ものづくりプレス

2024-12-18

ゴムの二次加硫とは?そのプロセスと効果を徹底解説

ゴム製品の性能を左右する要因の一つが加硫プロセスです。
特に、二次加硫という処理がどのように行われ、製品にどのような影響を与えるのか、今回は詳しく見ていきます。


ゴムの二次加硫とは?そのプロセスと効果を徹底解説

ゴムの加硫とは

ゴムの「加硫」とは、未加硫のゴム(生ゴム)を加熱し、硫黄を用いて分子構造に架橋を形成するプロセスです。この架橋によって、ゴムは強度、柔軟性、耐久性といった製品として求められる特性を持つようになります。例えば、加硫の際に用いる硫黄の量や加熱温度、加硫時間が適切でないと、ゴムの性能に影響が出る可能性があります。特に加硫時間は重要で、短すぎると十分な架橋が形成されず強度不足になります。一方で長すぎると、分子鎖が熱により分解され、目標とする強度や耐久性が得られなくなる恐れがあります。そのため、ゴムの加硫工程は、製品の最終的な性能に大きな影響を与える非常に重要な工程です。


加硫と架橋はちがう?

「加硫」と「架橋」は、いずれもゴム分子同士を結びつけて強度を高めるという点で共通していますが、プロセスや目的には違いがあります。加硫は硫黄を加え、ゴムに特有の弾性と柔軟性を持たせるのが目的です。一方、架橋では硫黄ではなく有機過酸化物などの化学物質を用いてゴム分子を結びつけます。架橋によるゴムは加硫ゴムに比べて弾性が弱いものの、耐熱性や耐酸性が高いため、苛酷な環境でも使用できる点が特徴です。そのため、工業用途や化学薬品が含まれる環境下で使われるゴム製品には、架橋ゴムが適しています。加硫と架橋の違いは、使用される化学物質や、製品に求められる性能の違いによって区別されるため、適材適所で使い分けられます。


ゴムの二次加硫とは

「二次加硫」は、ゴム製品の初回の加硫が終わった後に、再び加硫工程を行うプロセスです。特にシリコーンゴムやフッ素ゴムなど、高性能が求められる特殊ゴムには二次加硫が一般的に行われます。一方で、天然ゴムやブタジエンゴムは、一次加硫のみで必要な性能が得られるため、二次加硫が実施されることは稀です。二次加硫によって、製品の弾性や耐熱性が強化されるため、これらの特性が求められる用途に使用されるゴムには不可欠な工程となっています。また、シリコーンゴムの場合、一次加硫の後に残る低分子量成分や加硫剤の分解残渣を取り除く目的で行われることが多く、製品の安定性や品質向上に寄与します。


ゴムの種類による二次加硫の方法

二次加硫の方法は、ゴムの種類や目的によって異なります。一次加硫では、通常、金型内や恒温槽内で温度と圧力を制御して行われ、ゴム分子間の架橋を生成します。一方、二次加硫では圧力をかけずに空気中で常圧下で行い、より高い温度で加熱処理を施します。例えば、シリコーンゴムの場合、パーオキサイド加硫剤の分解による残渣や環状シロキサンといった低分子化合物を加熱して除去し、製品の絶縁特性を向上させることを目的としています。フッ素ゴムやアクリルゴムにおいては、二次加硫で加硫反応を完全に終了させることで、ゴムの硬度や強度をさらに安定化させる効果があります。これにより、厳しい環境下でも変形や劣化を防ぎ、耐久性が高まります。


二次加硫の条件

材料ごとに異なる二次加硫の温度・時間設定について、代表的な例を以下に示します。これらの条件は、ゴムの分子構造や性能を考慮して最適化されています。


・シリコーンゴム
  一次加硫:165℃で約12分間
  二次加硫:200℃で約4時間
・フッ素ゴム
  一次加硫:170℃で約12分間
  二次加硫:220℃で約24時間


二次加硫の条件設定は、製品の性能と耐久性を左右するため、ゴムの種類や使用環境に合わせた適切な設定が求められます。特に高温環境で使用される製品には、十分な加熱処理が必要とされ、二次加硫条件が重要な要素となります。


二次加硫の課題

二次加硫はゴム製品に優れた性能を付与する反面、過度な熱処理はゴムの熱老化を促進し、耐久性の低下や強度の減少を引き起こすリスクがあります。ゴムは熱に弱い性質があるため、二次加硫による加熱が長時間行われると分子鎖が切断され、柔軟性や弾性が低下してしまうことがあります。そのため、加硫条件の設定には製品の使用目的や耐用年数が慎重に考慮されます。また、二次加硫が必要とされるシリコーンゴムなどの製品については、加硫プロセスを最適化することでコストを抑えつつ、製品の性能を安定させる工夫も求められます。二次加硫の課題には、製品の品質向上と耐久性のバランスを保つことが求められます。


まとめ

今回は、ゴムの性能を左右する「二次加硫」の重要性やプロセス、課題について詳しく解説しました。二次加硫は、ゴム製品の耐久性や特性を大きく左右する要素であり、製品の性能を最大限に引き出すために適切な条件設定が欠かせません。今後も、環境負荷の少ない加硫方法や効率的な二次加硫の研究が進み、より耐久性の高いゴム製品が開発されていくことが期待されます。


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