ものづくりプレス

2025-03-10

ゴムの表面処理 の種類と効果

ゴムに施す表面処理とは、すでに成形が完了しているゴムの表面に、滑りやその他の性質を付与するコーティングなどを行う技術のことです。表面処理の種類によって、付与できる性質の特徴に違いがあります。


当記事ではゴムの表面処理の目的や、表面処理の種類について解説します。

ワイパー

■ゴムの表面処理の目的


ゴムの表面処理の大きな目的の1つに、表面を滑りやすくして低摩擦・低摩耗を与えることがあります。ゴムの役割としては滑り止めやグリップ性能の付与などが有名ですが、表面処理はゴム弾性を保ちつつその逆の性質を与えます。

 

滑りにくい表面のままだと、駆動する機械・物体の近くで使用するゴム製品の摩擦抵抗が大きくなり、ゴムの摩耗、劣化する速度が早まるためです。車のワイパーをイメージするとわかりやすいと思います。

 

その他、滑り性を向上させる具体的なメリットは次のとおりです。

 

          騒音の発生を抑えられる

          ゴムの寿命が伸びる

          非粘着性によって他のものと引っ付きづらくなり他の機器にキズが付きづらくなる

          ゴムの交換時にゴムが他のものにこびりつかず交換がしやすい など

 

また表面処理は滑り性以外にも、さまざまな性質をゴムに付与します。具体的には次のとおりです。

 

          撥水性(はっすいせい、水分の弾きやすさ)

          撥油性(はつゆせい、油分の弾きやすさ)

          耐油性

          電気特性

          氷結防止

          防汚性

          耐候性

          手触りの良さ

          外観の良さ など


■表面処理を行う主なゴム製品


表面処理が必要なゴム製品は、駆動する機械や物体のそばにあるものや、水気が存在する箇所に使うものなどが挙げられます。具体的には次のとおりです。

 

          Oリング・ガスケット・パッキン

          バルブ

          フィルム

          ワイパーのゴム など

■ゴムの表面処理方法の種類


ゴムの表面処理方法は1つだけではありません。それぞれに特徴を持った表面処理方法があります。当記事では以下6つの方法を解説します

 

          シリコンコーティング

          ウレタンコーティング

          フッ素樹脂コーティング

          ハロゲン化処理

          粉末処理

          エポトリート

 

順番にみていきましょう。

◇シリコンコーティング


シリコンコーティングとは、ゴムの表面にシリコン系化合物のコーティングを施す表面処理です。主に撥水性を与えるコーティングになります。またシリコーンゴム(Q)と同じ性質であることから、耐熱性も付与できます。  


シリコンコーティング自体は、ゴムの表面処理以外でも用いられるポピュラーなものです。たとえば車のシリコン洗車などが挙げられます。

◇ウレタンコーティング


プラスチックの一種であるウレタンをコーティングする表面処理を、ウレタンコーティングと呼びます。ウレタンゴム(U)と同じように、ゴムに耐摩耗性や機械的強度、防音性、電気絶縁性を付与します。

◇フッ素樹脂コーティング


フッ素樹脂を塗布して表面処理を行うことをフッ素樹脂コーティングと呼びます。フッ素ゴム(FMK)と同じく高価であることと引き換えに、非常に優れた性質をゴムに与えます。  


具体的には撥水性、撥油性、耐薬品性、非粘着性、耐熱性、耐寒性、低摩耗性、電気特性などです。

◇ハロゲン化処理


ハロゲン化処理とは、ゴムの表面層に対して薬品によって反応を起こし、その科学的変化を利用して表面処理を行う方法です。ゴム本来の弾性や伸び、引張強さを損ねることなく使用できるようになります。  


またゴム表面に滑らかさや非粘着性、耐摩耗性、耐薬品性、耐ガス透過性などを付与します。

◇粉末処理


粉末処理とは、シリカ、タルク、コーンスターチなどの粉末をコーティングすることで表面処理を行う方法です。耐摩耗性や耐食性、耐熱性、耐衝撃性を向上させます。

◇エポトリート


エポトリートとは、ハロゲン化処理と同じようにゴム表面層に対して反応(エポキシ化)を起こして表面処理を行う方法です。作業環境の悪化や地球環境への負荷などの問題を解決するため開発されました。  


たとえばコーティング処理だと、コーティングの性質や物性そのものがゴム製品に影響を与える可能性があります。次にハロゲン化だと、有害化ガスの発生や廃水処理問題などが問題になっていました。さらに粉末処理だと、作業工程や使用時の粉塵による汚染問題があります。  


エポトリートはこれらの改善を目的としています。主に滑り性や非粘着性や滑り性、耐摩耗性、耐薬品性、耐ガス透過性などをゴムに付与します。

■適切な表面処理でゴム製品の品質を向上させよう!


ゴムの表面処理には、ゴムに滑り性を与えるだけでなく、耐摩耗性や耐薬品性、非粘着性、耐熱性、機械的強度などのさまざまな性質を付与します。ゴム素材の選定や配合剤の混合だけでなく、完成したゴムの品質向上を行えるのが特徴です。  


表面処理にはシリコンコーティングや粉末処理、エポトリートなどがあります。ゴム製品に必要な性質を付与する表面処理方法を選びましょう。