ものづくりプレス

2025-05-05

アンチモン不足が招く!難燃樹脂材料の価格急騰の背景とは

最近、難燃樹脂材料の値上がりが注目されています。

その背景には、「アンチモン」という金属の供給不足が大きく関係しています。


アンチモンは、プラスチックや電子機器、自動車部品などを燃えにくくする「難燃剤」として使用される重要な素材です。

しかし、環境規制の強化や輸出制限の影響で供給が減少し、価格が急騰しています。

さらに、航空機や自動車産業をはじめとする難燃剤の需要増加も、価格上昇の要因となっています。


本記事では、アンチモン不足が難燃樹脂材料の値上がりを引き起こしている理由や、その影響について詳しく紹介します。

アンチモン

アンチモンとは

アンチモン(原子番号51、元素記号Sb)は、銀白色で硬くて脆い金属の一種です。

炎を当てると淡い青色に光る特徴があります。


元素記号「Sb」は、アンチモンを含む鉱石「輝安鉱(Stibium)」に由来します。

この輝安鉱は、昔の日本最古の貨幣にも使われていました。


アンチモンは、周期表の第15族に属する「半金属」と呼ばれる元素で、金属と非金属の中間の性質を持ちます。

とてももろく、叩いて伸ばすことはできません。

融点は約630℃で、一度溶かしてから冷えて固まると、体積が少し増える特徴があります。

同じく第15族の「ヒ素」に似た性質を持ち、一部の化合物には毒性があるため、扱いには注意が必要です。


アンチモンの化合物の中で最もよく使われるのは「三酸化アンチモン」です。

これは、火を消す役割のある難燃剤や、プラスチックの製造に必要な触媒として活用されています。

また、三酸化アンチモンはタンニン(お茶に含まれる成分)と結びつきやすいため、緑茶を飲むと体外に排出されやすいとも言われています。

アンチモンの重要性

アンチモンは、「産業界のグルタミン酸ナトリウム」とも呼ばれる、とても貴重な資源です。

一度使ったら再生できない「戦略鉱物資源」に分類され、軍事、航空宇宙、印刷、難燃剤など、他の材料では代わりがきかない分野で重要な役割を果たしています。


また、国内外で「希少鉱物リスト」に入っていることからもわかるように、供給が不足しているレアメタルの一つです。

特に中国は世界最大のアンチモン生産国であり、同時に最大の消費国でもあります。

そのため、アンチモン市場の動きはほぼ中国次第といっても過言ではありません。

難燃剤樹脂材料の値上がりの背景

アンチモン不足が難燃樹脂材料の価格急騰を引き起こしている背景には、いくつかの要因があります。


供給の制約

アンチモンの主要生産国である中国やミャンマーでは、環境規制が厳しくなり、鉱山の枯渇や新しい鉱山の開発が難しくなっています。

そのため、供給量が減少しており、これが価格の上昇を引き起こしています。


需要の増加

難燃剤は電子機器や自動車、航空機など多くの産業で使用されており、需要が急増しています。

特に火災のリスクを避けるために、難燃処理は必須となっています。


地政学的な要因

中国政府はアンチモンの輸出規制を強化したため、供給不足が悪化しています。


価格の高騰

供給不足と需要増加が同時に進行した結果、アンチモンの価格は過去12年で最高値を記録しました。

これにより、難燃樹脂材料の価格も急騰しています。


これらの要因が重なり、アンチモン不足が難燃樹脂材料の価格急騰を引き起こしています。

今後もこの状況が続く可能性が高く、企業は代替素材の検討や新たな供給源の確保を迫られています。

まとめ

アンチモンの供給不足による難燃樹脂材料の値上がりは、多くの産業に影響を与えています。

特に、自動車や電子機器、航空機などの分野では、難燃剤の使用が欠かせないため、コスト上昇が避けられない状況です。


今後、企業は代替素材の開発や新たな供給ルートの確保を進める必要があります。

また、市場の動向を注視しながら、コスト管理や生産戦略の見直しを行うことが求められるでしょう。


本記事で紹介したように、アンチモン不足がもたらす影響は大きく、長期的な対策が必要です。

今後の市場の変化に備え、最新情報をキャッチしながら柔軟な対応をしていくことが重要となるでしょう。