ものづくりプレス

2024-11-30

バイオマスナフサの価格動向と今後の展望

近年、石油に代わる持続可能なエネルギーとして、バイオマス由来の資源が注目を集めています。

特に化学産業の基幹原料であるナフサも、再生可能なバイオマスから生成された「バイオマスナフサ」に置き換える動きが進んでいます。

バイオマスナフサを使用することで、従来の石油由来ナフサと同等の品質を維持しながら、バイオマス化学品やバイオマスプラスチックのラインナップ拡充、追加コストの抑制といったメリットが得られます。

本記事では、バイオマスナフサの特長やメリット、さらにその市場価格の現状と課題について詳しくご紹介します。

バイオマスナフサ

バイオマスナフサとは

私たちの日常で使用される多くのプラスチックは、石油由来のナフサ(粗製ガソリン)に含まれる炭素(C)と水素(H)を利用したさまざまな化学物質から生まれています。 バイオマスナフサはその名の通り、再生可能な資源であるバイオマス(植物などの生物由来の有機資源)から生成された炭化水素(炭素と水素からなる化合物)で、石油由来ナフサと同等の 役割を果たします。

バイオマスナフサのメリット

化学産業の基幹原料であるナフサを石油由来からバイオマス由来に置き換えることで、大きく3つのメリットが得られます。


バイオマス製品ラインナップの拡充

ナフサクラッカーで生成される多様な化学製品を一括してバイオマス化できるため、バイオマス化学品やバイオマスプラスチックのラインナップを大幅に広げることが可能になります。

従来の課題でバイオマス化が難しかった製品も、この方法により対応できるようになります。


石油由来と同等の品質

この方法により、従来の石油由来プラスチックや化学品と同品質でバイオマス化が可能です。

そのため、一般的なバイオプラスチック(PLAなどセグリゲーション方式*のもの)と異なり、素材の性質を変えずに製品開発を進められ、プロセスも大幅に効率化できます。


*セグリゲーション方式とは、石油由来と分離して管理されたバイオマス原料を使用するサプライチェーン管理方式を指します。

なお、この方式でも石油と同等の性能を持つバイオマスプラスチックがあります。


社会インフラへの追加コストが不要

既存の設備を活用してバイオマス化を進められるため、セグリゲーション方式で必要となる専用ラインの設置などの大規模な追加投資が不要です。

加工メーカーも条件変更や品質評価を行う必要がなく、追加コストを抑えられます。


これにより、社会のバイオマス化を一層推進し、カーボンニュートラルな社会の実現に向けて素材面での貢献を目指しています。

バイオナフサ市場の現状

現在、バイオナフサの市場は複数の情報会社によって評価されていますが、生産能力が限られているため、現物取引のみで構成されています。

その取引量が少なく流動性も低いため、先物市場はまだ未発展で、価格の目安としては、ネステ社など大手供給者の現物オファー価格が参考にされています。

価格動向

2022年の取引価格は1トンあたり約2700~3200ドルで、これは通常のナフサの約4~5倍の価格でした。

現在、日本では炭素税を含め、CO2排出に対する課税制度がないため、企業は将来の脱炭素社会への取り組みの一環としてこの高価なバイオナフサを調達し、そこで生産される石化製品をバイオグレードとして顧客に提供し始めています。

まとめ

いかがでしたか?

バイオマスナフサの活用は、脱炭素社会の実現に向けた重要な一歩であり、持続可能な社会構築への期待が高まっています。

今後の技術革新や政策支援により、バイオマスナフサが一般に普及し、循環型社会の柱としてさらに発展していくことが期待されます。

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