ものづくりプレス

2026-09-16

長期保管の金型を調査する|棚卸しのときに確認する4項目

倉庫の奥に、いつのものか分からない金型が並んでいる。使う予定はないが、捨てるとその部品が二度と作れなくなる。

この記事では、長期保管している金型を調査するときに確認する4項目と、残すか手放すかを判断する考え方を整理します。判断を先延ばしにするほど、情報は失われていきます。

作成者 橋本(富士ゴム化成株式会社) 会社情報

作成日 2026年9月16日 最終更新日 2026年9月16日 本記事は2026年8月時点の情報です 読了時間 約8分

長期保管の金型を、なぜ今調査するのですか?

保管の見直しが進んでいるためです。当社にも2026年に入ってから、長期間使用していない金型の調査依頼が増えています。取引の適正化に関する動きを背景に、棚卸しする企業が増えているためと考えられます。

長期保管している金型を棚卸しし、残すか手放すかを判断するまでの手順を4段階で示す図 図1 金型の棚卸しを進める手順 STEP 1 現物を確認 どこに何があるか 数と状態 STEP 2 対応部品を特定 どの部品の型か 品番と図面 STEP 3 要否を判断 まだ使うか 在庫はどれだけか STEP 4 記録を残す 判断の理由も あわせて保存 判断そのものより、判断の理由を残すことが後で効いてきます。

金型が残っていれば、選択肢が残る

金型が保管されていれば、供給が止まっても同じ形で作れる可能性が残ります。逆に金型が失われると、現物から作り直すところからのやり直しになります。判断の前に、まず何がどこにあるかを確かめてください。

判断を先延ばしにすると、情報が失われる

どの部品の型か分かる人が退職する、図面の所在が分からなくなる、対応する設備そのものが更新される。時間が経つほど、金型と部品を結びつける情報は減っていきます。型そのものは残っていても、何の型か分からなければ使えません。

出典:当社が2026年8月時点で受けているご相談の傾向(自社集計)。件数は公表していないため、傾向としてのみ記載しています。

調査では、何を確認しますか?

所在、対応部品、状態、最終使用時期の4項目です。このうち対応部品が分からない金型は、判断そのものができません。

確認項目 見ること 分からない場合
所在どこに何型あるかまず現物を数えるところから
対応部品どの部品の型か刻印や現品との突き合わせで特定
状態錆・欠け・変形の有無外観で判断がつかなければ試作で確認
最終使用時期いつ最後に使ったか出荷記録や図面の日付から推定
所有関係自社の型か預かりか契約書や取り決めを確認

刻印と現品を突き合わせる

金型に品番の刻印が残っていれば、対応する部品を特定できます。刻印がない場合は、成形される形と手元の部品を突き合わせることになります。現品が残っていれば、この作業はかなり早くなります。型と部品をセットで保管しておくのが、本来もっとも確実な方法です。

状態は、試作してみるのが確実

外観に錆や欠けがなくても、実際に成形してみないと分からないことがあります。長期間動かしていない型では、寸法や仕上がりが以前と変わっている可能性もあります。判断がつかない場合は、試作を1個作って確かめる方法があります。当社は多品種少量生産を得意としており、1点からの試作のご相談も承っています。

自社の金型は、棚卸しの準備ができていますか?

当てはまる項目が多いほど、情報が失われつつある状態です。下のチェックは診断ではなく、棚卸しの優先度を確かめるための整理として使ってください。

金型棚卸しの準備チェック(6項目)

当てはまるものにチェックを入れてください。個人情報の入力はありません。

当てはまる数を数えて、下の早見表をご覧ください。

当てはまった数でみる読み取り方
当てはまる数読み取り方
0〜1個情報は保たれています。年に一度、一覧を更新しておけば十分です。
2〜3個情報が欠け始めています。対応部品の特定から着手してください。
4〜6個情報が失われつつある状態です。分かる人がいるうちに棚卸しすることをおすすめします。

残すか手放すかは、どう判断しますか?

その部品をまだ使うか、在庫がどれだけあるか、代替品で置き換えられるかの3点です。3つとも「いいえ」であれば、手放す判断がしやすくなります。

長期保管の金型を残す場合と手放す場合の条件を対比した図 図2 残す判断と、手放す判断 残す理由がある 手放しても影響が小さい 対応部品をまだ使う 在庫が薄い 代替品の当てがない 設備をあと長く使う 対応する設備が廃止済み 在庫が十分にある 市販品で置き換えられる 型の状態が使えない 判断そのものより、判断した理由を残しておくことが大切です。

手放す前に、寸法だけでも記録する

型を手放すと、その形状の情報も一緒に失われます。対応する部品の現品が1個も残っていない場合は、型から寸法を控えておくだけでも、後から作り直す手がかりになります。判断の記録とあわせて残しておいてください。写真を数枚撮っておくだけでも、後から見返すときの助けになります。

金型がなくても、現物から作り直せる

金型が失われていても、部品の現品があれば作り直しの検討はできます。当社では廃盤部品の再現として、現物調査・材料分析、設計・図面作成、試作・評価、量産・納品という段階で進めています。型がないことは、その部品を諦める理由にはなりません。

作り直す場合、何で決まりますか?

必要数と、その部品をあと何年使うかで決まります。数量が少なければ、金型を作らない方法で用意する選択肢があります。

必要数が少ない場合と多い場合で、金型を作るかどうかの判断が変わることを示す図 図3 必要数で変わる、金型を作るかどうか 少量 継続量産 少量なら金型を作らない方法から。継続して使うなら金型のほうが1個あたりを抑えられる。 分かれ目は形状と年間数量によって変わります。数量計画をうかがったうえでご提案します。

当社はゴム製品ではコンプレッション成形や焼付成形、樹脂製品ではインサート成形を得意としています。金型を作るほどの数量でない場合は、切削加工・3Dプリントで対応できる場合があります。工法ごとの費用の分かれ目は切削・射出成形・3Dプリントのコスト比較でも整理しています。

なお、ゴムは同じ材質名でも配合によって成形のしやすさが変わり、材質によって収縮率も異なるため、公差の考え方は品物ごとに決めていく必要があります。当社は用途に合う材料を選ぶ立場で関わり、材料の配合そのものは材料メーカーの領域です。そのため材質名のご指定だけでなく、使用条件(温度・接触するもの・圧力・使用時間)もあわせてうかがっています。

保管の場所と条件も、記録に残す

どこに置いてあるか、どんな環境で保管しているか。湿気の多い場所に長く置かれていれば、状態への影響も出ます。一覧を作るときに保管場所と環境も1列足しておくと、次に状態を確認するときの手がかりになります。型そのものより、型にまつわる情報のほうが失われやすい部分です。

部品側の在庫と、あわせて見る

金型があっても、対応する部品の在庫が十分にあれば急ぐ必要はありません。逆に在庫が薄い部品の型が見つからない場合は、優先して対応する必要があります。金型の一覧と、部品の在庫数を突き合わせて見ると、どこから手を付けるかが決まります。部品番号を共通の鍵にして両方の表を作っておくのが実務的です。在庫が薄く、型も見つからない部品が、最優先で手を打つ対象になります。

金型の調査について、よくいただくご質問は?

依頼の増加、状態の確認方法、金型がない場合の対応についてのご質問が多く寄せられます。実際にいただくことの多い5つをまとめました。

長期間使っていない金型の調査依頼は増えていますか?
当社では2026年に入ってから、長期間使用していない金型の調査依頼が増えています。取引の適正化に関する動きを背景に、保管している金型を棚卸しする企業が増えているためと考えられます。

金型が使える状態かどうか、どう確認しますか?
外観の状態と、最後に使った時期、保管の環境から見当をつけます。確実なのは実際に成形して確かめることで、試作を1個作ってみるという確認の仕方があります。

金型が見つからない場合はどうしますか?
現品があれば、図面がなくても現物から作り直す検討ができます。当社では現物調査から量産までを5つの段階に分けて進めています。

金型を作り直すべきか、部品を別の方法で作るべきか迷います。
必要数と、その部品をあと何年使うかで判断が変わります。数量が少なければ、金型を作らない方法で用意する選択肢があります。

保管している金型の要否を判断したいのですが。
対応する部品をまだ使うか、在庫がどれだけあるか、代替品で置き換えられるかの3点で整理すると判断しやすくなります。

相談するとき、何をそろえればよいですか?

対象の金型か、対応する部品の現品、使用条件、必要数量があれば話を始められます。すべてが決まっていない状態でも構いません。内容に応じてご提案します。

そろえるもの 内容 無い場合
図面寸法や形状が分かるもの現品があれば現品で代替できます
仕様・用途どこに使い、何を止めるか使用条件を口頭でうかがいます
数量今回必要な数と年間見込み概算でかまいません
材料・材質ご希望の材質があれば使用条件から候補をご提案します

なお、金型の所有関係や保管に関する取り決めは、当事者間の契約によって決まります。当社は製作と成形の立場からご相談に応じる形になります。

材料の選び方と寸法表を先に確認する

SF-JOINT総合カタログ・施工要領・Oリング寸法表などの資料をご用意しています。会社名とご連絡先のご入力でダウンロードいただけます。

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