ものづくりプレス
2024-06-12
EUにおける化学物質の総合的制度「Reach規則」とは?
化学物質に対して、安全性評価、審査に対する疑問や問題は幾度となく発生しています。
しかし、厳重すぎる審査を行った場合、化学物質を取り扱う業者の作業が進まないことも同時に問題でした。
それを解決するために制定されたのが、Reach規則です。
今回は、この「Reach規則」について紹介させていただきます。
目次
REACHとは
REACHとは、「The Regulation for Registration(登録)、Evaluation(評価)、Authorization(認可) and Restriction(制限) of Chemicals(化学物質)」のそれぞれの頭文字を取った略称です。
「登録(Registration)」「評価(Evaluation)」「認可(Authorization)」に対しての化学物質の規則を定めています。
この規則はEUで2007年に施行されており、EU域内で製造・使用される化学物質のリスク管理が取扱い企業に課せられることとなりました。
一般消費者が使う製品中の化学物質も対象になっているため、化学物質の取扱いを大きく変えたといえます。
REACH規則の概要
REACH規則の目的は、主に3つあります。
1.人の健康と環境の保護
2.化学物質のEU域内の自由な流通の確保
3.EU化学産業の競争力の維持向上と革新の強化
この背景には、1992年「アジェンダ21 」2002年「ヨハネスブルグ実施計画 」2006年「SAICM 」といった、国際社会における化学物質の適切な管理法の規制や取り組みの進展があります。
ただ、以前までは化学物質の安全性の評価・管理は行政が担っていました。
そのため、社会の発展に対して審査が追いつかず、全ての化学物質の規制が難しかったといえます。
Reach規則は化学物質の安全性評価を事業者に義務付けたことで、EU市場における流通の確保や化学産業の強化と、人の健康と環境の高いレベルでの保護を実現しました。
◇対象物質
Reach規則が対象とする物質は自然界にある化学物質や製造工程から得られる化学物質のことで、具体的な物質としては下記の通りです。
・調剤/混合物:
2以上の物質からなる混合物/溶液。
混合物そのものの登録は不要ですが、混合物に含まれる物質は登録の対象となります。
例:塗料、インキ、ニス、合金など
・成形品:
形状・表面またはデザインが、その化学組成よりも大きく機能を決定する物体。
成形品は登録の対象ではありませんが、特定の条件を満たす成形品に含有する物質は登録の対象となる場合があります。
例:家具、衣服、自動車、本、玩具、電子機器等
・ポリマー:
1種類以上のモノマー単位が連続した分子により構成される物質。
ポリマーを構成する2wt%以上のモノマーとそのほかの物質が、登録の対象となります。
・中間体:
ほかの化学物質を合成するために製造され、その合成プロセス中に消費・使用される物質。中間体のうち、単離される中間体は登録が必要。
*REACH規則においては農薬や医薬品、放射性物質は対象外となります。
◇登録義務
登録義務を持つ事業者は下記の通りです。
・EU域内の製造者または輸入者
年間1t以上製造または輸入される物質の事業者
*製造量又は輸入量が年間10トン以上の場合は、化学品安全性報告書(CSR)の提出が必要です。
・EU域外の製造者の場合
指名した唯一の代理人が登録する
唯一の代理人はEU域内の誰でもなれますが、登録などの実務を行えるのは、化学物質の知識と実務経験のあるEU域内のコンサルタント会社や各種試験機関などに限られています。
◇消費者との情報共有
・成形品をEU域内外で製造又はEUへ輸入する事業者
認可対象候補物質(SVHC)を重量比0.1%を超えて含有する成形品について、
①川下ユーザー(登録代理人を立てたEU域外の製造者)
②消費者
に対して、要求があった場合、安全な使用を認めるのに十分な情報を伝達する義務があります。
・物質・調剤をEU域内で製造又はEUへ輸入する事業者
危険な物質・調剤やその対象となる物質を取り扱う場合、安全性データシート(SDS)を川下ユーザーに提供する義務があります。
上記物質以外であっても、登録番号、認可に関する情報、制限に関する情報、リスク管理措置に関する情報を提供する義務が課せられています。
まとめ
Reach規則は、EUにおける化学物質の総合的制度であり、化学物質の登録、評価、認可、および規制に関する規則です。
以前と大きく変わった点は、行政ではなく事業者が登録義務を持った点です。
また、消費者との情報共有も重要であり、成形品や物質・調剤の製造または輸入事業者は安全性情報を提供する義務も追加されました。
Reach規則の導入により、化学物質の安全性評価が強化され、EU市場における化学物質の取り扱いがより安全になったといえます。
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