ものづくりプレス

2025-04-25

PVCってゴムなの?違いはどこにある?

ホースやチューブなどの配管設備から、合成皮革や文房具などの日用品まで、多くの用途で使用されているPVC(ポリ塩化ビニル)。見た目はゴムと似ていますが、PVCは樹脂であり、ゴムとは異なる特性を備えています。 この記事では、PVCの概要や特徴、ゴムとの違い、用途について解説します。

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■PVC(ポリ塩化ビニル)とは


PVC(ポリ塩化ビニル)は、塩化ビニルモノマーを付加重合させてつくる合成樹脂です。正式にはポリ塩化ビニルと言いますが、一般的に塩化ビニル樹脂(塩ビ)を指すことが多いようです。

劣化しにくく、長期間にわたって強度を維持できるなどの性質に加え、安価であることから、5大汎用樹脂のひとつに含まれます。また、可塑剤の分量に応じて硬質・軟質の特性を持たせることができるのも、PVCの特徴と言えます。

◇PVCはゴムなの?


PVCはゴムによく似た外観や弾性を持っていますが、ゴムではありません。ゴムは熱を加えると硬くなる熱硬化性樹脂であるのに対し、PVCは反対に加熱により軟化する熱可塑性樹脂に分類されます。

PVCがゴムと似ている理由として、充填剤や可塑剤などの配合と練りなど、ほかの樹脂にはほとんど見られない工程があることが挙げられます。

■PVCは環境に優しい?


一般的なプラスチックの原料は石油ですが、PVCは石油が4割で、残りは塩からつくられています。そのため、限られた資源である石油の使用料を節約できるほか、製造時に発生する二酸化炭素の排出量やエネルギー消費量がほかのプラスチック原料より少ないなど、比較的環境にやさしい素材だと言えるでしょう。  


また、PVCを使用した建築資材や上下水道のパイプなどのインフラ設備は、高い耐久性や耐食性を持ち、長い間にわたって使用しても劣化することはほとんどありません。さらに、可塑剤、改質剤、添加剤、着色剤などを配合することで、弾性、柔軟性、耐衝撃性、抗菌などを付与でき、リサイクル性も高い素材であることも、PVCが環境にやさしい理由とされています。  


かつてPVCは、焼却時にダイオキシンと呼ばれる環境汚染物質を発生させる原因だと考えられ、大きな問題になっていました。ところが実際は、ダイオキシンはPVC特有のものではなく、身の回りの多くの物質に含まれる塩素からも生成されます。特に低温燃焼時に発生することから、現在では、廃棄物を800℃以上の高温で完全燃焼させることでダイオキシンを分解し、排出量の大幅な削減を実現しています。

■PVCのメリット


環境にやさしいだけでなく、PVCには以下のようなメリットもあります。

◇引火や着火、延焼しにくい


PVCの引火温度は約391℃、着火温度は約455℃です。紙や木など、同じ熱可塑性樹脂のポリエチレンなどと比較して難燃性の素材と言えます。また、ほかのプラスチックよりも燃焼による熱放出が小さいため、延焼しにくい特性も持っています。これを活かし、PVCは住宅用建材などにも活用されています。

◇耐薬品性、耐油性が高い


多くの酸やアルカリなどの無機薬品に対する耐性を持っています。有機溶剤にも強いですが、有機溶剤には膨潤・溶解します。

◇機械的強度が高い


PVCは常温の状態では分子運動が少なく、ほかのプラスチックと比べてクリープ変化(時間経過によるひずみ)の小さい素材です。耐食に関わる化学的変化に強く、長期間にわたり安定した機械的強度を示します。

◇加工性や成形性が高い


可塑剤の配合量により硬質・軟質の性質を与えることができ、熱可塑性のPVCは、多くの加工や成形方法に対応できます。例えば加工では、切削、曲げ、溶接などに、また成形ではブロー成形や射出成形をはじめ、真空成形、押出成形なども可能です。ただし、溶融粘度が大きいため、大型の射出成形には向いていません。

■PVCの用途


PVCは、主に以下の用途で用いられています。

●硬質PVC

・上水道管、下水道用パイプ

・電力線(電線被覆)

・建築資材(建具、窓枠、雨どい、デッキ など)

・農業用資材

・工業資材(排気ダクト、ガスケット、各種ジョイント など)

・自動車や家電部品

●軟質PVC

・食品包装(フィルムなど)

・文房具雑貨、玩具(ソフビ人形など)

・医療用器材(チューブ、カテーテルなど)

・工業資材(各種チューブ、ホース、ベルトなど)

・各種シート

・建築資材(床材、壁紙など)

・人工皮革 など

■いろいろな用途に使用できる汎用性の高いプラスチック


PVCはゴムのように配合と練りの工程があることから、ほかのプラスチックにはない特性を持っています。また、その柔軟性や耐久性、機械的強度の強さから、住宅用や工業用、日用品と幅広い用途で活用されるなど、汎用性が高いプラスチックです。

PVCについてさらに詳しく知りたい場合は、当社までお気軽にご相談ください。