ものづくりプレス
2025-03-06
バイトンとフッ素ゴムの違いを化学的に検証
バイトン(Viton®)は、耐熱性や耐薬品性に優れたフッ素ゴムの一種であり、自動車、航空機、化学工場などの過酷な環境で使用されています。フッ素ゴムにはバイトンのほかにもFKMやFPMといった呼び方があり、それぞれ規格や商標の違いによって名称が変わります。
本記事では、バイトン(Viton®)とフッ素ゴムの違いについて詳しく解説し、それぞれの特性や用途を明確に理解できるようにします。これからの技術や産業に欠かせない素材について、ぜひ学んでいきましょう。
バイトンとは
バイトン(Viton®)は、デュポン社(現在のChemours社)が開発したフッ素ゴムの商標名で、高温や化学薬品に強い特性を持つ合成ゴムです。高い耐熱性、耐薬品性、耐油性を備えており、自動車や航空機、化学プラントなどの環境で使用されています。
具体的な用途には以下のようなものがあります。
・自動車産業:エンジン周りのOリング、燃料システムのガスケット、オイルシール
・航空宇宙産業:航空機の燃料システム、油圧機器のシール材
・化学工業:反応容器のガスケット、薬品搬送ホースの内層材
これらの用途では、長期間の使用に耐え、高いシール性を維持できることが求められます。バイトンは、一般的なゴムと比較して高温や強い薬品環境でも劣化しにくいため、信頼性の高い材料として重宝されています。
呼び方の違い
フッ素ゴムには、さまざまな名称が使われています。それぞれの意味や規格を理解することで、適切な製品を選ぶことができます。
フッ素ゴム(フルオロエラストマー)
フッ素を含む合成ゴムの総称で、耐熱性や耐薬品性に優れたゴム材料です。化学薬品や高温環境下で使用されるOリングやガスケットなどに利用されます。
FKM
FKMは、米国規格(ASTM)におけるフッ素ゴムの略称です。
・F(Fluoro):フッ素
・K(Kohlenstoff):ドイツ語で炭素
・M:飽和骨格を持つゴムの分類
FPM
FPMは、ISO(国際標準化機構)でのフッ素ゴムの登録規格名です。ISO 9000およびISO/TS 16949で使用される名称です。
Viton®(バイトン)
Viton®は、Chemours社(旧デュポン社)の登録商標であり、1958年に航空宇宙産業向けに開発されました。その後、耐久性の高さから、自動車産業や化学プラントなどさまざまな分野で広く普及しています。
フッ素ゴムとは
フッ素ゴムは、以下のようなモノマーを組み合わせて作られています。
・エチレン(E)
・ヘキサフルオロプロピレン(HFP)
・パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)
・プロピレン(P)
・テトラフルオロエチレン(TFE)
・フッ化ビニリデン(VDF)
これらの組み合わせによって、耐熱性、耐薬品性、耐油性などの特性が最適化されます。
フッ素ゴムの特徴として、
・耐熱性:-20℃〜+250℃の温度範囲で使用可能
・耐薬品性:酸、アルカリ、有機溶剤に強い
・耐油性:エンジンオイルや燃料に対する優れた耐性
しかし、
・低温環境には不向き
・メタノールや蒸気には耐性が低い
といった弱点もあるため、使用環境を考慮して選択する必要があります。
バイトンが適している用途と環境
バイトンは、特に以下のような用途で使用されます。
1.自動車
・燃料システムのシール材
・エンジン周辺部品(Oリング、ホース)
・トランスミッション用シール
2.航空機
・航空燃料のガスケット
・油圧装置のシール
3.化学工場
・酸・アルカリ・溶剤の搬送ホース
・反応容器のパッキン
バイトンの耐久性と耐薬品性
バイトンは、優れた耐久性と耐薬品性を誇ります。
・耐熱性:最大 250℃ まで使用可能
・耐薬品性:酸、アルカリ、炭化水素、芳香族化合物に強い
・耐油性:エンジンオイルや燃料に対する高い耐性
・耐候性:オゾン、紫外線による劣化を受けにくい
特に、エンジンや化学プラントのような過酷な環境下で長期間の耐久性を求められる場合に最適です。
まとめ
バイトンとフッ素ゴムの違いについて詳しく解説しました。バイトンは、フッ素ゴムの一種であり、高温・化学環境下で優れた性能を発揮します。そのため、自動車、航空宇宙、化学工業など、さまざまな分野で活躍しています。
もし今後、これらの素材を選定する際には、用途や環境を考慮しながら適切な種類を選ぶことが重要です。バイトンをはじめとするフッ素ゴムの特性を理解し、最適な製品選びに役立ててください。
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