ものづくりプレス

2026-09-17

フッ素ゴムとシリコンの比較|4条件で決める使い分けと落とし穴

「フッ素ゴムにしますか、シリコンにしますか」。材質を聞かれて、どちらも高温に強いと聞いた覚えはあるが、違いを説明できない。図面には材質名しか書かれていない。そんな場面から、この記事は始めます。

フッ素ゴム(FKM)とシリコーンゴム(VMQ)は得意分野が重なる部分と、はっきり分かれる部分があります。当社が公開している特性を出発点に、4つの使用条件からどちらへ寄せるかを決める順番と、材質名だけで決めたときに起こる落とし穴を整理しました。

作成者 中村(富士ゴム化成株式会社) 会社情報

作成日 2026年9月17日 最終更新日 2026年9月17日 本記事は2026年9月時点の情報です 読了時間 約8分

フッ素ゴムとシリコンは、何が違いますか?

どちらも耐熱性と耐オゾン性に優れる点は共通です。分かれるのは、油と薬品への強さと、低温での振る舞いです。この2点をどちらが受け持つかで、選ぶ材質はほぼ決まります。

フッ素ゴムとシリコーンゴムについて、当社公開の特性を得意と不得意に分けて並べた対比図 図1 フッ素ゴム(FKM)とシリコーンゴム(VMQ)の得意・不得意 フッ素ゴム(FKM) シリコーンゴム(VMQ) 耐熱性・耐油性に優れる 耐薬品性・耐オゾン性に優れる 耐寒性が低い 有機酸・ケトン・エステル・ アミン系には耐性がない 耐熱性・耐オゾン性に優れる 耐寒性に優れる 生理不活性 油・薬品への強さは 用途ごとに個別確認 共通する強みは耐熱と耐オゾン。分かれるのは油・薬品と低温です。 当社公開の主要合成ゴムの特性(2026年9月確認)にもとづく。

共通点が多いからこそ、違いを先に見る

両方とも高温に置かれる部品で名前が挙がるため、「どちらでもよい」と受け取られがちです。しかし油や薬品に触れる用途でシリコーンゴムを選ぶと、当社の公開情報では耐性の裏づけがありません。逆に低温で使う部品にフッ素ゴムを選ぶと、耐寒性が低いという弱点に当たります。先に違いが出る条件を確かめることが近道です。

「耐性がない」と書かれている薬品を見落とさない

フッ素ゴムは耐薬品性に優れると紹介される一方で、当社の公開情報では有機酸・ケトン・エステル・アミン系には耐性がないとしています。耐薬品性という言葉だけで選ぶと、この例外に気づけません。接触する薬品の種類を書き出し、この4系統に当たるものがないかを見る作業が最初の関門になります。

出典:富士ゴム化成「ゴム・プラスチックとは」掲載の主要合成ゴムの特性(自社情報・2026年9月確認)。

どの条件を先に確かめますか?

温度、接触するもの、圧力、使用時間の4つです。フッ素ゴムとシリコーンゴムの比較では、このうち温度の下限と接触するものが分かれ目になります。残りの2つは、選んだ材質の使い方を決めるときに効いてきます。

条件 書き出すこと この比較で効く点
温度常用と最高・最低最低温度が低いなら耐寒性の差が出る
接触するもの油・薬品・水・食品油と薬品ならフッ素ゴム側、ただし4系統は例外
圧力かかる範囲と方向材質を決めたあと、硬さと形状で受ける
使用時間連続か断続か、年数短時間なら耐える条件も連続では持たない

最低温度は「運転中」だけでなく「停止中」も見る

屋外に置かれる設備や、夜間に止まる設備では、運転中より停止中のほうが低温になります。耐寒性が低いフッ素ゴムを選んだ部品が、始動時に硬くなって密封を失うという形で現れます。1日と1年を通して、部品がもっとも冷える場面の温度を条件に入れてください。

接触するものは、洗浄工程まで含める

運転中に触れるものだけを見て選ぶと、洗浄剤で膨潤するといった見落としが起こります。洗浄や殺菌に使う薬品が有機酸やケトンに当たる場合、フッ素ゴムは公開情報の上で耐性がありません。製造ラインの部品では、製品そのものより洗浄剤のほうが厳しい条件になることがあります。

低温と薬品では、どちらを選びますか?

低温だけならシリコーンゴム、油と薬品だけならフッ素ゴムが候補になります。両方が同時に要る場合は、1つの材質で満たせないことがあります。その場合は優先順位を決めるか、使い方のほうを変えられないかを検討します。

接触するものと最低温度を確かめてから材質を決め、条件が競合すれば使い方を見直すという4段階の図 図2 2つの材質へ寄せる判断の順番 STEP 1 接触するものを書く 油・薬品の種類 洗浄剤も含める STEP 2 最低温度を書く 運転中と停止中 屋外なら冬季 STEP 3 材質へ寄せる 油・薬品ならFKM 低温ならVMQ STEP 4 競合なら見直す 優先順位を決める 使い方を変える 最初の2つがそろっていれば、3つ目はほとんど迷いません。

条件が競合したら、いちばん厳しい場面を優先する

低温で始動し、運転中は油に触れる。こうした部品では、どちらの条件も外せません。そのときは、部品が壊れたときの影響が大きい側を優先します。始動時に一瞬硬くなるだけで済むのか、油で膨潤して密封を失うのか。影響の大きさは設備ごとに違うため、使われ方をうかがってから一緒に決めています。

材質を変えずに、使い方を変える道もある

低温にさらされる時間を短くする、洗浄剤の種類を変える、部品の置き場所を変える。材質の側でなく条件の側を動かせる場合は、そのほうが手戻りが少ないことがあります。設計の初期段階でご相談いただければ、この選択肢も含めて検討できます。

過去の不具合は、次の選定の材料になる

前の部品がどう傷んだかが分かれば、どの条件が厳しかったかが見えます。硬くなって割れたのなら低温か熱、膨らんで抜けたのなら油か薬品が疑われます。当社では現物調査の段階で、寸法と硬度に加えてこうした状態も確認します。

出典:富士ゴム化成「廃盤部品の再現」ページ掲載の再現フロー(現物調査・材料分析)(自社情報・2026年9月確認)。

見積りの前に、何を決めておきますか?

材質の候補、使用条件、数量の3つです。材質名だけで見積りを取ると、各社が異なる配合を前提に金額を出すため、並べても比較になりません。条件をそろえて出すことが、相見積もりを意味のあるものにします。

なお、ゴムは同じ材質名でも配合によって成形のしやすさが変わり、材質によって収縮率も異なるため、公差の考え方は品物ごとに決めていく必要があります。当社は用途に合う材料を選ぶ立場で関わり、材料の配合そのものは材料メーカーの領域です。そのため材質名のご指定だけでなく、使用条件(温度・接触するもの・圧力・使用時間)もあわせてうかがっています。

同じ「フッ素ゴム」でも、配合は1つではない

材質名は分類の名前であって、1つの材料を指してはいません。ゴムには配合によって多種多様な特性があり、同じ材質名でも成形のしやすさが変わります。見積り依頼に材質名だけを書くと、各社がそれぞれの配合で見積りを出すため、金額の差が材料の差なのか配合の差なのか分からなくなります。

金型成形の部品は、公差の書き方も先に決める

フッ素ゴムからシリコーンゴムへ、あるいはその逆へ材質を切り替えると、収縮率が変わります。同じ金型を使っても仕上がりの寸法が変わるため、公差は品物ごとに決めていく必要があります。機能に効く部位だけを厳しくし、それ以外は緩める考え方については、ゴム部品の図面公差の考え方で整理しています。

材質名だけの指定と、使用条件4つがそろった指定とで、材質比較の精度が変わることを示す図 図3 条件の解像度が、比較の精度を決める 材質名だけ 4条件がそろう 条件が細かいほど、2つの材質のどちらへ寄せるかがはっきりする。 4条件は温度・接触するもの・圧力・使用時間です。数値でなくても、使われ方が分かれば絞り込めます。

相見積もりは、条件をそろえてから

当社は相見積もりを歓迎しています。条件がそろっていない見積りを金額だけで並べても比較になりませんので、材質の候補・使用条件・数量を同じ内容で各社に出すことをおすすめします。見積りがぶれる理由はゴム・樹脂部品の見積がブレる本当の理由にまとめています。

出典:富士ゴム化成「お問い合わせ」ページ(相見積もり歓迎・見積り時に必要な4点)(自社情報・2026年9月確認)。

自社の使い分けは、どこで迷っていますか?

当てはまる項目が多いほど、材質を決める前に条件の整理から始めたほうがよい状態です。下のチェックは診断ではなく、比較に必要な情報がそろっているかを確かめるための整理です。個人情報の入力はありません。

フッ素ゴムとシリコンの使い分けチェック(6項目)

当てはまるものにチェックを入れてください。

当てはまる数を数えて、下の早見表をご覧ください。

当てはまった数でみる読み取り方
当てはまる数読み取り方
0〜1個条件が整理されています。候補の絞り込みに進めます。
2〜3個条件に抜けがあります。最低温度と接触するものから埋めてください。
4〜6個条件の整理から始める段階です。1日と1年を通した環境を書き出すことをおすすめします。

フッ素ゴムとシリコンの比較について、よくいただくご質問は?

上下関係、苦手な薬品、低温での選び方、材質名だけの見積り、サンプル確認についてのご質問が多く寄せられます。実際にいただくことの多い5つをまとめました。個別の条件については、使われ方をうかがったうえでお答えしています。

フッ素ゴムとシリコンは、どちらが上位の材料ですか?
上下ではなく得意分野が違います。フッ素ゴムは耐熱・耐油・耐薬品・耐オゾンに優れる一方で耐寒性が低く、シリコーンゴムは耐熱・耐オゾン・耐寒に優れます。使用条件に合うほうが、その用途では上位です。

フッ素ゴムが苦手な薬品はありますか?
あります。当社の公開情報では、有機酸・ケトン・エステル・アミン系に耐性がないとしています。洗浄工程で触れる薬品まで含めて、接触するものを書き出してからご相談ください。

低温で使うなら、シリコンで決まりですか?
耐寒性だけを見ればシリコーンゴムが候補になりますが、同時に油や薬品に触れる場合は条件が競合します。どちらを優先するか、使い方を変えられないかを一緒に検討します。

材質名だけを指定して見積りを取ってもよいですか?
見積りは可能ですが、比較しにくくなります。同じ材質名でも配合によって成形のしやすさが変わり、材質によって収縮率も異なるため、使用条件と数量をそろえて各社に出すことをおすすめします。

サンプルで確認してから決められますか?
当社では量産に移る前に試作で評価する段階を置いています。現物調査では寸法と硬度に加え、前の部品がどう傷んだかも確認できますので、材質を切り替える判断の材料になります。

相談するとき、何をそろえればよいですか?

使用条件、形状が分かるものか現品、必要数量の3つがあれば話を始められます。すべてが決まっていない状態でも構いません。決まっていない項目は、決まっている条件から一緒に詰めていきます。

そろえるもの 内容 無い場合
図面寸法や形状が分かるもの現品があれば現品で代替できます
仕様・用途どこに使い、何を止めるか使用条件を口頭でうかがいます
数量今回必要な数と年間見込み概算でかまいません
材料・材質ご希望の材質があれば使用条件から候補をご提案します

材質が2つの候補で迷っている段階でのご相談も承ります。条件をうかがったうえでどちらへ寄せるかをご提案し、そこから工法と公差を一緒に決めていく進め方がもっとも手戻りが少なくなります。Oリングの材質についてはOリング材質選定フローチャートも参考になります。

材料の選び方と寸法表を先に確認する

SF-JOINT総合カタログ・施工要領・Oリング寸法表などの資料をご用意しています。会社名とご連絡先のご入力でダウンロードいただけます。

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