ものづくりプレス
2025-11-20
マイクロプラスチック規制とは?世界と日本の最新動向をやさしく解説
近年、「マイクロプラスチック規制」「マイクロプラスチック問題」という言葉をニュースや企業のサステナビリティレポートで目にする機会が大きく増えました。
とくにEUのマイクロプラスチック規則(Regulation (EU) 2023/2055)が施行されたことで、「自社も何か対応が必要なのでは?」と感じている企業も多いはずです。
- そもそもマイクロプラスチックとは何か?
- なぜ世界中で「マイクロプラスチック規制」が進んでいるのか?
- EU・日本でどのような規制・対策が取られているのか?
- メーカー・自治体・個人は、今なにをすればよいのか?
本記事では、「まず全体像を押さえたい」という方向けに、
マイクロプラスチック規制の基礎知識から世界・EU・日本の最新動向、影響の出やすい製品・業界、立場別の具体的なアクションまでを順番に整理して解説します。
環境部門やサステナビリティ担当者の方はもちろん、企画・開発・調達・品質保証・マーケティング部門の方にとっても、「マイクロプラスチック 規制」の入門〜全体像把握のガイドとしてご活用いただけます。
1. マイクロプラスチックとは?基本のキホン
1-1. マイクロプラスチックの定義
一般的にマイクロプラスチックとは、
- 5mm以下の微小なプラスチック片・粒子
- 多くの場合、合成ポリマーで作られた粒子
を指します。
性質としては、
- 水に溶けにくい(不溶性)
- 自然環境中で分解されにくい(難分解性)
という特徴があり、一度環境中に出てしまうと長期間残り続けることが、世界的な課題となっています。
1-2. 一次マイクロプラスチックと二次マイクロプラスチック
マイクロプラスチックは発生の仕方によって、大きく一次と二次の2種類に分けられます。
① 一次マイクロプラスチック(primary microplastics)
最初から小さな粒子として製造されるタイプで、「意図的に添加されたマイクロプラスチック」とも呼ばれます。
- 洗顔料や歯磨き粉の「スクラブ(マイクロビーズ)」
- 化粧品のラメ・グリッター
- 肥料や農薬のコーティング用マイクロカプセル
- 工業用途の研磨材や樹脂ペレットなど
② 二次マイクロプラスチック(secondary microplastics)
もともと大きかったプラスチック製品が、紫外線・波・摩耗などによって細かく砕けて発生するタイプです。
- ペットボトルやレジ袋の破片が細かく砕けたもの
- 漁網・ロープ、発泡スチロール箱のかけら
- タイヤの摩耗粉や合成繊維の抜け毛 など
現在、各国の「マイクロプラスチック規制」の中心となっているのは一次マイクロプラスチックですが、 二次マイクロプラスチックを減らすための政策(タイヤ摩耗削減、洗濯機フィルター義務化など)も並行して議論が進んでいます。
2. なぜ「マイクロプラスチック規制」が必要なのか?
マイクロプラスチックが世界的な規制の対象になっている背景には、主に次の3つの理由があります。
-
海洋汚染・生態系への影響
海や川に流れ出た微小なプラスチックは、魚や貝、海鳥、プランクトンなど、さまざまな生物に取り込まれます。 物理的なダメージだけでなく、プラスチック表面に吸着した有害化学物質が食物連鎖を通じて拡散することも懸念されています。 -
人への影響の懸念
水産物や飲料水、さらには空気中の微小粒子などを通じて、人間の体内にもマイクロプラスチックが取り込まれていることが報告されています。 具体的な健康影響はまだ研究途上ですが、長期的なリスク要因として国際機関も注目しています。 -
いったん出てしまうと回収がほぼ不可能
5mm以下の粒子を海や河川から完全に回収することは事実上不可能です。 そのため、「出てしまったものを回収する」のではなく、そもそも環境中に放出しないようにする、という 「予防的な発想」がマイクロプラスチック規制の基本方針になっています。
こうした背景から、各国は「マイクロプラスチック規制」×「プラスチック全体の資源循環」をセットで進めるようになってきています。
3. 世界で進むマイクロプラスチック規制の流れ
3-1. 欧米を中心に先行した「マイクロビーズ規制」
世界的には、まず「洗い流す化粧品などに含まれるマイクロビーズの禁止」からマイクロプラスチック規制がスタートしました。
-
アメリカ合衆国
2015年「Microbead-Free Waters Act」が成立し、2017年以降、洗顔料・ボディソープなどの リンスオフ化粧品へのマイクロビーズ添加が全面禁止となりました。 -
カナダ・イギリス・フランスなど
洗い流し化粧品におけるマイクロビーズの使用を禁止。 国によっては、洗剤や家庭用製品に対象を広げる動きもみられます。 -
G7・G20各国
海洋プラスチックごみ・マイクロプラスチック対策を共同課題として位置づけ、各国で禁止・自主規制・削減目標などが進められています。
こうした流れをさらに包括的な「マイクロプラスチック規制」へと発展させたのがEUです。
3-2. EUの包括的なマイクロプラスチック規制(REACH改正)
EUはREACH規則の附属書XVIIを改正し、Regulation (EU) 2023/2055として 「意図的に添加されたマイクロプラスチックの制限(マイクロプラスチック規則)」を採択しました。
この規則は、化粧品だけでなく、肥料・農薬・洗剤・工業製品などに含まれるマイクロプラスチックを用途ごとに段階的に禁止・制限していく、世界的にも例のない包括的な枠組みです。
4. EUマイクロプラスチック規則(2023/2055)のポイント
「マイクロプラスチック 規制」で検索する多くの方が知りたいのが、このEUのマイクロプラスチック規則の概要です。 ここでは、詳細な法解釈ではなく、全体像をつかむためのポイントに絞って解説します。
4-1. 何が「マイクロプラスチック」とみなされるのか
EU規則では、マイクロプラスチックはおおむね次のように定義されています。
- 合成ポリマーでできた粒子であること
- 大きさがおおよそ5mm以下(下限は設定なし)
- 水に溶けにくく(不溶)、自然環境中で分解されにくい(難分解性)
- 製品または混合物に意図的に添加されていること
ここで重要なのは、
- 「意図的に添加された粒子」がマイクロプラスチック規制の対象であること
- 成形品の使用中に摩耗などで生じる「二次マイクロプラスチック」は、この規則では直接の制限対象ではないこと(別枠で議論)
という点です。
4-2. どんな製品・用途が対象になるのか
EUが想定している主な対象製品・用途は、たとえば次の通りです。
- 化粧品:スクラブ入り洗顔料、ボディソープ、メイクアップ製品、グリッターなど
- 洗剤・柔軟剤・ワックス・家庭用クリーナー
- 肥料・農薬・種子コーティング材
- 建設用材料・塗料・シーラントに含まれる機能性ポリマー粒子
- 工業用研磨材・ブラストメディア など
これらのうち、「使用中にマイクロプラスチックが環境中へ放出される可能性が高い用途」ほど、禁止や制限の優先度が高く設定されています。
4-3. 禁止・経過措置・報告義務の3パターン
EUマイクロプラスチック規則では、すべてを一律に「即時禁止」とするのではなく、用途ごとに
- 即時禁止(ラメだけのグリッターなど)
- 数年〜十数年の経過措置を設けた上での禁止・制限
- 使用継続は認めつつ、ECHAへの年次報告義務やラベリング義務を課す
といったパターンに分かれています。
そのため、EU向けに製品を供給している企業は、
- 自社製品のどれがマイクロプラスチック規制の対象」になるのか
- それぞれが禁止・経過措置・例外(報告義務付き)のどれに該当するのか
を整理し、サプライチェーン全体と連携して対応計画を立てる必要があります。
5. 日本におけるマイクロプラスチック規制・対策
5-1. 日本の法制度:現状は「自主的削減+資源循環」の方向性
日本には、現時点でEUのような包括的な「マイクロプラスチック禁止法」は存在していません。 その代わりに、次のような枠組みで対策が進められています。
-
海岸漂着物処理推進法の改正(2018年)
海洋プラスチックごみ対策の一環として、マイクロプラスチックを含む製品について 事業者による使用削減の努力を求める方針が示されました。 -
化粧品業界団体によるマイクロビーズの自主的な使用中止
日本化粧品工業連合会などがスクラブ用プラスチックビーズの使用自粛を進め、多くの製品が代替素材へ移行しています。 -
プラスチック資源循環促進法(2022年施行)
マイクロプラスチックに限定せず、プラスチック製品全体について 設計段階からの3R(リデュース・リユース・リサイクル)+リニューアブルを促進する法律です。
このように日本は、「マイクロプラスチック 規制」を単独で設けるというより、プラスチック全体の資源循環政策の中で位置づけているのが特徴です。
5-2. 海外のマイクロプラスチック規制が日本企業にも影響するケース
一方で、日本企業であっても次のような場合はEUなど海外のマイクロプラスチック規制の直接的な影響を受けます。
- EU向けに化粧品・洗剤・肥料・農薬・工業製品を輸出している
- 海外ブランドのOEM・ODMを日本国内で行っている
- グローバルサプライチェーンの一部として部材・原料を供給している
このようなケースでは、日本国内法がどうであれ、取引先が要求する基準(REACH Annex XVIIなど)を満たさなければビジネスが継続できません。
そのため、「日本の法規制」+「主要輸出先のマイクロプラスチック規制」の両方をセットで把握することが、これからの企業には求められます。
6. どんな製品・業界がマイクロプラスチック規制の影響を受けるのか?
「マイクロプラスチック 規制」と聞くと、化粧品のイメージが強いかもしれませんが、実際にはBtoC・BtoBの両方で影響が出る可能性があります。
6-1. BtoC製品(一般消費者向け)
- 洗顔料・ボディソープ・歯磨き粉などのスクラブ入り化粧品
- メイクアップ製品(アイシャドウ、ネイル、ラメ入り化粧品)
- 洗剤・柔軟剤・ワックス・家庭用クリーナー
- シャンプー・トリートメント・ヘアスタイリング剤 など
これらは、使用後に排水と一緒に直接環境へ流出しやすいため、マイクロプラスチック規制の優先度が高い分野とされています。
6-2. BtoB・産業用途
- 肥料・農薬・種子コーティングに使われるポリマーコーティング材
- 工業用研磨材・ブラストメディア(微細プラスチック粒子など)
- 塗料・接着剤・シーラントに含まれる機能性ポリマー粒子
- 樹脂コンパウンド・マスターバッチの中の特殊樹脂粒子 など
これらは一般消費者からは見えにくいものの、EUマイクロプラスチック規則では重要な対象とされています。 サプライチェーンのどこでマイクロプラスチックを意図的に使っているかを棚卸しし、長期的な代替計画を立てることが重要です。
6-3. 二次マイクロプラスチック関連分野
- 自動車用タイヤの摩耗粉
- 合成繊維衣料の洗濯時に出る繊維片
- 漁網・ロープ・梱包材などの破片
これらはEUマイクロプラスチック規則の直接対象ではないものの、
- 製品のエコデザイン要件(摩耗低減、長寿命化)
- 洗濯機へのマイクロプラスチックフィルター義務化
- 廃棄物管理・リサイクルシステムの強化
といった別の政策枠組み(循環経済・ゼロポリューションなど)で対策が検討されています。
7. 企業・自治体・個人が今できること
「マイクロプラスチック規制が進んでいるのは分かったけれど、結局自分たちは何をすればいいのか?」という疑問に答えるため、 ここでは立場別のアクションを整理します。
7-1. 企業(メーカー・小売)ができること
-
① 自社製品・原材料の棚卸し
マイクロビーズやポリマー粒子など、マイクロプラスチックを「意図的に添加している」製品がないか洗い出します。 原材料メーカーから、マイクロプラスチック含有の有無やEUマイクロプラスチック規則への対応状況に関する情報を取得することが重要です。 -
② 海外規制(特にEU)の適用可否を確認
EU向けに製品を出荷している場合は、REACH Annex XVII Entry 78(マイクロプラスチック制限)の対象かどうかを確認し、 必要に応じて代替材料の検討やラベリング・報告体制の構築を進めます。 -
③ 「出さない」設計への転換
プラスチック資源循環促進法が求める「設計段階での3R+リニューアブル」と組み合わせて、- 微細なプラスチック粒子を使わない工法への切り替え
- 摩耗・劣化で微細化しにくい素材・構造の採用
7-2. 自治体・学校・団体ができること
- 海岸清掃・河川清掃などの活動を通じた市民への啓発
- 地域の海洋ごみ・マイクロプラスチックの実態調査
- レジ袋削減やリフィル(詰め替え)利用促進など、プラスチックごみ削減キャンペーンとの連携
とくに子ども向けの環境教育とセットにすることで、次世代の行動変容にもつながっていきます。
7-3. 個人が今日からできる小さな一歩
- マイクロビーズを含む化粧品・洗浄剤を避ける(メーカーの情報や成分表示を確認)
- 合成繊維衣料をまとめ洗いし、洗濯ネットやフィルターなどを活用する
- ペットボトルや使い捨てカトラリーなど、使い捨てプラスチックの利用を減らす
- ごみのポイ捨てをしない・分別を徹底する
小さな行動の積み重ねが、マイクロプラスチック問題の「これ以上悪化させない」ことにつながります。
8. まとめ:マイクロプラスチック規制を「脅威」ではなく「転換のきっかけ」に
最後に、本記事で扱ったマイクロプラスチック規制のポイントを整理します。
- マイクロプラスチックとは、5mm以下の微小なプラスチック粒子で、一次・二次に分類されます。
- 海洋汚染や生態系・人への影響の懸念、回収の困難さから、「そもそも環境に放出しない」方向で各国の規制が進んでいます。
- 欧米ではマイクロビーズ禁止が先行し、EUはREACH改正(Regulation (EU) 2023/2055)により、意図的に添加されたマイクロプラスチックを段階的に禁止・制限する包括的な枠組みをスタートさせました。
- 日本では、法的な全面禁止はまだですが、自主的削減+プラスチック資源循環促進法などを通じて対策が進んでいます。
- 企業・自治体・個人がそれぞれの立場でできることを積み重ねることで、マイクロプラスチック問題の緩和につながります。
マイクロプラスチック規制は、企業から見ると「新たな制約」にも見えますが、視点を変えれば、
- 製品設計の見直しを通じた競争力の強化
- サステナビリティを訴求することによるブランド価値の向上
- 厳しい規制にも対応できるグローバル市場での信頼獲得
につながる「転換のきっかけ」でもあります。
まずは、自社や身の回りでどこにマイクロプラスチックが使われているのかを知ること。 それが、マイクロプラスチック規制への第一歩であり、より持続可能な社会への第一歩でもあります。
9. マイクロプラスチック規制に関するよくある質問(FAQ)
Q1. マイクロプラスチック規制は、いつから本格的に始まりますか?
EUのマイクロプラスチック規則は2023年10月に発効しており、用途ごとに設定された経過期間を経て、順次禁止・制限・報告義務が適用されていきます。 一部の用途はすでに規制が始まっており、今後10年程度のスパンで段階的に強化されていくイメージです。
Q2. 日本国内向けの製品でも、マイクロプラスチック規制への対応は必要ですか?
法律上の義務という意味では、現時点でEUのような包括的なマイクロプラスチック禁止法は日本にはありません。 ただし、
- 海外向けやグローバルブランドのOEMを行っている場合
- サステナビリティ方針や環境報告書で「マイクロプラスチック対策」を掲げている企業
では、実質的にEUなどの基準に合わせた対応が求められるケースが増えています。
Q3. どこから手をつければよいか迷っています。最初の一歩は?
多くの企業にとっての第一歩は、「情報整理」と「棚卸し」です。
- 自社製品・原材料のどこに、意図的なマイクロプラスチックが使われているかを洗い出す
- 主要な輸出先や取引先のマイクロプラスチック規制・要求事項を一覧化する
これらを整理することで、「どこから優先的に対応すべきか」が見えやすくなります。
10.まとめ
マイクロプラスチック規制は、「環境のために仕方なく対応する負担」ではなく、 自社の技術力・調達力・ガバナンスを見直すきっかけにもなります。
どの製品から優先的に着手するか、どの規制をどこまでウォッチすべきかを整理すれば、 中長期の事業戦略やサステナビリティ戦略とも矛盾しないかたちで対応を進めることができます。
「何から手を付ければよいか分からない」「社内のどの部署が主担当になるべきか悩んでいる」 という段階でも問題ありません。
まずは現状を棚卸しし、 自社にとってのリスクと機会を可視化することが、最初の一歩です。
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