ものづくりプレス

2024-04-08

樹脂(プラスチック)の耐薬品性について徹底解説

私たちの身の回りに溢れる樹脂製品(プラスチック製品)は、その種類ごとに様々な特徴を兼ね備えています。その中の一つに「耐薬品性」があります。耐薬品性とは、様々な物質からの刺激に対し、化学的な腐食などに耐える性質のことです。この耐薬品性がなぜ重要かというと、日常生活で使用する洗剤のや医療現場などで用いられる高濃度の薬品など、樹脂製品は様々な化学物質に触れる機会があり、それらに対して安定性を保つ必要があるためです。


この記事では、耐薬品性に関する基礎知識と、樹脂(プラスチック)素材の種類ごとの耐薬品性についてご説明します!

樹脂製品 耐薬品

樹脂と耐薬品性の基本

樹脂の一種であるプラスチックは日用品から医療機器まで多岐にわたる用途で使われていますが、様々な化学物質に恒常的に接触する樹脂は、耐薬品性が非常に重要な要素になります。ここでは、耐薬品性について詳しくご説明します!


◇樹脂(プラスチック)耐薬品性とは?

耐薬品性とは、樹脂が化学物質の影響を受けず、その構造や性質を維持できる能力のことです。この性質は、薬品や溶剤と直接接触するプラスチック製品に不可欠な性質です。


◇なぜ耐薬品性が重要なのか?

耐薬品性が樹脂(プラスチック製品)にとって重要な性質である理由は、耐薬品性が化学物質にさらされる環境での樹脂の安全性に大きく影響するためです。例えば、医療分野において、プラスチック製のボトルは薬品や消毒剤といった科学物質に恒常的に接触しています。耐薬品性が低いと、製品が変形したり溶けたりしてしまい、医療器具としての機能を損なう恐れがあります。


同様に、化学プラントや半導体製造では酸やアルカリなどの多様な化学物質に耐えることが出来る製品がポンプやタンクのライナーが必須です。これらのことから、化学物質に触れる機会の多い樹脂の一種であるプラスチックには、耐薬品性が非常に重要であることが分かります。

プラスチックの耐薬品性能を高める方法

樹脂製品(プラスチック)の耐薬品性は、日常品から医療機器まで幅広く要求される品質です。そのメカニズムを高めるためには、ポリマー鎖の密度や架橋を強化する化学的改質が鍵となります。たとえば、樹脂製品(プラスチック)に耐薬品性を与える具体的な方法としては、高分子間の相互作用を増やすことで溶剤の浸透を防ぎます。これは、熱や放射線、化学的架橋剤を用いて分子鎖を結びつけることで達成される場合が多いです。


これにより、樹脂製品(プラスチック)は化学薬品に対する膨潤や分解が減少し、その機能性や耐久性が向上します。化学的原理に基づくこのプロセスは、産業界において重要な役割を果たし、安全で持続可能な製品開発に不可欠です。樹脂製品(プラスチック)の耐薬品性の理解は、製品設計や材料選択において、重要な指針となります。

◇耐薬品性を左右する要因とは

樹脂製品(プラスチック)の耐薬品性は、分子が変形しにくくすることによって高めることが出来ます。
なぜなら、プラスチックが溶け出してしまう現象は、言い換えると隣り合っている分子が離れてしまうことであるということが出来るからです。


この方法としては、以下の手法を上げることが出来ます。
・分子鎖を長くする
・分子間結合を強化する


このように、分子が動きにくくなる対策を取ることで、樹脂製品(プラスチック)の耐薬品性を向上させることが出来ます。

樹脂製品(プラスチック)の耐薬品性比較

上記で述べたように、樹脂素材(プラスチック素材)を選ぶ際、耐薬品性は重要な要素になります。
なぜなら、樹脂(プラスチック)には様々な種類が存在し、それぞれによって体制を持つ薬品の種類に差異があるためです。


ここでは、樹脂の中でもプラスチックの種類と、それぞれの耐薬品性の特徴についてご説明します!


例えば、ポリエチレンは一般的な酸や塩基に対して優れた耐性を示しますが、有機溶剤には弱い傾向にあります。一方で、ポリプロピレンはポリエチレンよりも耐熱性が高く、多くの化学薬品に対する耐性が増します。また、耐薬品性を求める環境では、フッ素樹脂が推奨されることが多いです。これは、フッ素樹脂が強酸、強塩基などの極端な条件下でもその特性を保持するためです。これらの素材を比較する際、具体的な化学物質に対する反応を基準に検討することで、適切なプラスチック選択が可能となります。

◇プラスチックの種類と特徴

プラスチック種類は多岐にわたり、それぞれ特有の特性と用途があります。
プラスチックは、大きく熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂の二つに分けることが出来ます。


ポリエチレンやポリプロピレンを代表とする熱可塑性プラスチックは、加熱することでで柔軟になり成形が可能なプラスチックです。
エポキシ樹脂やフェノール樹脂に代表される熱硬化性プラスチックは、一度硬化すると再加熱しても軟化することはなく、耐熱性・機械的強度が高い特徴を持ちます。

◇代表的なプラスチック素材の耐薬品性

⚫️ポリプロピレン
ポリプロピレンは強度がありながらも軽量であることから、保存容器としてよく使用されます。
ポリプロピレンは、無機アルカリのほとんど、亜硫酸・塩酸・次亜塩素酸・リン酸など多くの無機酸に対して耐性を持っています。


一方で、クロム酸・クロロスルホン酸に対しては耐性を持っていません。
また、他の物質を溶かす性質を持つ有機化合物である、有機溶剤に対しての耐性も持っていません。


⚫️ポリエチレン
ポリエチレンは、亜硫酸・塩酸・次亜塩素酸などの無機酸に対して耐性を持っています。一方で、王水・クロム酸・クロロスルホン酸などは、腐食を招く原因となります。


また、アンモニア・カ性ソーダ・水酸化カリウムなどを代表として、無機アルカリのほとんどに対しても耐性を持っています。
ポリプロピレンと同じく、有機溶剤に対する耐性はポリエチレンも持っていません。

まとめ

このように、樹脂製品(プラスチック)における耐薬品性は非常に重要であり、その耐薬品性はプラスチックの種類によって様々です。 間違った選択は思わぬ事故につながる場合もあります。樹脂製品(プラスチック)を選ぶ際はそれぞれの特性を把握したうえで、用途に適した製品を選びましょう。


プラスチックについてさらに詳しく知りたい方はこちら

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