ものづくりプレス

2025-03-16

静電気対策に使える樹脂部品の選び方とその効果

静電気は、普段あまり意識しないかもしれませんが、電子機器の誤作動や火災の原因になることもあり、特に工業製品や製造現場では重要な課題です。

そんな静電気対策に欠かせないのが「樹脂部品」の選び方です。

実は、樹脂には「導電性」や「帯電性」といった性質があり、それぞれの特性を活かすことで、静電気の発生や蓄積を効果的に防ぐことができます。


また、用途に応じて電気を通しやすくしたり、帯電しにくく加工された特別な樹脂も存在します。



本記事では、静電気対策に役立つ導電性・帯電性樹脂の基本知識や、各種樹脂の特徴、工業製品での適切な選び方について詳しく解説します。

静電気問題を解消し、安全性と性能向上を目指す方はぜひご覧ください!

静電気

樹脂の導電性・帯電性とは

樹脂の導電性や帯電性は、その種類によって異なります。

導電性が高い樹脂は電気を通しやすく、電子機器や静電気対策に最適です。

また、電気抵抗値が調整された導電グレードや帯電グレードの樹脂もあり、使用目的に応じて適切な選択が求められます。


導電性とは

導電性とは、物質が電気を通す能力のことです。

導電性が高い素材は、電気を効率的に伝導するため、電子機器や電気回路で欠かせない役割を果たします。

導電性は、主にその素材に含まれる自由電子の数とその移動のしやすさによって決まります。

金属やグラファイトは高い導電性を持っていますが、プラスチックは一般的に導電性が低く、ゴムやガラスと同様に絶縁体として使用されることが多いです。

ただし、特定の加工や添加剤を使用することで、プラスチックに導電性を付与することができます。


導電性の高い樹脂には、導電率が高いフィラー(カーボンブラック、カーボンナノチューブ、金属粉末など)を加えた「導電性樹脂」や、分子構造自体に導電性を持つ「導電性ポリマー」が代表的です。


帯電性とは

帯電性とは、物質が静電気を帯びる性質を指します。

静電気は、物質同士が摩擦や接触することによって電荷が移動し、特に乾燥した環境では強く発生します。

多くのプラスチックは静電気を蓄えやすく、帯電性が高い素材に分類されます。


電子機器では、静電気の蓄積が誤動作や火災を引き起こす可能性があるため、製品の素材における帯電性を管理することが非常に重要です。

樹脂の帯電性を低減させるためには、帯電防止剤を使ったり、導電性素材を混ぜたりする方法があります。

クリーンルームや静電気対策が求められる製造現場では、帯電性が低く調整された樹脂が広く使用されています。

樹脂の特徴紹介

ここでは、各樹脂の特徴について紹介します。


ポリエチレン(PE)

ポリエチレンは、軽くて耐薬品性に優れた熱可塑性樹脂で、非常に広範な用途を持っています。

食品の包装やパイプなどでよく使用されますが、静電気がたまりやすい性質があります。


ポリプロピレン(PP)

ポリプロピレンは、高い耐熱性と強度を持つ汎用プラスチックで、家庭用品や自動車部品などに多く使われています。

ただし、静電気を帯びやすいため、使用する際には注意が必要です。


ポリスチレン(PS)

ポリスチレンは、透明度が高く軽量で加工しやすい熱可塑性樹脂です。

パッケージやディスプレイ製品など、さまざまな用途で使用されていますが、静電気を蓄積しやすい特徴があります。


ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)

ポリテトラフルオロエチレンは、非常に優れた耐熱性と耐薬品性を持つスーパーエンジニアリングプラスチックです。

その高い絶縁性により、帯電性も高くなる特徴があります。


ポリアニリン(PANI)

ポリアニリンは、優れた導電性を持ち、静電気防止用途に適した導電性ポリマーです。

腐食防止や帯電防止のコーティング材料として活用されています。


カーボンナノチューブ複合樹脂(CNT)

カーボンナノチューブ複合樹脂は、カーボンナノチューブを樹脂(例えばPEEK)に分散させて導電性と強度を向上させた材料です。

高性能な電子機器や部品に使用され、静電気対策が必要な環境でも利用されることが増えています。


ポリピロール(PPy)

ポリピロールは導電性ポリマーの一種で、比較的簡単に合成できる特徴があります。

アクチュエータの小型化に貢献し、電子機器や化学センサーなど、厳密な静電気対策が求められる用途に最適です。


ポリカーボネート(PC)

ポリカーボネートは、非常に高い透明性と優れた強度、耐衝撃性を持つエンジニアリングプラスチックです。

絶縁性能に優れており、光学ディスクや液晶テレビ、光ファイバーなどで使用されています。


ポリアミド(PA)

ポリアミドは「ナイロン」としても知られ、強度と耐熱性に優れています。

機械部品や自動車部品などに適したエンジニアリングプラスチックで、吸湿性があり、帯電しにくいという特性があります。

まとめ

いかがでしたか?

樹脂部品の導電性や帯電性は、工業製品の静電気対策において重要な要素です。

適切な樹脂を選ぶことで、静電気によるトラブルを防ぎ、製品の安全性や品質を向上させることが可能です。

本記事でご紹介した基礎知識や選び方を参考に、用途に最適な樹脂を見極めてください。

静電気対策を万全にすることで、製品の信頼性を高めるだけでなく、作業環境の改善や効率化にもつながるはずです。

樹脂の特性を正しく理解し、活用して、より良いものづくりを目指しましょう。