ものづくりプレス
2025-04-01
プラスチック中空成形(ブロー成形/吹き込み成形)
プラスチック成形は多種多様で、製造する製品の用途や重視したいポイントなどに応じて、最適な方法を選択することができます。その中でも、空洞のプラスチック製品を製造するときに主に用いられるのが、中空成形(ブロー成形)です。
本稿では、プラスチックの中空成形の概要や成形されたプラスチック製品の用途、中空成形加工の種類などについて解説します。
プラスチック「中空成形(ブロー成型/吹き込み成形)」とは
プラスチックの中空成形は、ボトル容器やタンク、パイプ、など、中が空洞になっているプラスチック製品を製造する加工方法で、「ブロー成形」や「吹き込み成形」などとも呼ばれています。吹きガラスのように空気を吹いて原料を中から膨らませた後、冷却して固めます。
一般に、中空成形は以下の手順で行なわれます。
1. ペレット(粒)状のプラスチック原料をブロー成形機に投入
2. 溶融されてパイプ状になったパリソンを金型で挟む
3. 空気をパリソンの内側から吹き込んで膨らませ、型に押し付ける
4. 金型内で固めて離型した後、バリ取り処理などの後加工を施す
ブロー成形の特徴
〇 金型にかかる負荷が少なく、剛性や複雑さをあまり必要としないことから、金型の製造コストの低減が可能。
〇 射出成形と比べて圧力をそれほど必要としないため、機械の購入コストを抑えることが可能。
〇 1サイクルで成形する製品の個数や形状などに応じて、機械のダイホルダー(プラスチック原料を練り込む場所)は単頭式、双頭式、4頭式(多頭式)から選択が可能。
× 金型に触れない部分の形状や、肉厚、精度などの調整が困難。
× 溶かした樹脂の粘度が低い場合、重力方向に垂れ下がって製品の厚みが不均衡になることがあるため、粘度や空気圧などの調整や注意が必要
中空成形で製造されたプラスチック部品の用途
中空成形で製造する主なプラスチック製品は、以下のとおりです。
・家庭雑貨用品、スプレー容器 、
・景品、販売促進品キャラクター製品
・健康・美容器具関連用品 ・洗剤、化粧品などの容器
・灯油缶、工業用容器、工業部品容器、工業用タンクカバー
・農機具用・農薬タンク
・水耕栽培容器、飼育容器
・パイプ、ホース、ダクト、建材
・水泳コース用ロープ
・球場や体育館のベンチ
・サスペンション、自動車用ダクト類のカバー
・薬品化学容器、医療用タンク容器
・ジャバラ など
このように用途の多様化に伴い、それぞれの特徴に合わせた成形方法があります。
次に、その種類について説明します。
プラスチック中空成形の種類
一般にプラスチック中空成形では、以下の2つの方法が主に使用されています。
押出ブロー成形(ダイレクトブロー成形)
ブロー成形機と押出機の組み合わせによる代表的な方法です。
まず、ブロー成形機から溶かされて出たパリソン(パイプ状のプラスチック原料)を、押出機を使って押し出します。それを金型で挟み込み、中から空気を吹き込むと金型の内側の形に沿って膨らみ、空洞のあるプラスチック製品に成形できます。その後は冷却して金型から取り出し、バリ取りなどの後処理をすれば完成です。
射出ブロー成形よりも、少ない工程で済むのが特長です。
射出ブロー成形(インジェクションブロー成形)
あらかじめ射出成形で底のあるパリソン(有底パリソン/プリフォーム)を成形した後に、ブロー成形機で内側から空気を吹き込む方法です。主にペットボトルなどの容器の成形に用いられています。
押出ブロー成形よりも高い寸法精度を出すことができ、量産にも向いています。
射出ブロー成形には、成形した有底パリソンを都度ブロー成形機に移す「ホットパリソン法」と、一度冷却した有底パリソンを再加熱してブロー成形する「コールドパリソン法」があります。
その他
このほか、生産する製品の形状などに合わせて、以下の成形方法が使用されます。
◆インフレーション成形
円形のノズルからプラスチック原料を円筒形のフィルム状に押し出した後、空気を内部から入れて膨らます中空成形方法です。スーパーやコンビニのレジ袋、ラップフィルムの製造に用いられています。
金型のコストを抑えることができ、薄肉製品を製造できる反面、厚肉製品や小ロットの製造には不向きです。
◆ディップ(浸漬)成形
液体状のプラスチックを凸型の金型の周辺に付着させて型取りし、硬化後に型からはずして成形します。金型の外側とまったく同じ形状になるため、複雑な形にも対応し、内面寸法の精度が高いのが特長です。
主にキャップ、カバー、絶縁スリーブなどのほか、手袋、自動車や家電の部材などの成形にも使用されます。
用途に応じた中空成形方法の選定が生産効率アップの鍵
ボトル容器をはじめ、ケース、自動車部品などさまざまなプラスチック製品の製造に使用されるプラスチックの中空成形。しかし製品によって成形方法が異なるだけでなく、機械や金型の製造コスト、適しているプラスチック原料、作れる形状、量産に向いているかなど、検討すべきポイントがたくさんあります。
プラスチック製品製造を検討しているなら、コストや製造できる製品を踏まえてプロに相談することが重要です。
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