ものづくりプレス

2025-01-17

オゾンによるゴム劣化を防ぐ!屋外設置での注意点とメンテナンス方法

ゴムは、その優れた弾性により、さまざまな産業で不可欠な素材となっています。この弾性は、ゴムが伸びたり縮んだりしても元の形に戻る特性を意味し、多くの用途でゴムが選ばれる理由です。しかし、ゴム弾性が要求されない場面では、ゴムを使用するメリットはほとんどありません。そのため、ゴム製品は通常、使用中に何らかの応力(ひずみ)がかかる状況で使用されています。


オゾン劣化は、このゴムの弾性に大きな影響を与えます。たとえば、実験によれば、ゴムに5%の伸びを加えた場合、深い亀裂が数箇所発生し、100%の伸びでは無数の浅い亀裂が確認されています。特に、10%~20%の伸びが最も深刻な劣化を引き起こします。さらに、湿度が高い環境では、オゾンの吸収量が増加し、劣化が加速することがわかっています。


見た目には応力がかかっていないように見えるゴム製品でも、高湿度や高濃度のオゾン環境下ではオゾンクラック(亀裂)が発生する場合があります。たとえば、机の上に置かれたゴム製品も、わずかな自重による応力がかかっています。この応力の影響で、亀裂は応力の方向に垂直に入る傾向があります。この特性は、ゴム製品の材質を選定する際に重要なポイントです。


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ゴムのオゾン劣化のメカニズム

オゾン劣化は、ゴム分子とオゾン分子の反応により進行します。以下はその具体的なプロセスです。


1.二重結合の破壊
 天然ゴム(NR)には、炭素間の二重結合が多く含まれています。オゾンはこの二重結合を攻撃し、分子構造を破壊します。


2.オゾナイドの分解
 オゾンとの反応によって生成されたオゾナイドが、両性イオンとケトンに分かれます。


3.化学反応の連鎖
 両性イオンは周囲のアルデヒドや活性水素と反応し、新たな化合物やハイドロペルオキシドを形成します。これらの化合物は、ゴム分子の構造をさらに劣化させる原因となります。


これらの化学反応が進むことで、ゴム製品の表面には亀裂や破損が生じ、弾性や強度が失われます。


ゴムのオゾン劣化を防ぐための対策

オゾンによる劣化を防ぐためには、環境や使用条件に応じた適切な対策が必要です。以下の方法を採用することで、ゴム製品の寿命を延ばすことができます。


1. 耐オゾン性の向上
ゴムの耐オゾン性を向上させるためには、以下の物質を添加することが効果的です。
・ワックス:ゴムの表面にゆっくりと現れ(ブルーム現象)、薄い保護膜を形成してオゾンからゴムを物理的に保護します。
・老化防止剤:ゴム分子がオゾンと化学反応を起こすのを防ぎ、化学的に劣化を抑えます。
これらの添加剤を組み合わせることで、オゾン劣化に対する防護効果を高められます。


2. 応力の軽減
ゴム製品は応力がかかりにくい状態で保管することが重要です。たとえば、
・重ねて圧力をかけない
・折り曲げたり吊るしたりしない
・水平な状態で慎重に取り扱う
応力が少ないほど、オゾン劣化の進行を遅らせることができます。


3. 使用・保管環境の管理
ゴム製品を保管・使用する環境を管理することも劣化防止には欠かせません:
・高湿度や高濃度のオゾンが発生しやすい場所を避ける。特に、モーターや高電圧機器の近く、オゾン発生装置の周辺ではオゾン濃度が高まるため注意が必要です。
・直射日光を避ける。日光の紫外線もオゾン濃度を高める要因となり、劣化を加速します。


4. 耐オゾン性の高いゴムを選ぶ
主鎖に不飽和結合を持たないゴムは、オゾンに対する耐性が高いです。以下のゴムは特に耐オゾン性に優れています。
・フッ素ゴム(FKM)
・シリコーンゴム(Q)
・エチレンプロピレンゴム(EPM)
・アクリルゴム(ACM)

これらのゴムを使用することで、オゾン劣化のリスクを大幅に低減できます。


まとめ:ゴム製品の耐久性を向上させるために

ゴム製品の寿命を延ばすためには、オゾン劣化のメカニズムを理解し、適切な対策を講じることが不可欠です。ワックスや老化防止剤の使用、環境の管理、耐オゾン性の高いゴムの選択などを組み合わせることで、ゴム製品の劣化を効果的に防止できます。
私たちの周囲にある多くのゴム製品が安全かつ長く使えるよう、これらの知識を活かして、信頼性の高い製品を選ぶことを心がけましょう。


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