ものづくりプレス

2025-04-30

ゴムの耐久性の考え方・劣化要因

ゴムの耐久性とは、周囲の温度や使用環境下にある要因に対して、ゴムがどれだけの耐久力を持っているかという性質を表しています。耐熱性や耐寒性、耐候性、耐オゾン性、機械的強度などです。  


ゴム製品を使用する現場にとっては重要な指標になります。当記事ではゴムの耐久性や耐久性試験、主な工業用ゴムの耐久性・特性の比較について解説します。

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■ゴムの耐久性が重要な理由


ゴム製品がそれぞれに持つ耐久性は、熱に強かったりオゾンに強かったりと、種類によって異なります。  


もし「耐熱性が低いのに熱が発生する場所で使う」といった、ゴムの耐久性に適さない場所での使用になったときは、以下のトラブルになる可能性が高いです。  


●周囲の部品に不具合が発生する

●製品に故障・破損が発生するようになる

●従業員の重大な事故につながる

●生産ラインの大幅な停止につながる  


周囲への影響を考えると、現場にとってゴムの耐久性は非常に重要な要素になります。

■ゴムの耐久性が衰える要因


ゴムは化学変化によって物理的性質が低下し、その結果としてゴムに亀裂が入ったり、ボディが軟化・硬化したりします。この現象を老化や劣化といいます。



ゴムの老化や劣化は必ず起こると考えておきましょう。どの要因も製造過程や自然の営みの中で必然的に発生するためです。  


ゴムの寿命を伸ばすには、いかに「そのゴム製品が苦手な要素から遠ざけられるか」が大切になります。同じゴム製品でも寿命に違いが出るでしょう。

■ゴムの耐久性が衰える外的要因


ゴム材料は熱、光、オゾン、油、薬品、負荷応力などのストレスによって経年的に老化・劣化が進みます。  


それぞれの要因を具体的にみていきましょう。



外的要因

概要

オゾン

          一定のオゾン濃度に曝されたままだと老化・劣化していく

          耐オゾン性の付与や、屋外での使用禁止などで対応

          太陽光やその他の光を極端に当てると老化・劣化していく

          耐候性の付与や、直射日光が当たらない位置での使用などで対応

油や溶剤

          油や溶剤に長時間触れていると老化・劣化していく

          耐油性や耐溶剤性、耐薬品性の付与や、油・薬剤の近くでの使用禁止などで対応

温度

          高温になると物性が下がり、硬化・軟化、亀裂、粘着が発生

          低温になると硬化、ガラス転移温度を下回ると硬化し脆くなる

          耐熱性、耐寒性の付与や適切な温度下での使用などで対応

水分

          水に弱いゴムが水分に触れると膨潤(水分を吸って体積が増加する)して品質が下がる

          加水分解(水との化学反応で分解生成物ができる)の可能性もある

          耐水性の付与や水分が出る箇所での使用禁止などで対応

圧力や摩擦

          外からの圧力や摩擦などの力学的な要素によってゴムが変形・劣化する

          耐摩擦性の付与や、機械が駆動する箇所には機械的強度・力学的性質の強いゴムの使用などで対応


各耐性の付与は、軟化剤や老化防止剤などの配合剤をゴム原料と混合することで得ます。また表面処理を行う方法もあります。

■ゴムの耐久性が衰える内的要因


ゴム原料の種類によって、どんな環境下に強いか、どんな要因に弱いかがある程度決まっています。たとえばシリコンゴムは耐熱性や耐寒性に優れていますが、機械的強度は少し劣ります。得意とする耐久性を持つゴムを、適切な箇所で使用しましょう。  


またゴム製品の製造過程にて、どのような配合剤を付与するかでも、ゴムの耐性は大きく変わります。同じゴム製品でも、オゾン劣化防止剤を添加しているか、熱老化防止剤を添加しているかなどで、耐久性に違いが出ます。  


配合剤の比率については各メーカーによって違いがあるため、直接問い合わせてみましょう。

■ゴムの耐久性の評価方法


ゴムの耐久性は生産物責任や安全性確保の観点から、使用する環境や使用する条件下にて、十分な耐久性を要しているかで評価します。また実際に使用できる期間やゴムの性能に問題はないかという、信頼性の評価も必要です。  


耐久性の評価は「耐久性試験」で行います。耐久性試験とは、規定する使用環境・使用条件において、対象のゴムが問題のない耐久性能を持っているのか否かを判別するテストです。  


耐久性試験では、あえて実際の使用条件より過酷な条件で行う「促進劣化試験」を行うことにより、長期耐久性寿命を評価します。  


耐久性試験(促進劣化試験)には、主に以下の種類が存在します。


 

耐久性試験(促進劣化試験)

概要

熱老化試験

          加熱空気中の試験体を曝し、酸化・分解・揮発などの劣化現象を促進させる試験

          試験前後の試験体の硬さや引張測定などを測定して評価

オゾン劣化試験

          ゴムを引っ張った状態で通常より高濃度のオゾンに曝して劣化を促進させる試験

          発生した亀裂の大きさや数をチェックして評価

耐候性試験(耐光性試験)

          屋外暴露や人工光源暴露によって酸化・分解などの劣化現象を促進させる試験

          色差、外観、硬さ、引張特性を測定して評価

耐液性試験

          ゴム材料の油類や化学薬品に室温または加熱下で一定時間浸漬させる試験

          浸漬前後の寸法、質量、体積、硬さ、引張特性などを測定し評価

圧縮永久ひずみ試験

          圧縮試験によって試験片に圧縮応力を負荷させる試験

          空気中で熱的影響を評価する場合、圧縮装置を所定温度の恒温槽内へ所定の時間放置したあと、試験片を取り出して厚さを測定し評価

複合促進劣化試験

実際の使用環境および使用条件に近い状況を再現し、複合的な劣化因子を組み合わせて実施する耐久試験



■ゴムの種類別に耐久性・特性を比較


ここからはよく使用される工業ゴムについて、種類別に耐久性・特性を比較して紹介します。あくまで配合剤を混ぜていない一般的な性質の解説です。

◇シリコンゴムの耐久性


シリコンゴム(Q)とは、シリコーン樹脂のうちゴム状のものを指します。製造現場だけでなく、医療や家庭用製品など、あらゆる場所で使用されてきました。  


シリコンゴムは温度変化や周囲環境に対しての耐久性を持つゴムです。200℃以上から-50℃以下まで対応できる耐熱性・耐寒性や、耐オゾン性、耐候性を持っています。さまざまな環境下で使いやすいゴムといえるでしょう。  


ただし外からの物理的に対しての耐久性が弱点です。引き裂きや耐屈曲亀裂性、耐摩耗性はあまり良くありません。

◇フッ素ゴムの耐久性


フッ素ゴム(FMK)はゴム素材の中でも高価である代わりに、最高レベルの耐久性を誇ります。自動車の燃料チューブやオイル・エタノールを使用する箇所、温度変化が激しい箇所などで利用されてきました。  


シリコンゴム以上の耐熱性に加え、非常に優れた耐油性、耐薬品性、耐オゾン性、耐老化性、耐炎性を持っています。摩擦に対しても強いです。


ただし耐寒性はシリコンゴムより劣ります。また有機酸、ケトン、エステル、アミン系など、一定の薬品に対しての耐性はありません。フッ素ゴムといえど、使用する場所に関しては注意が必要です。

◇ウレタンゴムの耐久性


弾性と剛性の両方をあわせ持つウレタンゴム(U)は、工業用のゴムとして幅広く使用されてきました。ベルトコンベアーや工業用ロール、そのほか大きな力が発生する箇所などです。  


ウレタンゴムは耐摩耗性や機械的強度といった、外からの力に対して強い耐久力を持ちます。引き裂き強さ、圧縮永久ひずみ、耐摩耗性、耐屈曲亀裂性、反発弾性など、機械の駆動や物体との擦れに耐える頑丈さが大きな特徴です。またガソリンや軽油への耐性、耐オゾン性もあります。  


ウレタンゴムの弱点は水です。また耐熱性も100℃未満とそこまで強くありません。

◇アクリルゴムの耐久性


アクリル酸エステルを含むアクリルゴム(ACM)は、自動車のトランスミッションやクランクシャフトなどの自動車の部品、その他の工業機械用のパッキン・ガスケットによく使用されます。  


アクリルゴムは「高温のときの耐油性」に強みを持ちます。熱自体にも150℃以上に耐えられるため耐熱性も問題ありません。また耐油性や耐老化性、耐オゾン性、耐候性も持ち合わせています。  


ただし耐寒性や耐溶剤性、機械的強度に関しては他よりやや劣ります。とくにアルコールやベンゼン・トルエンなどの溶剤に対して非常に弱いです。

◇天然ゴムの耐久性


合成ゴム(ナフサ等から作る人工ゴム)が普及した現在においても、天然ゴム(NR)は優れた特性を持つゴム素材として第一線で使われています。タイヤのゴムならびに自動車用の部品に用いられています。  


天然ゴムはゴムらしい弾性に加え、機械的強度に対して強い耐久性を持つゴム素材です。ウレタンゴムと同じく引き裂き強さ、圧縮永久ひずみ、耐摩耗性、耐屈曲亀裂性、反発弾性に優れます。また水分やアルコールにも強いです。  


ただし耐オゾン性やアルコール以外の耐溶剤性が少し劣ります。

◇ニトリルゴムの耐久性


工業用ゴムとしてもっとも普及しているニトリルゴム(NBR)は、オイルシールやガスケット・パッキン、耐油ホースなど、あらゆる工業用品・部品に使用されています。  


ニトリルゴム最大の特徴は優れた耐油性です。また機械的強度や耐摩耗性もあるため、製造現場等での使い勝手が大変良いといえます。  


ただし耐オゾン性や耐候性が若干劣ります。屋外での使用は控えたほうがよいでしょう。

■ゴム製品がそれぞれ持つ耐久性に応じた使用を心がけよう


ゴムは熱や光、オゾンなどの外的要因や、ゴム製品が持つそれぞれの特性などの内的要因によって、必ず老化・劣化が進むものです。そのため少しでも寿命を伸ばして長く使いたいときは、そのゴム製品の耐久性に応じた場所で使用しましょう。  


なおゴム製品の特性に加え、添加する配合剤や周辺の機械の動作によっても、耐久性は変わります。もしゴムの耐久性の詳細や現場にあったゴム製品を希望する場合は、弊社富士ゴム化成へ一度お問い合わせください。