ものづくりプレス

2025-10-06

ゴムの耐熱・耐寒性とは?過酷な環境に強い素材の見分け方

ゴムの耐熱・耐寒性とは?温度に強い素材の基本知識

ゴム 耐熱 耐寒性は、製品が想定環境で性能を維持できるかを左右する最重要指標です。高温側では熱酸化・架橋の変化・可塑剤の揮発によって硬化や亀裂が進み、低温側ではガラス転移温度(Tg)に近づくほど分子運動が凍り付き、硬化や割れ、シール性低下が発生します。つまり、同じ「ゴム」でも分子骨格・充てん剤・可塑剤・加硫系が異なれば、耐熱限界・耐寒限界・推奨使用温度は大きく変わります。

実務では「連続使用温度(常用範囲)」と「短時間ピーク温度(許容範囲)」を分けて考えるのがポイントです。例えば、ある材質が一時的に180℃に耐えられても、長期連続で使えるのは150℃まで、といったケースは珍しくありません。また低温側では、同じ硬度でも配合により柔軟性の失われ方が異なります。製品選定では、温度だけでなく、油・薬品・UV・オゾン・圧力・振動といった複合環境における劣化挙動まで含めて評価しましょう。

耐熱性に優れたゴムの種類と特徴

シリコンゴム(VMQ)は無機骨格由来の安定性が高く、連続使用で150〜200℃級、短時間でさらに高温を許容しやすいのが特長。電装・食品設備・医療など、清浄性と高温弾性が求められる用途で定番です。フッ素ゴム(FKM)は200℃前後の高温下でも機械特性と耐油・耐薬品性を高水準で両立し、エンジン周り・化学プラント・真空機器のシールに適します。EPDMも耐熱・耐候のバランスがよく、120〜150℃程度の常用域で長期安定。スチーム・温水環境に比較的強い点も評価されています。

一方、NBRは耐油に優れるものの高温酸化で硬化しやすく、連続高温ではFKMに劣ります。CR(ネオプレン)は難燃・耐候のバランス型で中温域に適合。いずれの材質も配合次第で耐熱は上下し、過酸化物加硫や耐熱老化防止剤の採用で「同じ素材名でも性能差が大きい」点に注意が必要です。

耐寒性に優れたゴムの種類と特徴

低温に強いかどうかは、Tg(ガラス転移温度)がカギです。シリコンゴムは低温柔軟性に非常に優れ、−50〜−60℃級でも弾性を保持しやすく、寒冷地の電装シールや低温機器に最適。EPDMも−40℃付近までの低温で実用性が高く、屋外ウェザーストリップや防水部材に広く使われています。CRはバランス型で−30℃前後を実用域とし、耐候・耐油の両面から汎用用途をカバーします。

一方、NBRは一般グレードでは低温で硬化しやすいものの、低温可塑化や共重合比の最適化で改善が可能。SBRは低温での柔軟性がNRに比べてやや劣る傾向があり、極寒用途ではEPDMやシリコンを優先するのが定石です。低温割れを防ぐには、硬度を上げすぎない、可塑剤の移行・揮発を抑える、充てん剤の種類・量を見直すなど、配合面での工夫も効果的です。

環境条件に合わせた素材選びと注意点

まずは実使用温度プロファイルを可視化しましょう。平均温度だけでなく、起動時のピーク温度、停止時の放熱、外気温の季節変動、局所発熱(モーター・ヒーター・摩擦)などを洗い出し、温度マージンを確保します。次に、温度以外の要素も同時に評価します。例えば、ゴム 耐熱 耐寒性が高くても、油・薬品・蒸気・オゾン・UV・粒子摩耗に弱ければ寿命は伸びません。EPDMは耐候・耐水に強い一方、油には弱い傾向、FKMは耐熱・耐油に強いが低温柔軟性はシリコンに及ばない——といったトレードオフを理解することが重要です。

  • 設計のコツ:厚みを過度に薄くしない、角Rで応力集中を緩和、シールは圧縮ひずみの最適化(一般に15〜30%目安)。
  • 配合・加硫:過酸化物加硫は高温安定に有利、硫黄加硫は弾性や加工性に利点。要求特性に応じて選択。
  • 評価試験:熱老化・低温曲げ・圧縮永久ひずみ・オゾン・UVの複合試験で寿命予測を実施。短時間の単独試験だけで判断しない。
  • メンテナンス:温度サイクルの激しい現場では、定期点検と予防交換をルーチン化。表面のひび・硬化・潤滑劣化は早期発見が鍵。

結論として、「温度に強い=万能」ではありません。用途に最適な素材は、想定温度×媒体×屋外/屋内×寿命要求の掛け算で決まります。ゴム 耐熱 耐寒性を軸に、シリコン・FKM・EPDM・CR・NBR等の特性を比較し、必要に応じて表面処理・断熱・遮熱・遮光などの外的対策も併用することで、過酷環境でも安定稼働する設計が実現します。

ChatGPT Image 2025年10月6日 21_03_48

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