ものづくりプレス

2024-09-02

ゴムの耐油性とは?

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ゴムの耐油性の重要性

ゴムの耐油性は、特に油や溶剤が頻繁に使用される環境下での工業ゴム製品のパフォーマンスを左右する重要な特性です。例えば、自動車エンジン内のシールやガスケット、油圧システムのホースやシール材などは、常に油に接触するため、耐油性が求められます。耐油性が不十分なゴムを使用すると、時間の経過とともにゴムが膨張し、割れたり、硬化したりしてしまいます。これにより、シール不良や油漏れといった問題が発生し、最終的にはシステム全体の故障を招くことがあります。

耐油性の高いゴムを使用することで、以下のようなメリットが得られます。


・耐久性の向上: 油による化学反応を抑え、ゴムの劣化を防ぐことで、長期間にわたって部品が機能を維持します。

・信頼性の確保: 耐油性の高いゴムは、システムのシール性能を長期間にわたって維持し、漏れやシステム障害のリスクを大幅に低減します。

・メンテナンスコストの削減: 耐油性の高い材料を使用することで、頻繁な部品交換や修理が不要となり、運用コストを削減できます。これにより、長期的なコスト効率が向上します。


耐油性を持つゴムの種類

ゴムの耐油性は、ゴムの種類によって大きく異なります。適切な材料選定は、製品の性能と耐久性に直結します。以下に代表的な耐油性を持つゴムの種類とその特性を詳述します。


・ニトリルゴム(NBR): 最も一般的に使用される耐油性ゴムで、鉱物油や燃料、潤滑油に対する優れた耐性を持っています。そのため、自動車のオイルシールやガスケット、油圧システムのシール材として広く採用されています。また、耐摩耗性にも優れており、機械的な強度が求められる用途にも適しています。


・フルオロカーボンゴム(FKM): 極めて高い耐油性と耐熱性を持ち、過酷な環境下でも安定した性能を発揮します。化学薬品や酸、燃料、油に対する耐性が求められる航空宇宙産業や化学工業で使用されることが多いです。また、FKMは優れた耐候性も持ち、極端な温度変化や紫外線にも耐えることができます。


・エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM): 一般的に耐油性は低いものの、特定の改質を施すことで、油との接触が少ないが耐熱性や耐候性が求められる用途に使用することが可能です。例えば、自動車の冷却系統や屋外で使用されるシーリング材として適しています。


・シリコーンゴム: 通常のゴムに比べて耐油性は劣りますが、高温環境や低温環境での使用に適しており、航空宇宙や電子機器の部品として使用されることが多いです。また、シリコーンゴムは化学的に安定しており、長期間にわたってその特性を維持します。


ゴムの耐油性に影響を与える要因

ゴムの耐油性は、単にゴムの種類によるものだけではなく、使用される環境や条件によっても大きく変化します。以下の要因が耐油性に影響を与えるため、使用環境を十分に考慮してゴムを選定することが重要です。


・油の種類: 異なる油や溶剤に対して、ゴムの耐性が異なる場合があります。例えば、鉱物油に対して耐性があっても、合成油やバイオ油には耐性が低い場合があります。選定の際には、使用される具体的な油の種類に基づいて適切なゴムを選ぶ必要があります。


・温度: 高温環境では、ゴムの分子構造が変化しやすく、劣化が早まることがあります。耐油性と耐熱性のバランスを考慮し、適切なゴムを選定することが重要です。また、温度変化が激しい環境では、耐熱性の高いゴムを選ぶことで、長期間にわたる安定した性能を確保できます。


・圧力: 高圧環境では、油の浸透が進みやすくなり、ゴムの劣化が加速されることがあります。高圧環境で使用されるゴム製品には、耐圧性があり、かつ耐油性が高い素材を選定することが求められます。また、圧力がかかる環境では、ゴムの硬度や厚みも耐油性に影響を与えるため、これらの要素も考慮に入れる必要があります。


結論

ゴムの耐油性は、工業ゴム製品の性能と耐久性を大きく左右する重要な特性です。適切な耐油性を持つゴムを選定することで、製品の信頼性と寿命を向上させ、システム全体のパフォーマンスを最適化することができます。ニトリルゴムやフルオロカーボンゴムといった、耐油性に優れたゴムを理解し、使用環境に応じた適切な材料を選ぶことが、工業ゴム製品の長期的な成功の鍵となります。