ものづくりプレス
2025-04-21
特殊ゴム加工:極限環境で活躍する耐熱・耐寒ゴム部品
私たちの生活のあらゆる場面で活躍している「ゴム素材」。自動車、建築、家電、医療など、その使用範囲は非常に広く、なくてはならない存在です。しかし、ゴムには一口に言っても多くの種類があり、それぞれ異なる性質を持っています。特に「寒さ」や「熱」に対する強さは、用途によって重要な判断材料になります。
たとえば、極寒の地域で使われる製品には、低温でも硬くならない「耐寒性のあるゴム」が必要です。一方、高温環境下で使用される機械部品などには「耐熱性のあるゴム」が不可欠です。
この記事では、ゴムの耐寒性と耐熱性に注目し、それぞれの性質や代表的なゴムの種類をわかりやすく解説していきます。製品の品質や寿命を大きく左右するゴムの選び方について、ぜひ参考にしてください。
ゴムの耐寒性って?
ゴムの「耐寒性」とは、低温の環境でも柔軟性や弾力を保ち、硬くなりにくい特性のことを指します。ゴムは基本的に高分子化合物(ポリマー)からできており、この分子の動きが温度によって左右されます。
気温が低くなると、分子の運動エネルギーが低下し、硬化や脆化が起こりやすくなります。その結果、ゴムがパリパリになってしまい、ひび割れや破損の原因になることもあります。
一方で、耐寒性の高いゴムは、分子構造が低温でも柔軟性を維持できるように設計されています。これにより、マイナス温度の中でもしなやかさを保ち、機能を損なわずに使用できるのです。
耐寒ゴムの種類
寒冷地や冬季の屋外作業、冷蔵・冷凍環境などで使用される製品には、耐寒性のあるゴムが必要不可欠です。ここでは、代表的な耐寒ゴムの種類を紹介します。
シリコーンゴム
シリコーンゴムは、耐寒性に非常に優れており、マイナス70℃程度までの環境でも性能を維持できます。加えて、耐熱性、耐候性(紫外線や風雨への強さ)、絶縁性にも優れている万能素材です。
食品衛生性にも優れているため、調理器具(ヘラ、型など)や哺乳瓶の部品、医療用チューブなど、人が直接触れる製品にも安心して使われています。
また、柔らかく加工性が高い点も魅力で、設計自由度が高い製品にも対応できます。
EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)
EPDMは、マイナス40℃程度までの低温環境に対応可能なうえ、紫外線やオゾン、酸性雨などにも強く、屋外用途に適したゴムです。
たとえば、自動車のドアや窓のシール材、防水材、建築の外装用パッキン、電線の絶縁被覆など、長期間外気にさらされる場面で多く利用されています。
耐候性と耐寒性を両立していることから、外部環境の変化が激しい日本の気候でも活躍するゴムです。
ゴムの耐熱温度について
ゴムは、熱に対してある程度の強さを持つ素材ですが、その性質は種類ごとに異なります。また、ゴムはプラスチックと異なり、「熱硬化性」と呼ばれる性質を持つため、「一定の温度を超えたらすぐ溶ける」というわけではありません。
しかし、高温にさらされると、ゴムの分子結合が劣化し、弾力が失われたり、変形・破損につながる場合があります。そのため、ゴムの「耐熱温度」は以下のように定義されます。
耐熱限界温度
ゴムが長時間さらされると物理的または化学的変化が起こる温度の上限を指します。この温度を超えると、ゴムは変色・軟化・亀裂・膨張・収縮などの劣化が始まります。
耐熱安全温度
ゴムが長期間使用しても性質の劣化が起こりにくい、安全とされる温度の上限です。製品設計時には、この温度以下での使用を推奨することが一般的です。
耐熱ゴムの種類と特徴
高温環境で使われる機械部品や設備には、耐熱性のあるゴムが求められます。ここでは、代表的な耐熱ゴムの種類とその特徴・用途を紹介します。
シリコーンゴム
シリコーンゴムは、耐寒性に加えて220℃以上の高温にも耐える性能を持ちます。そのため、幅広い業界で採用されています。
主な用途:
・自動車部品(エンジン周辺のホース、ガスケット、シール材)
・医療用品(カテーテル、シリコーンチューブ)
・電気・電子機器(ケーブル被覆、絶縁シール)
さらに、シリコーンは無毒であり、耐候性にも優れるため、長寿命かつ安全性が求められる製品に最適です。
フッ素ゴム(FKM)
フッ素ゴムは、300℃前後の高温でも安定して性能を維持できる特殊なゴムです。また、油・薬品・溶剤への耐性も非常に高く、他のゴムでは代替できない過酷な環境に適しています。
主な用途:
・化学プラントのシール材・パッキン
・航空宇宙機器の燃料システム
・自動車のオイルシールや燃料系部品
腐食性の高い流体を扱う産業分野では、フッ素ゴムの信頼性が非常に高く評価されています。
エチレンプロピレンゴム(EPDM)
EPDMは、150℃程度までの耐熱性を持ちながら、耐候性・耐寒性にも優れているバランス型のゴムです。
主な用途:
・建築資材(屋根材、防水シート)
・自動車部品(ドアシール、ウィンドウシール)
・電気機器部品(ケーブルのジャケット、絶縁材)
耐熱性と環境耐性のバランスに優れたEPDMは、「屋外×高温」という条件下でも高いパフォーマンスを発揮します。
ぴったりのゴムを選んで、長く安心して使おう!
ゴム素材の選定は、製品の寿命や安全性に直結する重要なポイントです。「寒さに強いか」「熱に強いか」だけでなく、紫外線・薬品・油への耐性、加工のしやすさ、使用する環境など、総合的に判断する必要があります。
製品に最適なゴムを選べば、トラブルを未然に防ぎ、メンテナンス頻度の低減やコスト削減にもつながります。あなたの用途に応じて最適なゴム素材を見つけ、長く快適に使用できる製品づくりに活かしてください。
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