ものづくりプレス
2025-04-15
合成樹脂ゴム(エラストマー)と樹脂など異材質の二色成形
異なる色または材質同士を金型に射出し、ひとつの製品に成形する方法が二色成形です。多くのメリットがある一方で、使用できない素材があることや、インサート成形との違いを知っておくことが重要です。
この記事では、合成樹脂ゴム(エラストマー)製品づくりにも有効な二色成形の特徴やメリット、インサート成形との違いを解説します。この方法を使って製造可能な具体的な製品についても紹介していますので、製品づくりの参考にしてください。
二色成形とは
二色成形とは、材質や色の異なるふたつの材料を成形機に仕込み、ひとつの成形品をつくる方法で、ダブルモールドとも呼ばれます。専用の成形機には射出シリンダーと金型がそれぞれふたつずつ付いており、各成形品を最終的に融着させて仕上げます。
1サイクルで成形と組み立ての2つの作業ができるため、時間の短縮やコストの削減にも貢献できます。
二色成形で使用できない素材
二色成形の材料には、樹脂、合成樹脂ゴム(エラストマー)などの熱可塑性樹脂が用いられています。中でも非結晶化樹脂が適しており、以下のような結晶化樹脂はほかの素材との密着性がほとんどないため、二色成形には向いていないと言われています。
▼ポリプロピレン(PP)
ポリプロピレンは熱可塑性樹脂のひとつです。汎用樹脂の中でもなかでも耐熱性が高く、また耐薬性(酸、アルカリ)および強度も優れています。
▼ポリアセタール(POM)
自己潤滑性優れ、プラスチックの中で最高クラスの耐摩耗性を持っています。また引張り強度が高く、高温下での使用にも耐えることができます。
▼ポリ塩化ビニル系エラストマー(TPVC)
射出成型加工性に優れており、熱変形が小さく反発弾性が大きいという特徴を備えています。
▼熱硬化性エラストマー
ある一定範囲までは熱を加えても軟化しない、一般的にゴムと呼ばれている材料です。
二色成形の特徴
二色成形には、以下の特徴があります。
◇生産性が上がる
1台の成形機で、自動で成形と組み立ての工程ができるため、生産性が上がります。
◇コストダウンが図れる
異なる材料同士を別々に成形した場合、それらを組み立てる工程が発生します。しかし、二色成形ではその工程が不要になるため、時間とコストを節減することができます。
◇密着性が上がる
二色成形は、異なる材料同士を金型に仕込み、融着させて成形するため、接着による接合よりも密着性が向上するのもメリットです。ただし前述のとおり、二色成形に適さない素材があり、素材選びは慎重に行なう必要があります。
◇意匠性の高い製品の製作が可能
異なる材料や素材の組み合わせができるのも、二色成形のメリットです。例えば違う色の組み合わせや、機能や性能の付与なども可能です。さらにメッキをする場合のマスキング工程を削減できたり、同じ製品のカラーバリエーションを増やしたりすることもできるため、デザイン性やオリジナリティの高い製品づくりを実現することができます。
二色成形とインサート成形の違い
二色成形と比較される成形方法に、インサート成形があります。これら2つの方法を簡単に説明すると、以下のようになります。
・二色成形:異なる色または材料同士を、1サイクルで金型成形する方法
・インサート成形:あらかじめ樹脂部品や金属部品を金型に仕込み、その周囲に樹脂や合成樹脂ゴム(エラストマー)を充填し、成形する方法
二色成形は2つの金型を備えた自動成形機で行なわれるため、大量生産が可能である一方で、一般にインサート成形の場合は使用する金型は1つで、部品のインサートは手で行なわれます。そのため、大量生産向けの方法とは言えません。
二色成形との比較のため、インサート成形について解説します。
インサート成形とは
先述のとおり、インサート成形は、金型に樹脂部品や金属部品を固定し、その周りに合成樹脂ゴム(エラストマー)や樹脂を流し込み、硬化させる方法です。部品と一体化した複合部品の成形ができるのが特徴です。
仕込まれる部品には以下のようなものがあり、樹脂や金属以外に、セラミックが用いられることもあります。
・ナット
・ネジ
・ビット
・ネット(網)
・通信・電力用の銅線 など
金属部品のほか成形時インサート部品の位置の決定や保持のために、金型にインサートピンも立てられます。
インサート成形の用途
近年は部品の軽量化や縮小化、耐久性の向上を目的に、以下の製品をはじめとしてさまざまな分野でインサート成形のニーズが高くなってきています。
・工業製品
・自転車内部のパネルなど
・小型PCの部品
・携帯端末の部品
・家電製品の部品 など
インサート成形のメリット
インサート成形には、以下のメリットがあります。
・複雑、精密な部品の製造が可能
・部品の耐久性が向上
・工程の短縮
・製造コストの削減
・金属をはじめとした他素材との組み合わせが可能
インサート成形は、異なる特性を持つ素材同士を組み合わせることで、複雑かつ精密な部品の成形が可能です。
特性が合わさることから、元の素材以上の剛性を発揮することもあります。例えば、腐食しやすい金属部品を樹脂や合成樹脂ゴム(エラストマー)で包めば、長期的に腐食を防ぎ、使用できる耐久性が得られます。
インサートに使用できる素材は、金属やセラミックのほか樹脂、ガラス、木材、布、糸、紙なども選べます。多種類の素材を組み合わせることで、幅広い製品づくりを実現することができます。
インサート成形は、二色成形とは異なる用途で使用されます。それぞれの特徴を理解し、目的に合った方法を選択することが重要です。
二色成形でできるもの
二色成形に適した製品として、以下が挙げられます。
・ゴムローラー
・クッションゴム
・ゲーム機のコントローラー
・自動車のパネルスイッチ
・マウス
・キーパッド など
例えばゴムローラーやクッションゴムの場合、硬度の異なる素材をそれぞれ別の部位に使用することで、剛性と柔軟性の両方の特性を持たせた製品をつくることができます。また、柔軟性と密閉性が求められるパッキンなど部材にも、適した成形方法と言えます。
このほか、パソコンや電卓、リモコン、機器のスイッチなどのように、ボタン配置ごとに色を変えたり、違う色の2つの素材を1つに成形することができたりするのも、二色成形の特徴です。
多くのメリットや可能性がある合成樹脂ゴム(エラストマー)や樹脂の二色成形
異なる材料、または同じ材料で色の異なるものを一体化成形する二色成形は、納期やコストをカットして生産性を上げる以外にも、意匠性の高い製品製造も可能にします。二色成形と似たインサート成形もありますが、いずれも異なる用途で使用される成形方法です。
あらかじめ製造したい製品が決まっている場合には、射出成形のプロに相談し、適切な成形方法や材料選びをすれば間違いないでしょう。理想的かつ納得のいく製品製作につなげてください。
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