ものづくりプレス

2025-04-25

高機能樹脂の熱圧成形加工:強度と耐久性を兼ね備えた製品作り

プラスチック製品は私たちの生活のあらゆる場面に登場していますが、その加工方法にはさまざまな種類があります。その中でも「熱圧成形」は、強度や耐久性に優れた製品づくりを実現できる加工法として注目を集めています。
熱圧成形は、プラスチックのシートを温めて柔らかくし、専用の型に圧力をかけて成形する方法です。このシンプルな工程の中に、高性能なものづくりのノウハウが詰まっています。
この記事では、熱圧成形の加工工程や特徴、具体的な活用分野について詳しくご紹介します。小ロット・中ロット生産にも対応しやすいことから、製品の開発初期や多品種少量生産を考える企業にとっても有力な選択肢となるでしょう。


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熱圧成形の加工工程

熱圧成形は、次の5つのステップで成形が行われます。それぞれの工程には、製品の品質を左右する重要なポイントがあります。


1. 加熱
まず、プラスチックシートを加熱炉(ヒーター)で一定の温度まで温め、柔らかく加工しやすい状態にします。加熱温度は素材ごとに異なりますが、一般的には100℃〜200℃程度まで加熱されます。この段階での温度管理が不十分だと、後工程での成形不良につながることもあるため、非常に重要な工程です。


2. セット
加熱して柔らかくなったシートを迅速に型にセットします。冷却が始まる前に型にはめることで、正確な形状を再現できます。型には上下の構造があり、シートを下型に置くことで次の圧力工程に備えます。


3. プレス&冷却
型を閉じ、上から圧力をかけてシートを成形します。圧力のかけ方は用途や形状によって調整され、均一に押し固めることで、形崩れや歪みのない成形品が得られます。その後、圧力をかけたまま冷却を行い、形状を安定させます。この冷却工程は、製品の強度を高める重要な役割も担っています。


4. 取り出し
成形された素材が十分に冷えて固まったら、型を開いて成形品を取り出します。成形品が型からスムーズに取り出せるように、離型剤を使用することもあります。


5. 仕上げ
最後に、不要なフチやバリなどをカットし、必要に応じて穴あけ加工や表面仕上げを行います。見た目の美しさや、使用上の安全性を確保するための大切な仕上げ工程です。


熱圧成形の特長

熱圧成形には、他の成形方法にはない多くのメリットがあります。ここでは、代表的な特徴を詳しく解説します。


立体的な一体成形が可能
熱圧成形は、プレート状のシートを型で押しつけて成形するため、立体的な形状も一体でつくることができます。たとえば、縁が立ち上がったトレイや皿状の形状も、継ぎ目なく製造可能です。真空成形のように複雑な曲線形状も対応できますが、シートを深く引き延ばすような形状には制限があるため、設計時には形状のバランスに配慮が必要です。


厚みが均一で高品質な仕上がり
真空成形では、素材を引っ張って成形するため、厚みにムラが生じやすいという欠点があります。一方、熱圧成形ではシートを型に押し固めるため、全体に均一な圧力がかかり、厚みの均一性を保つことができます。そのため、見た目の美しさはもちろん、機械的な強度にも優れた製品を作ることが可能です。


型の跡がつきにくく透明素材にも最適
型の設計や圧力のかけ方を調整することで、表面に型の跡がつきにくく、光沢のある仕上がりが実現できます。特に、アクリルやPETのような透明素材では、製品の見た目が非常に重要になるため、熱圧成形は高品質な仕上がりが求められる製品にも適しています。


素材の強度・耐久性が向上
加熱と冷却の過程で素材の分子構造が安定し、まるで金属における焼き入れのような効果が得られます。その結果、元の素材よりも強度や耐久性が向上し、過酷な環境にも耐える製品が作れるようになります。


木型が使えるためコストを抑えられる
熱圧成形では、金型よりも安価な木型を使用することができるため、初期投資を大幅に抑えることができます。これにより、試作や小ロット生産、中ロット生産にも柔軟に対応できるため、多品種少量生産を目指す企業にも適した加工方法です。


熱圧成形の主な用途

熱圧成形は、その特性を活かして多くの産業分野で活用されています。以下に代表的な用途を分野ごとに紹介します。


自動車産業
・内装部品:ダッシュボードやドアパネル、シートクッションなど、内装の美観と安全性を求められる部品に活用されます。耐久性や意匠性が評価されています。
・外装部品:バンパーやフェンダーなど、外部の衝撃に耐えるパーツにも利用されています。複雑な形状の成形にも対応可能です。


航空宇宙産業
・軽量構造部品:機体の軽量化を目指し、強度と軽さを兼ね備えた成形品が必要とされる部位に使用されます。省エネルギー化にも貢献します。
・断熱材:高温や低温環境でも耐えられる断熱性のある素材を成形する用途にも適しています。


医療技術分野
・医療機器:手術器具や治療用デバイスなど、高精度が求められる医療機器のカバーやフレームに使用されます。
・プロテーゼ:人工関節や義肢など、患者ごとにカスタマイズされた製品の製造にも対応可能です。


電子機器
・ハウジング:スマートフォンやタブレット、ノートパソコンの外装ケースなどに使用されます。高精度で美観のある成形が求められる分野です。
・内部構造部品:電子回路を支える内部の構造材や、精密コネクタの支持材としても活用されます。


建築材料
・断熱パネル:建物の壁面や屋根に使用され、断熱性を向上させる目的で使われます。高温耐性も求められます。
・装飾パネル:建物の内装や外装の意匠性を高める装飾パネルにも適しています。美しい仕上がりが評価されます。

まとめ|熱圧成形は高品質・コスト効率を両立できる加工法

熱圧成形は、強度と耐久性を兼ね備えた成形品を、比較的低コストで製造できる優れた樹脂加工技術です。自動車、航空、医療、電子機器、建築など、さまざまな分野で活用されており、特に試作や中小ロット生産において高い効果を発揮します。
製品の品質向上やコスト削減を目指す企業にとって、熱圧成形は非常に魅力的な選択肢です。用途に応じた設計・型の工夫により、より自由度の高い製品づくりも可能となります。
高品質な製品を効率よく生産したいとお考えの方は、ぜひ熱圧成形の導入を検討してみてください。