ものづくりプレス

2025-11-29

脱炭素・省エネ要求はゴム部品にも影響する?軽量化・長寿命化に効く設計のヒント(前編)

「脱炭素を意識した設計にしてください」「省エネ機種へのモデルチェンジを検討してください」。
そんな経営・企画サイドからの要請が増える一方で、設計現場ではこんな声も聞かれます。


「ゴム部品で、いったいどこまで脱炭素や省エネに貢献できるのかイメージしづらい」
「軽量化、長寿命化と言われても、何から手をつければいいのか分からない」
「既存機種を大きく変えずに、部品レベルで改善できる余地を知りたい」

ChatGPT Image 2025年11月28日 21_31_37

なぜ「脱炭素」と「省エネ」がゴム部品のテーマになるのか

CO₂削減目標が「部品レベル」に落ちてきている

多くの製造業では、カーボンニュートラルやスコープ3の観点から、
製品ライフサイクル全体でのCO₂排出量が問われる時代になっています。


使用材料の選定
製造プロセスの見直し
物流・保守・廃棄までを含めたトータルのCO₂


こうした視点で見ていくと、ゴム部品のような小さな部品でも、
「点数の多さ」「交換頻度の高さ」によって、意外とインパクトがあることが分かります。
その結果、経営や企画からの
「軽量化や省エネに効く設計をしてほしい」
「長寿命化でライフサイクルCO₂を下げたい」
という要請が、設計部門に直接降りてきているのです。

ゴム部品がエネルギー消費に効いてくる3つの理由

ゴム部品は、次のような形でエネルギー消費やCO₂排出量に影響します。
・重量
ゴム部品の重量は、そのまま製品全体の重量に反映されます。
搭載する機器が軽くなれば、駆動モーターやポンプの負荷が下がり、省エネにつながります。
・摩擦・シール抵抗
シール部の接触圧が高すぎたり、摩擦力が大きすぎたりすると、その分だけ余計な駆動力が必要になります。
ポンプやモーターの電力消費、発熱、騒音などにも影響します。
・寿命・交換頻度
寿命が短い部品は、製造・配送・交換作業・廃棄を繰り返すことになり、そのたびにCO₂が発生します。


**1回あたりのCO₂より「10年で何回交換するか」**が重要です。
この3つを意識して設計を見直すだけでも、脱炭素・省エネへの貢献余地は大きく変わります。

「長寿命化=CO₂削減」という視点を持つ

脱炭素というと、“軽量化”ばかりに目が行きがちですが、
長寿命化も同じくらい重要なテーマです。


交換頻度が半分になれば、
→ 部品製造・物流・交換作業・廃棄に伴うCO₂も大きく減らせる
保守回数が減れば、
→ ユーザー側の工数・停止時間も減り、トータルのコスト削減にもつながる


つまり、「長くもつゴム部品を設計すること」自体が脱炭素の取り組みと言えます。

脱炭素・省エネの観点で見直したいゴム部品の3つのポイント

ここからは、ゴム部品設計を見直す際に押さえておきたい 「軽量化」「省エネ」「長寿命化」の3つの観点を整理します。

ポイント① 重量(軽量化の余地はないか)

まず検討しやすいのが軽量化です。


金属と一体になった防振部品
過剰な肉厚を持つ緩衝部品
オーバースペック気味に設計されている大型シール


など、長年の設計の積み重ねの中で、「安全側」に寄せ続けた結果、
本来必要な強度や耐久性以上に重くなっているケースもあります。


金属部の一部を樹脂やゴムに置き換える
固体ゴムを発泡ゴムに切り替える
肉厚の一部を中空構造にする
といった工夫で、重量を削りつつ性能を維持できれば、
その分だけ駆動エネルギーや輸送負荷を減らすことができます。


ポイント② 摩擦・駆動損失(シール抵抗を下げられないか)

シール性を確保しようとして、
高すぎる接触圧
過度に大きな接触幅
必要以上に高い硬度
を選んでしまうと、シール抵抗が増え、駆動損失につながります。


具体的には、
ポンプやアクチュエータの駆動トルクが上がる
起動時・低速時の抵抗が大きくなり、省エネ性を損なう
といった影響が出ます。


「とにかく漏れないように、強く押し付けておけば安心」という発想から一歩進み、
「必要十分なシール性+最小限の抵抗」
を狙う設計に切り替えることが、省エネ設計の第一歩になります。

ポイント③ 寿命と交換頻度(長寿命化できないか)

長寿命化に効いてくる要素としては、例えば次のようなものがあります。
圧縮永久ひずみ(押し潰したまま戻らなくなる度合い)
熱・薬品・オゾン・紫外線などによる劣化
繰り返し荷重・振動による疲労


寿命を伸ばすためには、
材質(ゴムの種類)の見直し
硬度や形状、溝寸法の見直し
使用温度・圧力・薬品条件に合わせた安全率の見直し
など、いくつかのアプローチが考えられます。


特に、圧縮永久ひずみとシール力の関係を理解して設計に反映できると、
「初期性能だけでなく、寿命末期までの安定性」を狙った設計がしやすくなります。

軽量化に効くゴム部品設計のヒント

ここからは、より具体的な設計の考え方に踏み込んでいきます。

金属部品からゴム・樹脂への置き換えを検討する

防振・緩衝・シールといった用途では、
「金属+ゴム」の構造が慣習的に使われているケースも多くあります。


しかし、機能を丁寧に分解してみると、
全面が金属である必然性があるのか
一部を樹脂化したり、ゴム厚を最適化したりできないか
ゴムと樹脂の複合部品にすることで、軽量化+部品点数削減が狙えないか
といった検討余地が見えてくることがあります。


単体のゴム部品ではなく、「ゴム+樹脂+金属」の組み合わせで設計を見直すと、
構造の簡素化や軽量化のチャンスが見つかりやすくなります。

発泡ゴム・中空形状の活用で“必要十分な強さ”を確保する

固体ゴムは取り扱いやすく、設計もしやすいため、
「とりあえずソリッドで」という選択をしがちです。


しかし、
荷重条件
必要な変位量
安全率
を整理していくと、
発泡ゴムに切り替えても十分な性能が出せる
中空構造やリブ構造にすることで、重量を抑えつつ必要な剛性を確保できる
といった可能性が見えてくることも少なくありません。


「ソリッド(無垢)が当たり前」という前提を一度外し、
“必要十分な強さ”とは何かを改めて定義してみることが、軽量化の近道になります。

設計マージンの見直しで無駄な肉厚を削る

長年同じ製品を設計・改良し続けていると、
安全側にマージンを積み重ねた結果、いつのまにか
「実はここまで厚くなくてもよい」
「昔の条件を前提にしたマージンが、そのまま残っている」
といった部分が増えていきます。


そこで、
現状の荷重・使用環境を改めて整理する
現行設計にどの程度の安全率が乗っているかを確認する
実験やシミュレーションを通じて「最適肉厚」を探る
といったプロセスを踏むことで、
過度な肉厚を削りつつ、性能・信頼性を担保することが可能になります。

省エネ・長寿命に効くゴム部品の設計ポイント

圧縮永久ひずみを意識した材質・硬度選定

高温・連続圧縮環境で使われるゴム部品では、
圧縮永久ひずみが寿命のボトルネックになるケースが多くあります。
温度が高い
圧縮率が大きい
圧縮時間が長い
といった条件が重なるほど、
「初期の厚み」に戻ろうとする力が弱くなり、最終的にはシール力不足につながります。


そのため、
材質ごとの圧縮永久ひずみ特性
硬度によるひずみ量の違い
圧縮率と寿命の関係
を踏まえた上で材質・硬度を選定することが、長寿命化設計の基本になります。


シール抵抗と省エネのトレードオフをどう設計するか

シール性を高めるために接触圧を上げすぎると、
その分だけ摩擦力も増え、駆動トルクが上がります。
ゴム硬度
リップ形状
接触幅
グリースや表面処理
といった要素を組み合わせることで、
「漏れないようにする」
だけでなく
「なるべく軽く回る/動くようにする」
という、シールと省エネのバランスを取ることができます。


このバランス設計は、カタログスペックだけでは見えにくく、
実際には試作・実機評価とセットで検討するテーマになります。

使用環境に合わせた「オーバースペック/アンダースペック」の見極め

材質選定では、しばしば
「とりあえず高性能な材質を選んでおく」
「従来から使っている材質をそのまま使う」
という判断が行われます。


しかし、実際の現場条件と突き合わせてみると、
温度・薬品・圧力に対して明らかにオーバースペックな材質を使っている
逆に、実使用環境が当初想定より厳しく、早期劣化を招いている
といったギャップが見つかることも珍しくありません。


このギャップを解消することで、
適切な材質への切り替えによるコスト・CO₂の削減
寿命のばらつきの低減による安定供給・品質安定
といった効果が期待できます。

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