ものづくりプレス
2025-01-02
加硫促進剤の歴史
ゴム製品の製造工程において、最も重要なプロセスの一つが「加硫」です。加硫は、素練りされたゴムに加硫促進剤を加えることで化学反応を促し、ゴムの弾力性や耐久性、引張強度といった品質を決定します。特に、加硫促進剤はこの工程での効果を左右する要因であり、加硫のスピードを速め、反応を安定させる役割を果たします。加硫促進剤の適切な選択と使用は、最終製品の品質や製造コストに直結するため、非常に慎重な管理が必要です。不適切な選択や使用ミスは、製品の欠陥や損害をもたらすリスクがあり、これにより企業に多大な損失を与える可能性もあるため、十分な配慮が求められます。
加硫促進剤の歴史と発展
加硫促進剤の発展は、1906年に遡ります。この年、アメリカの化学者オーエンスレーガーが、アニリンがゴムの加硫反応を加速することを発見し、これが有機系加硫促進剤の使用開始のきっかけとなりました。しかし、アニリンには毒性があったため、翌年には毒性が低減されたDPTU(チオカルボアニリド)が開発されました。また、同時期には他の化学物質、例えばヘキサメチレンテトラミン(HMT)なども加硫に利用されるようになりました。1912年にはジチオカルバミン酸塩系のPPDC(N-ペンタメチレンジチオカルバミン酸ピペリジン塩)が発見され、その後も様々な化合物が次々と加硫促進剤として利用されるようになりました。
1915年にはキサントゲン酸塩系の加硫促進剤が登場し、1918年から1922年にはジチオカルバミン酸金属塩、TMTD(テトラメチルチウラムジスルフィド)、DPG(ジフェニルグアニジン)、MBT(メルカプトベンゾチアゾール)、MBTS(ベンゾチアジルジスルフィド)といった数々の加硫促進剤が相次いで発見されました。1932年には、スコーチ時間が長く、調整しやすい特性を持つスルフェンアミド系加硫促進剤が登場し、1930年代には現在も使用される加硫促進剤の基本的な化学構造がほぼ確立されました。
日本においては、1931年に初めて高品質な加硫促進剤であるジフェニルグアニジン(DPG)の国産化が実現しました。その後、1933年からMBT、MBTSおよびTMTDといった加硫促進剤も国産化が進められ、輸入依存から国産製品への移行が加速しました。
現在の加硫促進剤の使用方法と組み合わせ
現代における加硫促進剤の使用方法は、単独使用にとどまらず、複数の促進剤を組み合わせて用いることが一般的です。これにより、ゴムの性質を細かく調整することが可能となり、製品の仕様や用途に応じた性能を引き出すことができます。現在も多くの加硫促進剤が使用されていますが、これらの多くは数十年前に開発されたものであり、大きな進化は見られていません。これまでの蓄積された知識と技術が、現在のゴム製造の基盤となっているのです。
このように、有機系加硫促進剤は長年にわたってゴム工業において重要な役割を担い続けてきました。その歴史と進化は、ゴム製品の品質向上と耐久性向上に大きく寄与しており、今日でも産業界で欠かせない存在です。
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