎用的で、特に紙や木、プラスチックに対す

る接着性は良好です。しかしながら、金属や無機質物の接着には向いていません。


全般的にゴムやビニルポリマーと同様に、弾力性に富み引裂強度や衝撃強度共に高い性質を持ちますが、

顔料を混ぜて着色できる点においてはゴムよりも装飾性に優れています。また耐水性も高く、長靴や防

水靴の素材としても適しています。

◇毒性や人体への影響は?

エチレン酢酸ビニル(EVA)は、毒性を持つ塩素や環境ホルモンを含まない無毒な樹脂です。日本の食品

衛生法で使用を認められているほか、FDA(アメリカ食品医薬品局)でも認可されています。


その安全性から、幼児のおもちゃやスタイ(よだれ掛け)、食品包装紙や紙コップのコーティング以外に

も、チューインガムのガムベースとしても、エチレン酢酸ビニルが使用されています。

■エチレン酢酸ビニルの加工方法と加工方法別用途

エチレン酢酸ビニルは熱可塑性樹脂であり、原料となるペレットを熱で溶かし、冷却固化して成形しま

す。 原料のペレットに含まれる酢酸ビニル(VA)量が多くなるほど剛性や融点が低くなり、透明性・柔

軟性・ヒートシール性が高くなる一方、少ない場合は剛性が増すなど、エチレンと酢酸ビニルの比率によ

り性質が変化します。


エチレン酢酸ビニルの主な加工方法と加工方法別の用途は以下のとおりです。

◇射出成形

原料ペレットを加熱溶融し、金型(キャビティ)に射出した後に冷却固化させます。


エチレン酢酸ビニルは60℃程度で軟化するため射出しやすく、一般に金型の予熱が不要です。また収縮

率が比較的低く離型性に優れているのに加え、成形スピードが非常に速いことから大量生産に向いてい

ます。

▼主な射出成形製品

人工芝マット、ミニカーなどのタイヤ部品、容器シール蓋、容器中栓、スキーシューズ、自動車用マット

ガードなど

◇中空成形

ガラスビンの製造方法を応用させた加工方法で、加熱溶融させた原料の内側から空気を吹き込み、膨ら

ませて成形します。「吹込み成形」や「ブロー成形」とも呼ばれます。


主に、中が空洞のエチレン酢酸ビニル樹脂製品の成形に使われます。

▼主な中空成形製品

スポイト、バスシューズ(風呂掃除用シューズ)、ボール・ゴムまり、幼児用おもちゃ、ジャバラ管、フ

ロート、足踏みポンプ、シャンプーボトルなど

◇押出成形/インフレーション成形

加熱溶融した原料を「ところてん」の要領で押し出しながら冷却固化し、その後に必要な大きさにカット

します。


単純な形の成形に適しているので、電線やパイプなど棒状の形状や、農業シートやマットなどのシート

状の製品の製造に使用されます。


インフレーション成形は押出成形の種類のひとつで、袋状のフィルムの成形に特化しています。押出成

形された材料の中に空気を入れて膨らませ、その後は中の空気を締め出しながら巻き取ります。袋状に

仕上げる場合は、切断して片側を熱溶着します。


▼主な押出成形製品

電線、保護パイプ、ホース、パッキン、玩具用レール、玄関マット、建築土木用止水シートなど

▼主なインフレーション成形製品

フィルム、シート、液体容器など

◇カレンダー成形

ゴムの圧延加工法を応用したもので、原料を熱したカレンダーロールに通し、徐々に圧延・冷却固化する

加工方法です。シートやフィルムの成形に使用し、ロールに模様を彫刻すれば製品に転写することも可

能です。


しかし、例え製品試作用の小さな装置であっても、原料の吐出口から最終的な巻き取りまで数十メート

ル必要とするのがデメリットです。


▼主なカレンダー成形製品

デコレーションシート、フレコンシート、野積シート、雑貨用シートなど

◇発泡成形

発泡成形は、原料となるペレットを加熱溶融したものに、発泡剤を加える加工方法です。


無数に小さい孔のあいた形状は、エチレン酢酸ビニルの持つ弾力性や柔らかさ、軽量性と相まって、靴底

の素材として非常に重宝されています。


近年では、インジェクションEVAと呼ばれる、発泡剤を加えた原料を射出して成形する加工方法もあり、

通常の発泡成形では出すことができない丸みを帯びた膨らみを持たせることが可能になりました。しか

し、金型から脱型した後も膨らみ続けるため、発泡の調整加減が難しいのが難点です。


▼主な発泡製品

緩衝材・包装資材、三輪車用タイヤ、サンダル、靴底など

◇ホットメルト成形

ホットメルト成形は、エチレン酢酸ビニルが高温で溶け、低温で固まる性質を生かした成形方法です。ホ

ットメルトモールディングとも言われます。


電子部品などをエチレン酢酸ビニル樹脂で保護するように成形するため、機器の内部を水から守り、衝

撃からのダメージを低減させることができます。さらに成形サイクルが速いことから、生産性向上にも

つながるほか、軽量化・小型化も可能です。


また、エチレン酢酸ビニルの無害性を活かし、食品関係の包装紙材の成形にも使用されています。


▼主なホットメルト成形製品

自動車電装部品、携帯電話基板部品、家電機器部品、食品包装紙材、製本、合板など

■今後も市場規模の拡大が期待されるエチレン酢酸ビニル

エチレン酢酸ビニルは次世代素材としての注目度も高く、2020年には世界のエチレン酢酸ビニル樹脂市

場規模が840万ドル(米ドル)に達しました。さらに、2021年から2028年までの年平均成長率は6.3%

で成長し、2030年には市場規模が1,370万ドルに達するとの予測もあります。


市場規模拡大の背景には、燃費向上のために自動車の軽量化が進んでいることや、電気自動車の需要が

増加していることなどがあると考えられています。


エチレン酢酸ビニルは軽量で弾力性があり、安価で製造できるだけでなく、合成樹脂の中では環境にも

優しい素材です。そんな注目の次世代素材を、製品に導入してみてはいかがでしょうか?

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