ものづくりプレス

2024-12-16

注型成形とは?金型を使わない加工法を、費用を含めてご解説!

注型成形とは、試作品や少量生産に特化した製造方法の一つです。この技術では、まずマスターモデル(試作段階の元となるモデル)を作成し、そのモデルを用いてシリコーンゴム製の型を製作します。次に、その型に樹脂を真空状態で注入し、硬化させて製品を成形します。
注型成形の特長として、以下の点が挙げられます:


シリコーン型を使用することで、金型を用いる射出成形に比べて初期コストが大幅に削減できる。
・型作成のリードタイムが短く、納期が迅速。
・1回の型で5~20個程度の製品を製造できるため、試作品や少量生産に適している。


特に、試作段階でのデザイン検討や形状確認において、注型成形は非常に有効な方法です。本記事では、この注型成形について具体的なメリットや使用例を交えて詳しく解説していきます。


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注型成形は費用が安い?

注型成形の最大の魅力は、そのコストパフォーマンスの高さです。射出成形と比較すると、注型成形は製造コストを5分の1から10分の1程度に抑えることが可能です。たとえば、射出成形でA4サイズの製品を製造する場合、金型製作に約180万円、完成までに約40日が必要です。一方、注型成形では、以下の理由から製造コストと時間を大幅に削減できます:


コスト削減の理由
1.型構造が簡易的

注型成形では、凹型または凸型のどちらか一方の型で製品を成形できます。射出成形のような複雑な型構造は不要です。
2.成形圧力が低い
真空注入を行うため、型に高い強度が必要ありません。そのため、シリコーン型や木製、樹脂製の型を使用でき、型製作のコストが抑えられます。


これにより、注型成形は短納期かつ低コストで試作品や小ロット製品を製造する際に最適な選択肢となります。


注型成形で使われる材料

注型成形において使用される材料は、主に以下の二液硬化性樹脂です:


・ウレタン系樹脂

柔軟性から硬度の高いものまで幅広い特性を持つ樹脂で、試作品から小ロット製品まで幅広く利用されます。
・エポキシ系樹脂
耐久性が高く、機械的強度に優れた樹脂です。電気絶縁性が必要な製品にも活用されます。


これらは硬化剤を混ぜることで化学反応を起こし、硬化して強度を持ちます。また、樹脂の種類は以下の2種類に大別されます:


・熱硬化性樹脂:熱を加えると硬化する樹脂。注型成形で使用される主な材料。
・熱可塑性樹脂:熱を加えると軟化し、冷却すると硬化する樹脂。射出成形などで用いられる。


樹脂の選定によって製品の強度や仕上がりが変わるため、用途に応じた材料選びが重要です。


注型成形の用途

注型成形は、主に以下のような場面で活用されます:


主な用途
1.機能チェックや形状確認用の試作品
製品の完成度を高めるために、デザインや寸法を実際に確認する際に用いられます。
2.商用サンプル品
少量の製品を市場に提供する際に活用。特に新製品のプロモーションや展示会での使用に最適です。
3.金型検討用の試作品
製品の量産前に、金型での量産性を検討するためのプロトタイプ作成に使用されます。


注型成形のメリット
・小ロット製作に最適(1型あたり1~20個程度の製造が可能)。
・型作成コストが低い(シリコーン型の利用により)。
・複雑な形状や細かなディテールに対応可能。


注型成形のデメリット
20個以上の大量生産には不向き(型が摩耗しやすいため)。
・精度が切削加工や射出成形に比べて劣る場合がある。
・使用できる材料がウレタン系やエポキシ系に限定される。


注型成形の製品例

注型成形は、以下のような幅広い分野で製品の製造に利用されています:


日用品
・卵ケース、お弁当プレート
・家庭用家電のカバー(ゲーム機、パソコンなど)


商業用途
・自動販売機のサンプルやディスプレイパネル
・看板、配送トレー、業務用パレット


自動車・航空機・重機分野
・自動車の内装・外装部品(バンパー、ヘッドライトカバーなど)
・航空機や電車の樹脂製カバー


医療分野
・医療機器やリハビリ機器の外装
・機能性サンプル品の製造


その他
・フィギュアやアミューズメント機器の装飾部品

・照明カバー、浴槽、洗面台などのインテリア製品


これらの製品例からも分かるように、注型成形は高精細な試作品や、少量の実用製品の製造に非常に有効です。


まとめ

注型成形は、試作品や少量生産を求める場面において非常に有用な製造技術です。以下の点が主な魅力です:


・コスト効率の高さ(金型費用や製造コストの大幅削減)。
・短納期(シリコーン型の使用で型作成期間が短縮)。
・複雑な形状や多様な用途への適応力。


一方で、製造数の制限や材料の選択肢が限られる点を考慮する必要があります。しかし、特に試作段階やデザイン検討が必要な場合には非常に効果的な技術です。
これから注型成形を検討される方は、この手法を活用して製造プロセスを効率化し、コストを抑えた製品作りを実現してみてはいかがでしょうか?


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