ものづくりプレス

2024-10-02

樹脂金型のスライド構造とは?

樹脂製品、つまりプラスチック製品は、その軽量さ、耐久性、そして大量生産が容易な点から、日用品や電子機器の部品、さらには機械のカバーといったさまざまな用途で利用されています。特に、製品が複雑な形状であっても製造可能な点が大きな利点です。樹脂製品を製造する方法の中でも、射出成形はその汎用性の高さから非常に広く用いられています。射出成形は、プラスチックを溶かし、それを金型に注入して成形品を作り出す技術であり、そのプロセスの効率性から大量生産に向いています。しかし、成形品の形状が複雑になると、通常の型開きだけでは取り出すことが難しい「アンダーカット」と呼ばれる部分が生じることがあります。この問題に対応するために、「スライド」という機構が金型設計に組み込まれることが一般的です。この記事では、このスライド機構について詳しく解説します。


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スライドとは

射出成形において金型を使用する際、アンダーカット処理は非常に重要な課題です。アンダーカットとは、製品の形状が型開きだけでは金型から取り出せない部分を指し、これを処理するために「スライド」という特別な機構が必要になります。スライド機構は、アンダーカット部分を適切に取り除き、成形品が問題なく金型から取り出せるようにします。スライドにはいくつかの種類が存在し、主に型開き時や押し出し動作の力、さらに油圧の力を利用してスライド部品を移動させる手法が採用されます。それぞれのスライドの種類とその特徴を理解し、製品の形状や金型の複雑さに応じて最適な選択を行うことが重要です。


スライドの種類

1.コアスライド

コアスライドは、スライド機構の中でも基本的なものであり、金型の可動側に設置されます。このスライドは、型開き時にアンギュラピンやカムの作用によりスライドを動かし、アンダーカット部を処理します。具体的には、型が開いた際にスライドが動き、製品のアンダーカット部分が解除され、製品を金型から取り出せるようになります。このスライドは、スライド本体、スライドブッシュ、ガイドレール、ロッキングブロック、アンギュラピンなどの部品で構成されており、スプリングやボールプランジャー、ストッパーを使ってスライドのストロークを調整することが可能です。ただし、このような構造を追加することで金型の製作コストが増加することがあるため、コストと機能のバランスを考慮した設計が求められます。


2.キャビスライド

キャビスライドは、金型の固定側に設置されるスライドです。可動側に設置されるコアスライドとは異なり、固定側にスライドを組み込むことで、より複雑な形状の成形品に対応することができます。しかし、このスライド機構を導入することで金型の構造はさらに複雑化し、製作費用も増加する傾向があります。キャビスライドは、固定側にスライド本体やカム、ガイドレールが組み込まれており、型が開く前にスライドが動作し、アンダーカット部を解除することが求められます。このような複雑な動作が必要になるため、精密な設計とメンテナンスが重要です。


3.内スライド

内スライドは、製品の内部にあるアンダーカット部を処理するためのスライド構造です。このスライドは製品の外部ではなく内部に配置され、製品内部の複雑なアンダーカット部分を解除する際に用いられます。例えば、ボトルや筒状の製品など、内部に入り組んだ形状を持つ成形品に対応する際には、この内スライドが非常に有効です。内スライドの動作には、成形品を取り出すために正確なタイミングでスライドが作動する必要があり、その動作精度が成形品の品質に直結します。


4.油圧スライド

油圧スライドは、スライドのストロークが長い場合や、通常の機械的なスライドが設置できない場合、または成形サイクルの効率を高めるために使用されます。このスライドは油圧シリンダーを利用して動作し、アンダーカット部を解除します。油圧を使うことで、スライドの動作が安定し、大きな力を必要とする場合や、正確な制御が求められる場合に効果的です。しかし、油圧システムを追加することで金型の設計がさらに複雑化し、製作コストも大幅に上昇することがあります。そのため、油圧スライドの導入は製品の生産性や品質向上に寄与する一方で、コスト増加とのバランスを取る必要があります。


スライドの重要性

射出成形で用いられる金型は、数百から数千に及ぶ部品で構成されており、成形品の形状や使用目的によっては非常に複雑な構造が要求されます。特に製品にアンダーカットがある場合、スライド機構を導入しなければ効率的な成形が難しくなることが多いです。スライドの有無やその種類、配置方法により、金型の製作コストは大きく変動する可能性があります。適切なスライド機構を選定し、成形品の取り出しやすさや品質を確保することが、製造プロセス全体の効率化やコスト削減に直結します。


スライド機構の選定と設計のポイント

射出成形において、スライド機構は金型設計の中で非常に重要な役割を担います。複雑なアンダーカットを処理し、成形品を効率的に取り出すために、適切なスライドを選定し、金型設計に組み込むことが不可欠です。コアスライド、キャビスライド、内スライド、油圧スライドといったさまざまな種類のスライドにはそれぞれ特性があり、製品の形状や成形条件に応じて最適なスライドを選ぶ必要があります。このような選定と設計を適切に行うことで、金型の複雑さとコストをバランスさせ、成形品の品質を確保することが可能です。


まとめ

スライド機構の導入は、製品の品質向上に寄与するだけでなく、成形サイクルの効率化やコスト削減にも大きな効果をもたらします。今後の製品開発や金型設計において、スライドの特性と適用条件を十分に理解し、効果的な設計を行うことが、成功への鍵となるでしょう。


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