ものづくりプレス

2025-03-09

2025年、ゴム業界が注目する国際規制とその影響

森林保護を目指す新たな国際規制「EUDR」とは?

天然ゴムや木材、食品など、私たちの生活に欠かせない製品が、環境にどのような影響を与えているか考えたことはありますか?

2024年末から、EUでは森林破壊を防ぐための国際規制「EUDR(EU森林破壊規則)」が本格的に始まります。

この規制は、製品が森林破壊に関与していないことを証明する仕組みを導入し、環境への負荷を減らそうという試みです。

対象となるのは天然ゴムやタイヤ、コーヒーなど多岐にわたり、特に天然ゴム業界では対応が急務とされています。


この記事では、EUDRがいったいどのような内容で、どんな影響をもたらすのか見ていきます。

森林

EUDRとは


EUDR(EU Deforestation Regulation、EU森林破壊規則)は、EUでの輸出入において、製品が森林破壊に関与していないことを証明するための新たなルールです。

この規則は2024年12月30日以降、EUに輸入される木材、パームオイル、コーヒー、カカオ、牛、大豆、天然ゴムおよびそれらの製品に適用されます。



この規則では、森林破壊によって開拓された農地で生産されたものでないことを確認し、デューデリジェンス(企業に求められる適切な注意義務と努力)を実施し、その結果を報告することが義務付けられています。

さらに、生産地のトレーサビリティ(追跡可能性)の調査も必要であるため、企業にとって負担の大きい規則となっています。

課題と進捗状況


大きな課題の一つは、規則で求められる詳細な定義が未だに明確ではないことです。

対象製品は天然ゴムそのものだけでなく、タイヤやベルト、その他ゴム製品を含みます。

輸入時にはHSコード40番台(ただし合成ゴムや再生ゴムなどは対象外)の製品が規制対象となり、天然ゴムベースのゴムコンパウンドも含まれます。


しかし、多くの天然ゴムが複数の地域から調達された原料を混ぜて製造されている現状では、原料の地理情報を正確に把握するのは容易ではありません。

さらに、4ヘクタール以上の土地で採取された場合、その境界を示すデジタル地図データが必要とされるなど、対応には高度な技術とデータ管理が求められます。



タイではタイ天然ゴム公社が地理データを提供するプラットフォームを構築中ですが、全てのグレードに対応できているわけではありません。

ベトナムでは一部の工場がEUDR対応を達成していますが、インドネシアやマレーシアでは対応が遅れており、今後一部の製品が輸出できなくなる可能性もあります。


こうしたデータ管理や電子ファイル作成のためのプラットフォームは欧米企業が提供していますが、そのコストは非常に高額で、年間数千万円に及ぶ場合もあります。

このため、規則が欧米企業に利益を集中させる構図になっているとの批判もあります。

実施開始時期と企業への影響


EUDRは、大企業に対しては2024年12月30日から、中小企業に対しては2025年6月30日から適用が開始されます。

この規則において、企業規模による例外は設けられていません。

日本からEUへの輸出には通常8週間以上を要するため、適用開始を前に在庫を積み増す動きも一部で見られます。

これは、デューデリジェンス宣言書の受理が不確実な場合、販売が不可能になるリスクを避けるため、時間的余裕を確保する目的で実施されています。


企業はまず、自社のEUへの輸出品や輸入品がEUDRの対象かどうか、対象である場合にはどのような調査が必要かを確認することが重要です。

この義務を怠り規則に違反した場合、EU内での販売が禁止されるだけでなく、EU域内での年間売上の4%以上という高額な罰金が科せられる可能性があります。


EUDR規制自体は環境保護の観点で意義深いものですが、天然ゴム業界においては混乱を招いています。

透明性の向上が求められる中、適切な対応を進めるとともに、国際的な支援や協力が重要となるでしょう。

まとめ


いかがでしたか?

EUDRは、森林破壊を防ぎ環境を守るために導入された重要な国際規制です。

しかし、その一方で、企業や産業界には大きな負担が伴い、特に天然ゴム業界では対応に追われています。

このような変化は、私たちの暮らしにも影響を及ぼすかもしれません。

だからこそ、国際規制の動向に目を向け、私たち一人ひとりが環境問題を意識して行動することが求められています。

持続可能な未来を目指し、EUDRをきっかけに環境と経済のバランスを考える一歩を踏み出しましょう。