ものづくりプレス

2025-06-23

ノンアスベストパッキンの特徴と用途|環境対応型シール材の選び方

かつて「奇跡の鉱物」とまで呼ばれ、多くの工業製品に使用されていたアスベスト(石綿)。その優れた耐熱性・耐久性により、断熱材やパッキン、ブレーキライニングなど幅広く用いられてきました。しかし、アスベストの吸入が深刻な健康被害(中皮腫や肺がんなど)を引き起こすことが明らかになり、2006年には日本国内で全面的に使用が禁止されました。
この法規制を受け、メーカー各社はアスベストに代わる**安全性の高いパッキン材料「ノンアスベストパッキン」**を開発しました。現在では、アスベストを一切含まない素材で作られたパッキンが水道設備や産業用途において主流となり、私たちの生活や作業環境の安全を支えています。
この記事では、ノンアスベストパッキンの基本構造や用途、耐熱性、従来のアスベストパッキンとの違いまで詳しく解説します。


ノンアスベストパッキン

ノンアスベストパッキンとは?

ノンアスベストパッキンは、アスベストの代替として開発された安全性重視のパッキン素材です。主に以下のような材料で構成されています。
・繊維材料(アラミド繊維、グラスファイバーなど)
・充填剤(フィラーとして鉱物粉末など)

・バインダー(合成ゴムやエラストマーなど)
このような複合構造により、ある程度の機械的強度と耐熱性、耐薬品性を持ち合わせています。


特徴:
・質感は厚紙に近く、押してもほとんど弾力がない。
・面で密着する構造のため、ねじれに強く、ボルト締結時の安定性が高い。
・ゴムパッキンと比べるとシール性はやや劣るが、高温・高圧条件でも安定。
・製品にはさまざまな**色(青、赤、黒など)**があり、仕様ごとに区別されている。
・防食性・耐熱性・耐圧性を高めた高機能タイプもラインアップ。


ノンアスベストパッキンの主な用途

ノンアスベストパッキンは、その耐熱性と耐薬品性を活かして、さまざまな分野で利用されています。特に以下のような用途において高い信頼性を発揮します。


一般住宅設備での使用例:
・水道配管のフクロナット用ガスケット
・洗面台やキッチンの給湯管接合部
・家庭用給湯器の配管部


産業用途での使用例:

・フレキパイプやユニオン継手の接合部
・ボイラー設備や熱交換器の配管接合部
・工場の高温流体ライン(蒸気、オイル、薬品等)


いずれも、高温流体・薬品との接触や圧力変動に耐える必要がある箇所に使われるため、素材の信頼性が極めて重要です。


ノンアスベストパッキンの耐熱温度

ノンアスベストパッキンは、その素材構成や設計によって耐熱性に幅があります。


耐熱性の目安:
・家庭用製品:約95℃程度まで対応
・産業用高性能製品:最大650℃程度まで対応可能な製品もあり


ただし、これはあくまで静的条件(圧力変動や振動が少ない状態)での最大値です。実際の現場では以下の要因で耐熱性能が変化します。
・使用される流体の性質(水、油、薬品など)
・圧力変化の大きさや脈動の有無
・取り付け方法の精度
・接触する金属表面の粗さや状態


そのため、耐熱温度のカタログ値だけを鵜呑みにせず、使用環境に応じた適切な製品選定が重要です。また、高耐熱仕様の製品は一般流通量が少ないため、価格が高くなりやすく、納期も長めになる傾向があります。

アスベストパッキンとの違い

アスベストパッキンとノンアスベストパッキンでは、素材そのものの違いに加えて、性能面や扱いやすさ、価格にも違いがあります。


アスベストパッキンの特徴(過去):
・加工性が良く、幅広い流体に対応できる万能パッキン
・熱・圧力・薬品に強い
・柔軟性があり、フランジとの密着性が高い


ノンアスベストパッキンの特徴(現在):
・アスベストを含まず、安全性が高い
・取り扱い時の粉じんリスクがなく、作業環境を汚さない
・一部の物性(弾力性・耐圧性)はアスベストに劣るが、設計や加工法で補完可能
・高機能品は価格がやや高め


特に安全性の観点から、アスベスト製パッキンの代替を進めることは法令遵守や労働者保護の観点からも必須です。


まとめ:ノンアスベストパッキンは「安全性」と「用途適合性」の両立を実現

ノンアスベストパッキンは、アスベストに代わる安全で高性能な密封材として、住宅設備から産業用設備にまで広く採用されています。その特性を理解し、適切に使えば、漏れのない信頼性の高い配管システムを構築できます。
選定の際には、使用する流体の種類・温度・圧力・接合形状などを総合的に考慮し、最適なグレードを選ぶことが重要です。今後、素材技術の進歩により、さらなる性能向上が期待されるノンアスベストパッキン。環境と人に優しいものづくりを支える基盤技術として、今後の展開にも注目が集まっています。