ものづくりプレス
2025-04-17
樹脂加工における3Dプリント技術の可能性と未来
近年、製造業において「3Dプリンター」が大きな注目を集めています。
この技術は、設計から製造までのプロセスを大幅に短縮し、試作から最終製品までを効率的に生み出すことを可能にします。特に樹脂加工の分野では、その精度や強度が飛躍的に向上しており、以前は不可能とされた複雑な形状も製造できるようになりました。
本記事では、3Dプリント技術の基本から応用、そして今後の展望までを丁寧に解説します。製造業の未来を支えるこの革新技術について、一緒に理解を深めていきましょう。
3Dプリントとは
3Dプリントとは、デジタルデータをもとに立体物を造形する製造方法です。CAD(コンピュータ設計)で作成された3Dモデルをもとに、材料を積み重ねて立体物を形作るこの手法は、「付加製造(Additive Manufacturing)」とも呼ばれます。
このプロセスでは、一般的に樹脂や金属などの材料を一層ずつ積層していき、設計通りの形状を作り出します。従来の削り出し(切削)による製造方法とは異なり、材料の無駄を最小限に抑えられる点が大きな特徴です。また、造形中に中空構造を取り入れることも可能で、軽量化と強度の両立も実現できます。
加工方式の種類
3Dプリントにはいくつかの加工方式があり、目的や材料に応じて使い分けが必要です。ここでは代表的な3つの方式をご紹介します。
DM(溶融堆積)方式
フィラメント状の熱可塑性樹脂を高温で溶かし、ノズルから押し出して一層ずつ積み重ねて造形します。手頃な価格で入手できることから、個人用途から簡易な試作まで広く活用されています。ABSやPLAなどの一般的な樹脂に対応しやすいのも特徴です。
粉末焼結方式(SLS、SLMなど)
粉末状の材料(金属や樹脂など)にレーザーや電子ビームを照射し、選択的に溶かして固める方法です。高い精度と強度を持つ造形が可能で、航空宇宙、自動車、医療などの産業用途に多く利用されています。専用の粉末材料と装置が必要なため、設備コストは高めです。
光造形方式(SLA、DLPなど)
液体状の感光性樹脂に紫外線やレーザーを照射して硬化させる方式です。非常に高精細な造形が可能で、滑らかな表面仕上げが求められる試作品や医療モデルに活用されます。ただし、使用できる材料は限られており、耐久性や耐熱性が低い場合もあります。
作れる形状の自由度
3Dプリンターの大きな利点のひとつが、形状の自由度の高さです。従来の加工法では困難だった複雑な内部構造や曲線、空洞のある部品なども、3Dプリントなら簡単に作成できます。
たとえば、内部にハニカム構造を持たせて軽量かつ強度の高い部品を作ったり、従来は複数部品に分けていたものを一体構造で成形することで、組立工程を不要にしたりすることが可能です。これにより、設計の自由度が飛躍的に高まり、製品開発の幅が広がっています。
加工プロセスの効率性
3Dプリンターのもう一つの魅力は、加工プロセスの簡素化です。CADデータと材料をセットするだけで、機械が自動で造形を開始するため、人の手を大幅に省くことができます。
この自動化により、段取り替えや治具の準備といった工程が不要になり、開発期間の短縮とコスト削減が実現できます。特に少量多品種の生産に適しており、個別対応が求められる業種では大きな利点となります。
3Dプリントの精度を高めるためのポイント
高精度な3Dプリントを実現するには、単に機械の性能だけでなく、造形後の処理(後処理)も重要です。その中でも代表的なのが「HIP処理(熱間等方圧加圧)」です。
HIP処理では、加熱と同時に高圧ガスを使って造形物全体に均等な圧力をかけ、内部の空洞や微細な欠陥を除去します。これにより、密度や充填率が高まり、強度や耐久性が大きく向上します。
また、充填率(インフィル率)を設計段階で高める設定にすることも、剛性や強度向上には重要です。複雑な形状でも内部の構造を均一に仕上げられるため、品質のばらつきを抑えられます。
3Dプリントのこれから
今後、3Dプリント技術はますます進化し、より多くの分野での活用が期待されています。
特に以下のようなトレンドが見られます。
・家庭用3Dプリンターの普及
新型コロナウイルスの影響により、家庭での物づくりへの関心が高まり、玩具や日用品を自作する個人が増えました。
・製造業での活用拡大
試作品の迅速な作成、少量生産での治具・パーツの製作、製品の軽量化など、業界全体に影響を及ぼしています。
一方で、大量生産には時間がかかる、法規制や品質基準の整備が進んでいないなどの課題も存在します。しかし、これらは技術進化と制度整備によって徐々に解消されつつあり、今後さらに多くの産業に導入されると考えられています。
おわりに
3Dプリンターは、これからの製造業にとって欠かせない存在になる可能性を秘めた革新技術です。
特に、樹脂加工の精度向上や造形自由度の高さは、従来の製造方法では実現できなかった新しい価値を提供しています。
個人の趣味から産業用途まで、幅広く活用が進む中で、今後どのような技術革新が起こるのか注目が集まります。
より自由で効率的なものづくりを目指して、3Dプリントの可能性を活かしていきましょう。
記事検索
NEW
-
2025/05/11金型不要のゴム加工で実現する高品質製品の製造プロセスゴム製品を作る際、「金型が...
-
2025/05/11金型不要で革新!ゴム加工の新技術とそのメリット「試作したいけど、金型を作...
-
2025/05/10オイルブリードの影響と活用ゴム製品を使用していると、...
-
2025/05/10アンチモン不足がもたらすポリオキシメチレン樹脂の価格上昇とその対策ポリオキシメチレン(POM)は...
CATEGORY
ARCHIVE
-
2025
お知らせ 151 -
2025
ゴム 151 -
2025
その他ものづくり 151 -
2025
成形・加工方法 151 -
2025
樹脂・プラスチック 151 -
2024
お知らせ 244 -
2024
ゴム 244 -
2024
その他ものづくり 244 -
2024
成形・加工方法 244 -
2024
樹脂・プラスチック 244 -
2023
お知らせ 41 -
2023
ゴム 41 -
2023
その他ものづくり 41 -
2023
成形・加工方法 41 -
2023
樹脂・プラスチック 41 -
2022
お知らせ 7 -
2022
ゴム 7 -
2022
その他ものづくり 7 -
2022
成形・加工方法 7 -
2022
樹脂・プラスチック 7 -
2021
お知らせ 18 -
2021
ゴム 18 -
2021
その他ものづくり 18 -
2021
成形・加工方法 18 -
2021
樹脂・プラスチック 18