ものづくりプレス
2026-03-03
ホルムズ海峡リスクで何が起きる?ナフサ不足がプラスチック・ゴム調達に give影響をわかりやすく解説
ホルムズ海峡リスクで何が起きる?ナフサ不足がプラスチック・ゴム調達に give影響をわかりやすく解説
中東情勢が緊迫すると、まず注目されるのは原油価格です。ですが、プラスチックやゴムに関わる製造業にとって本当に重要なのは、その先にあるナフサ供給です。ホルムズ海峡は世界の石油輸出の約3割規模が通過する重要ルートで、日本の原油輸入の約9割もこの海峡経由です。日本の石油化学用ナフサ調達元も、2024年時点で中東が44.6%を占めており、中東リスクは石油化学原料の供給に直結しやすい構造です。
直近でも、中東情勢の悪化とホルムズ海峡の混乱を受けて、ブレント原油は3月に記録的な上昇を見せ、石油化学品の供給不安からアジアのナフサやプラスチック価格にも上昇圧力がかかっています。ロイターは、ホルムズ海峡経由の石化供給が詰まり、プラスチック価格が大きく押し上げられていると報じています。
この記事では、ホルムズ海峡リスク → ナフサ不足 → 石化原料不足 → プラスチック・ゴム調達への影響という流れを、調達・購買・設計担当者向けに整理します。
なぜホルムズ海峡リスクがナフサ不足につながるのか
ナフサは、原油を精製して得られる石油製品の一つで、エチレンやプロピレンをつくる石油化学の基礎原料です。ここからポリエチレン、ポリプロピレン、各種合成ゴムなどが生産されるため、ナフサが不足すると、川上から川下まで広く影響が出ます。経済産業省も、ナフサを「原油から精製して作られる石油製品の一種で、エチレン等の基礎化学品に分解し、プラスチック製品等を生産する原料」と整理しています。
つまり流れはシンプルです。
ナフサ調達が逼迫 → 石化原料不足 → 樹脂・ゴム価格上昇
ここで重要なのは、「原油高」だけではなく、物流そのものが詰まることです。ロイターは、ホルムズ海峡の閉塞でアジアの精製・石化サプライチェーンが大きく揺さぶられ、原油だけでなくナフサや石油化学製品の供給にも影響が出ていると報じています。
ナフサが不足すると、どの原料から影響が出るのか
ナフサが不足すると、まず影響を受けやすいのがナフサクラッカー由来の基礎原料です。代表的なのは次の3つです。
- エチレン
- プロピレン
- ブタジエン
これらは、ポリエチレンやポリプロピレンなどの汎用樹脂、そして合成ゴムの重要原料です。特にブタジエンは合成ゴムに直結するため、タイヤ以外でも、各種工業用ゴム部品やシール材周辺のコストにじわじわ効いてきます。経産省の資料でも、ナフサからエチレン・プロピレン・トルエン等を経て、プラスチック、ゴム、電子部品、塗料などへつながる石化サプライチェーンが示されています。
このため、ホルムズ海峡リスクが高まると、単に燃料コストが上がるだけではなく、
- 汎用樹脂の値上げ
- ゴム原料の調達逼迫
- 成形品・押出品・ゴム部品の納期悪化
といった形で波及しやすくなります。ロイターは、日本のガス会社幹部が「イラン戦争の影響でナフサ供給が打撃を受ければ、プラスチックや樹脂の生産減を通じて影響が広がる」と警戒していると伝えています。
なぜ「原油高以上」にプラスチック・ゴム価格が上がることがあるのか
調達現場では、「原油が上がった以上に樹脂やゴムの値上がり幅が大きい」と感じることがあります。これは珍しいことではありません。理由は主に3つあります。
1. ナフサそのものの需給が締まるから
原油高に加えて、ホルムズ海峡経由のナフサや石化製品の流れが滞ると、ナフサの実需が逼迫しやすくなります。単なる原油連動ではなく、ナフサそのものの不足感が価格を押し上げます。
2. クラッカーや石化設備の稼働に影響が出るから
原料が入らなければ、ナフサクラッカーや石化設備は稼働を落とさざるを得ません。供給側が減れば、樹脂やゴム原料の市況はさらに上がりやすくなります。ロイターは、アジアの精製・石化各社が中東由来の供給混乱の影響を受けていると報じています。
3. 物流・在庫・為替が重なるから
日本の調達コストは、原料価格だけでなく、海上輸送費、保険料、為替の影響も受けます。ホルムズ海峡リスクが高い局面では、輸送や在庫の安全マージンを厚く取る必要が出るため、成形品や部品コストまで押し上がりやすくなります。
日本企業は、何を見ておくべきか
こうした局面で、調達担当が見るべきなのは「原油相場」だけではありません。最低でも次の4点は押さえておきたいところです。
まず、ホルムズ海峡の通航状況です。実際に通航船舶数がどの程度落ちているかは、供給不安の強さを測る材料になります。ウォール・ストリート・ジャーナルは、通常より大きく減った通航状況を伝えています。
次に、日本のナフサ調達構造です。経産省資料によれば、石油化学用ナフサの調達元は2024年時点で中東44.6%、国産39.4%、その他輸入16.0%です。つまり、原油ほどではないにせよ、ナフサも中東リスクの影響をかなり受けます。
さらに、石化製品の値上げ・供給状況も重要です。ナフサが詰まると、プラスチック・樹脂メーカーが先に減産や値上げを打ち出すことがあります。原料不足は、まず川上で起き、少し遅れて部品・成形品に波及するためです。
最後に、代替調達余地も見ておく必要があります。経産省は、川下在庫の活用に加え、中東以外からの輸入や国内精製によって安定供給を図る方針を示していますが、これは裏を返せば、各社がすでに代替調達の必要性を強く意識しているということです。
製造業はどう備えるべきか
ホルムズ海峡リスクに対して、自社で海峡をどうこうすることはできません。だからこそ、製造業側でできることは、ナフサ由来リスクを前提にした調達設計です。
まずやるべきは、自社で使っている材料・部品のうち、
- ナフサ由来の影響を受けやすい樹脂
- 合成ゴム原料比率が高い部品
- 値上げ・納期遅延が起きたら困る重要部品
次に、調達の優先順位づけです。全部を一気に見直すのではなく、
- 代替材があるもの
- サプライヤー分散が効くもの
- 先に在庫確保すべきもの
を分けておくと、情勢悪化時の初動が速くなります。
そして最後に重要なのが、設計・調達・生産技術が同じ情報を見て動くことです。ホルムズ海峡リスクは、単なるニュースではなく、原料と納期に直結する経営課題です。材料高騰を「仕入部門だけの話」にしないことが、これからますます大切になります。
まとめ
ホルムズ海峡リスクが高まると、まず原油が動きます。ですが、プラスチックやゴムに関わる製造業にとって本当に重要なのは、その先のナフサ不足です。日本の石油化学用ナフサは2024年時点で中東由来が44.6%を占めており、ホルムズ海峡の混乱はナフサ、石化原料、さらに樹脂・ゴム調達へと波及しやすい構造です。
つまり、ホルムズ海峡リスクとは、単なるエネルギーニュースではありません。
原油 → ナフサ → 石化原料 → プラスチック・ゴム → 部品・製品
という流れで、自社の調達や製造コストに直結する話です。
今後の中東情勢次第では、価格上昇だけでなく、納期や配分の問題も起こり得ます。だからこそ今のうちに、
- どの材料が影響を受けやすいか
- どの部品を優先的に守るべきか
- どこまで代替・分散が可能か
を整理しておくことが、調達の強さにつながります。
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