ものづくりプレス
2024-10-18
リサイクルプラスチックの現状と未来:環境への影響と対策
現在、プラスチックごみは世界中で深刻な問題となっており、特に海洋汚染が注目されています。プラスチックの製造は1950年代から急速に拡大し、世界の経済発展と共にその使用量も大幅に増加しました。プラスチックは軽量で耐久性があり、生活や産業で非常に便利な素材ですが、その結果として、大量の廃棄物が発生し、適切に処理されない場合には環境に深刻な影響を及ぼします。
使い捨てプラスチック製品や包装材が海に流れ込み、自然分解されずに数十年から数百年にわたり存在し続けることが問題視されています。これにより、海洋生態系が破壊され、海洋生物がプラスチックを誤って摂取することで、健康被害を引き起こしているのです。さらに、分解されたプラスチックはマイクロプラスチックとなり、食物連鎖を通じて人間の健康にも悪影響を及ぼしています。
環境省の調査と将来予測
環境省の調査によると、2010年のデータでは、世界の192カ国から年間約800万トンのプラスチックごみが海に流出していると報告されています。これは、毎分に換算するとトラック1台分のプラスチックごみが海に流れ込んでいる計算になります。この状況が続くと、海洋生態系や漁業に甚大な被害をもたらし、結果として食料供給や人々の生活にも悪影響を与える可能性が高いとされています。
また、2016年にダボス会議で発表された予測によれば、このまま有効な対策が取られない場合、2050年には海洋に存在する魚の量をプラスチックごみが上回るとされています。この予測は、私たちがプラスチックごみの問題に対して迅速かつ効果的に対処する必要があることを示しています。
プラスチックリサイクルの方法
プラスチックごみの削減や資源の有効利用を目指すためには、プラスチックのリサイクルが非常に重要です。リサイクルには主に3つの方法があります。
マテリアルリサイクル
使用済みプラスチックを材料として再利用する方法です。このプロセスでは、使用済みのプラスチック製品を回収し、粉砕して再びプラスチック製品の原料として使用します。例えば、ペットボトルを回収し、新しいペットボトルや衣類、建材などに加工することが挙げられます。この方法はプラスチックの品質を保ちながら、再利用できるという点で最も環境に優しいリサイクル方法の一つです。
ケミカルリサイクル
化学的な処理によってプラスチックを分解し、原料の化学物質に戻す方法です。ケミカルリサイクルは、物理的にリサイクルが難しいプラスチックに対しても有効で、再びプラスチック製品や燃料として利用することが可能です。しかし、設備や技術が高度であるため、コストやエネルギー消費が課題となっています。
サーマルリカバリー
廃プラスチックを燃焼させ、その際に発生する熱をエネルギーとして回収する方法です。これは廃棄物の減量化とエネルギー利用の一石二鳥を狙ったものですが、焼却過程で有害なガスが発生する可能性があるため、厳格な管理が求められます。また、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルとは異なり、プラスチックの再利用とは言えないため、サーマルリカバリーは「リサイクル」とは区別されます。
日本における廃プラスチック処理の現状
日本は世界で3番目に多くの廃プラスチックを排出していますが、廃プラスチックの処理体制は比較的整備されています。そのため、陸域からの海洋プラスチック流出量は世界で30位と低い順位に位置しています。しかし、推定で年間3万6千トンのプラスチックが日本の陸地から海に流出していることが明らかになっており、さらなる対策が求められています。
2018年、日本で発生した廃プラスチックは約891万トンにのぼり、そのうち503万トン(56%)が熱回収処理されました。一方で、リサイクル(マテリアルリサイクルおよびケミカルリサイクル)されたのは247万トン(28%)にとどまっています。このデータから、まだ多くの廃プラスチックが熱回収に頼っている現状が伺えます。
さらに、日本政府は2019年に「プラスチック資源循環戦略」を策定し、プラスチックごみの削減とリサイクルの推進を目指しています。この戦略では、リサイクル率の向上を目指すだけでなく、プラスチック使用そのものを削減する取り組みも重要視されています。
まとめと今後の展望
プラスチックごみ問題は、環境保護だけでなく、私たちの生活や未来に深刻な影響を与える問題です。個人レベルでできる対策としては、リサイクルの徹底、使い捨てプラスチックの削減、エコバッグやリユース可能な製品の利用などが挙げられます。また、企業や政府レベルでも、より積極的なリサイクル技術の開発や、廃棄物の削減に向けた制度作りが進められています。
私たち一人一人ができる小さな行動が、地球規模の環境問題解決に大きく寄与することを忘れてはなりません。リサイクルの徹底や使い捨てプラスチックの削減を意識し、持続可能な社会の実現に向けて行動しましょう。
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