ものづくりプレス
2025-10-06
スチレンブタジエンゴム(SBR)とは?
スチレンブタジエンゴム(SBR)とは?基本概要と特徴
スチレンブタジエンゴム(SBR)は、その名の通りスチレンとブタジエンを共重合して得られる代表的な合成ゴムです。天然ゴムと比べて品質が安定し、耐摩耗性や耐老化性、加工性に優れることから、世界的に広く用いられています。特に自動車用タイヤのトレッドやサイドウォール、コンベヤベルト、ホース、パッキン、靴底など、日常から産業まで用途は多岐にわたります。原料の設計や配合次第で、硬度・弾性・動的特性を幅広く調整できる柔軟性の高さもスチレンブタジエンゴム SBRの魅力です。
一方で、SBRは非極性の炭化水素系ゴムであるため、耐油性や高温連続使用の点ではNBR(ニトリル)やFKM(フッ素ゴム)に及ばない場面があります。その弱点は配合やブレンド(NRやBRとの併用)で補うのが一般的です。近年は低燃費・低騒音・ウェットグリップ向上など、タイヤ性能の高度化にあわせてSBRの分子設計やフィラー分散技術(シリカ充填、サイレーンカップリングなど)も進化しており、環境対応の観点からも重要度は高まっています。
SBRの製造方法と種類
スチレンブタジエンゴム SBRは大きく「乳化重合(E-SBR)」と「溶液重合(S-SBR)」の2方式で製造されます。E-SBRは界面活性剤を用いた乳化系で、装置・コストの面で優位なため汎用グレードとして広く普及。粒径制御や配合の自由度が高く、耐摩耗性や加工性に優れます。S-SBRは有機溶媒中でのアニオン重合等により、分子量やスチレン含有量、ビニル含有量、末端基を緻密に制御できることが特長です。この精密制御により、転がり抵抗(燃費)、ウェットグリップ(制動)、耐摩耗の三立を狙うタイヤ用途で重宝されます。
また、同じSBRでもブタジエンの1,2-ビニル結合比やランダム性、スチレン比率を最適化することで、低温柔軟性や動的損失(tanδ)を細かく調整可能です。NR(天然ゴム)やBR(ブタジエンゴム)とのブレンドバランス、シリカ/カーボンブラックの種類と配合、加硫系(硫黄/過酸化物)と老化防止剤の選定など、プロセスと配合設計の掛け算により、同じ「SBR」でも乗用車・トラック・工業製品向けで別物の性能を引き出せます。
SBRの主な特性とメリット・デメリット
メリット:まずスチレンブタジエンゴム SBRは、耐摩耗性が高く、繰り返し変形下でも比較的安定した弾性を示します。耐老化・耐熱老化もNRより有利な場合が多く、加硫反応やフィラーとの相性が良いため配合自由度が大きい点も強みです。加工粘度の扱いやすさ、量産性、材料価格の安定性もトータルコストの観点で評価されています。
デメリット:一方で、耐油性・耐燃料性はNBRに劣り、高温連続使用や耐熱劣化ではFKMやシリコンゴムに及びません。低温柔軟性の点ではBRやシリコンに分があるため、寒冷地用途ではブレンドや配合の工夫が欠かせません。また、耐候・耐オゾンはEPDMほど強くないため、屋外長期用途では保護設計(ワックス、UV吸収剤、表面コート)を前提にするのが実務的です。
補強・改良の方向性:タイヤ分野では、シリカ+カップリング剤によるウェットグリップと低転がり抵抗の両立、高分散技術によるヒステリシス制御が主流です。工業用品ではNR/BRとのブレンドで初期物性と動的耐久を底上げし、用途に応じて耐熱・耐候・難燃・導電などを狙った配合(特殊フィラー、樹脂改質)も行われます。
SBRの用途と今後の展望
主な用途:タイヤ(トレッド・サイドウォール・ビード周辺)、シール・パッキン、搬送用ベルト、ホース、緩衝材、床材、靴底、ローラーなど。とくに乗用車タイヤでは、スチレンブタジエンゴム SBRがNR・BR・充てん材と組み合わされ、グリップ・燃費・摩耗の最適解を目指す中核材料です。工業分野でも、適度な弾性とコストバランス、加工性の良さから、成形・押出・カレンダーいずれの工程でも扱いやすい材料として重宝されています。
今後の展望:モビリティの電動化・自動運転化の流れにより、タイヤには低騒音・低転がり抵抗・ウェット性能・耐摩耗のさらなる高度化が求められます。これに対し、溶液重合SBR(S-SBR)の精密制御とシリカ高分散技術の進化、リサイクル・再生材の活用、バイオ由来モノマーやマスバランス方式の採用など、環境・循環型社会に対応した技術革新が加速するでしょう。また、工業用品分野では導電・帯電防止機能、難燃・耐熱改良、防音・振動制御などの高付加価値化が期待されます。
総じてスチレンブタジエンゴム SBRは、汎用性・コスト・性能バランスに優れた「標準解」の合成ゴムでありながら、分子設計と配合技術のアップデート次第で次世代要求にも柔軟に応えるポテンシャルを持っています。基礎特性と弱点、製造法ごとの差を正しく理解し、用途・環境・寿命要件に合わせた最適設計を行うことが、SBRを最大限に活かす近道です。
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