ものづくりプレス
2025-03-20
ゴムの硬度で何がわかる?計測方法や硬さの目安
ゴムが持つ硬さの度合いを数値で表したものが硬度です。
その測定には専用の機器を使用しますが、硬さによって測定器の種類を使い分ける必要があります。
また硬度は、環境などの要因によっても変化することを覚えておきましょう。
この記事では、製品の材料選びにも関係するゴムの硬度について解説します。
■ゴムの硬度とは
本来、ゴムなどの物質は個体ごとに硬さが異なります。例えば、「硬い」「軟らかい」と言った場合、その程度はあくまでも感覚的であり、人によって違います。そこで、ゴムの硬さを可視化し、比較できるように数値化したものが「ゴム硬度」です。
ゴムの硬度を知る上で重要となる、測定方法や硬度ごとの硬さの目安について解説していきます。
◇ゴムの硬度は計測器の数値を目安にする
ゴムの硬度を測定する際に使用するのが「硬度計(ゴム硬さ計)」で、JISやISO(国際標準化機構)などの規格に準拠したものがあります。
また、測定方法には大きく分けて「デュロメーター硬さ試験」と「国際ゴム硬さ試験」があります。いずれもゴムの試料片(サンプル)を使用し、硬度計に付いた押針などを試料片に押し付けて硬度を計るのは同じですが、その際の加圧方法が異なります。
▼デュロメーター硬さ試験
硬度計に付いた押針をサンプルに押し付け、スプリングの力を利用して徐々に力を加えていきます。ゴムの反発抵抗がなくなり、スプリングの力とのバランスが取れた状態の数値が、そのゴムの硬度となります。押針の形状は、測定するゴムの硬さにより異なります。
▼国際ゴム硬さ試験
押針に分銅などで定荷重をかけて、食い込み深さを計ります。デュロメーター硬さ試験では、スプリングのたわみ量に比例して押針を強く押し付けますが、この試験の場合は深さにかかわらず荷重は一定です。
デュロメーターには「タイプA」「タイプD」「タイプE」などの種類があり、標準的な硬さにはタイプA、硬いゴムはタイプD、軟らかいゴムにはタイプEを使用するのが一般的です。その使い分けについては、JIS規格で以下のように定めています。
− タイプDデュロメーターで硬さが20未満の場合は タイプA
− タイプAデュロメーターで硬さが20未満の場合はタイプE
− タイプAデュロメーターで硬さが90を超える場合はタイプD
測定結果は0から100までの数字で表し、数値が大きいほど硬度が高い(硬い)ことを意味します。しかし同じ数値でも、使用する硬度計のタイプが違う場合は実際の硬さも異なります。例えばタイプDで測定した50とタイプEでの50では、タイプDで計測したゴムの方がはるかに硬いことを意味します。そのため結果を表記する際には、使用した硬度計のタイプがわかるようにする必要があります。
また、タイプAの測定器を使用し、測定開始から1秒以内に50という数値が出た場合、JIS規格では「A50/S」と表しますが、ISO規格では「A50」または「A50/1」と表記するなど、規格によって違う点にも注意が必要です。
▼硬度には誤差がある
ゴムはその性質上、以下のような要因により影響を受け、多くの場合で測定結果に誤差が生じることがあります。
・環境的な要因(温度、湿度など)
・押針面の表面積や押し当て方(押し付け速度など)
・測定結果を読み取るタイミング ・試料片上の測定位置(同じ箇所での連続測定、極端に隣接した箇所での測定)
・試料片の形状や厚み
そのため、測定結果についてはプラス・マイナス5度(±5°)の公差を設定するのが慣例となっています。
◇硬さの目安
ゴムの硬度は数値で表わされても、実際にはどのくらいの軟らかさ、硬さなのかわかりにくいと思います。例として、タイプAで測定した場合の、ゴムの硬度の数値ごとの目安を以下に表しました。
タイプA測定時の硬度 |
硬さの目安 |
5~10 |
人肌 |
30~40 |
消しゴム |
60~70 |
車のタイヤ |
80 |
マウスのボール |
90 |
ゴルフボール |
また、代表的なゴムの種類による硬度は以下のとおりです。
ゴムの種類 |
硬度 |
天然ゴム(NR) |
10~100 |
イソプレンゴム(IR) |
20~100 |
スチレンブタジエンゴム(SBR) |
30~100 |
ブタジエンゴム(BR) |
30~100 |
クロロプレンゴム(CR) |
10~90 |
ブチルゴム(IIR) |
20~90 |
エチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM) |
30~90 |
エチレン酢酸ビニル共重合体(EAM) |
50~90 |
クロロスルホン化ポリエチレン(CSM) |
50~90 |
塩素化ポリエチレン(CM) |
50~85 |
エピクロロヒドリンゴム(CO、ECO) |
20~90 |
二トリルブタジエンゴム(NBR) |
20~100 |
二トリルイソプレンゴム(NIR) |
20~100 |
アクリルゴム(ACM、ANM) |
40~90 |
ウレタンゴム(U) |
60~100 |
多硫化ゴム(T) |
30~90 |
シリコーンゴム(Q) |
30~90 |
フッ素ゴム(FKM) |
50~90 |
一般的なゴムの硬度は50~70程度とされており、80〜90になるとほぼ指ではつぶせない硬さになります。また異なるゴムを配合させることで硬度の調節もできるため、ゴムの種類は同じでも硬さは異なります。上記の硬度はあくまで目安として捉えておいてください。
■ゴムの硬度は温度によっても変わる?
多くのゴムは熱を加えると軟らかくなり、温度が下がると硬くなる性質を持っています。それ以外にも、湿度などの要因も硬さを左右し、同じゴムでも硬度が異なることがあります。そのためゴム硬度を測定する際には、環境も考慮することが重要です。
■ゴムの硬度は時間の経過によっても劣化が起こる
劣化もゴムの硬さに影響します。温度や湿度のほか、酸素や光などの外的因子や、製造時に添加される薬剤などの内的因子などの要因が、時間の経過とともにゴムを劣化させ、硬度に変化をもたらします。そのためゴム材料や製品は、これらの影響を受けにくい環境で保管することが大切です。
■ゴムの硬度を知って材料選びに活かそう
ゴムの硬度は、材料や用途選びの目安になる重要な基準のひとつです。その一方で、さまざまな要因の影響を受けやすく、変化が生じやすいのも事実です。不良な製品を製造しないためにも、これらの性質を充分に考慮し、慎重にゴムを選ぶことが大切です。
製品に合ったゴムの硬度がわからない、適したゴムの硬度を知りたい、などの疑問がある場合は、ゴム製造のメーカーに聞くことも高品質な製品づくりには必要です。
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