ものづくりプレス
2026-03-13
イラン情勢で石化原料はどう変わる?プラスチック価格高騰を製造業はどう見るべきか
イラン情勢で石化原料はどう変わる?プラスチック価格高騰を製造業はどう見るべきか
イラン情勢で石化原料はどう変わる?プラスチック価格高騰を製造業はどう見るべきか
最近のイラン情勢を受けて、原油や石油だけでなく、ナフサ、樹脂、プラスチック、ゴム原料まで含めた供給不安が強く意識され始めている。ロイターは2026年3月、イランを巡る戦争の影響でホルムズ海峡を通る石油化学品の流れが詰まり、プラスチックやポリマー価格が約4年ぶりの高値圏にあると報じた。
製造業にとって重要なのは、これを「海外のニュース」で終わらせないことだ。
なぜなら、日本の石油化学は原油 → ナフサ → エチレン・プロピレンなどの基礎化学品 → プラスチック・ゴムという流れの上に成り立っており、上流の揺れがそのまま部材調達や製品コストに波及しやすいからである。経産省の資料でも、ナフサは原油を精製して作られる石油製品であり、エチレン等を経てプラスチック製品等の生産につながると示されている。
なぜイラン情勢がプラスチック価格に直結するのか
今回の論点は、単純な「原油高」ではない。問題は、中東の物流と石化原料の供給網そのものが細ることにある。
ロイターによると、ホルムズ海峡は年間200億〜250億ドル相当の石油化学製品が通過する要所であり、混乱が続けば、世界の化学品供給はさらに締まる可能性がある。中東は2025年のポリエチレン輸出の4割超を占めており、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)などのプラスチック価格は、中東情勢の悪化以降大きく上昇している。
原油が上がる → ナフサが上がる → 樹脂やゴム原料が上がる → プラスチック部品やゴム部品の調達条件が悪化する
という流れが起きやすい。
原油→ナフサ→プラスチック・ゴムの流れを整理すると
製造業の実務に引きつけて言えば、供給連鎖は次のようになる。
↓ 精製
ナフサ
↓ 分解
エチレン/プロピレン/トルエン/その他基礎化学品
↓ 中間原料化
プラスチック/ゴム/電子部品材料/塗料 など
↓ 加工・成形
部品・製品
経産省の資料では、このサプライチェーンが図示されており、ナフサ調達元は中東44.6%、国産39.4%、その他輸入16.0%とされている。つまり、日本のものづくりはナフサを完全に国内で閉じて賄えているわけではなく、中東リスクの影響を受けやすい構造にある。
ナフサは今どのくらい影響を受けているのか
ロイターは、ホルムズ海峡の閉塞・混乱が起きた場合、世界のナフサ輸出のうち日量約120万バレルに影響し得ると伝えている。さらに、アジアのナフサ精製マージンは、戦争前の1トン当たり約108ドルから、戦争後は400ドル超へ上昇したと報じている。これは、アジアの石化産業がナフサへの依存度が高く、供給不安が価格に直結しやすいことを示している。
同じ記事では、アジアはナフサを主要原料とするため特に脆弱であり、日本、韓国、インドなどが原油や石化原料の輸入依存ゆえに影響を受けやすいとされている。
製造業が見るべきなのは「価格」だけではない
今回のプラスチック価格高騰を、単純に「材料が高くなる話」とだけ見るのは不十分である。本当に見るべきなのは、価格・納期・在庫・代替材・調達先分散の5点だ。
1 価格
PEやPPなどのプラスチック価格はすでに上昇しており、ロイターは中国・大連の商品市場で、ポリエチレン価格が中東情勢悪化後に約37%上昇、ポリプロピレン価格が38%超上昇したと報じている。さらに、欧米の化学メーカーも原材料費や輸送費の上昇を受けて値上げを進めている。
2 納期
供給が締まると、単価以上に厄介なのが納期である。ロイターは、DowのCEOがポリエチレン供給の最大50%が停止・制約・影響下にあると述べたと報じており、これは一部グレードや一部地域で納期不安が強まることを意味する。
3 在庫
経産省は、ポリエチレン等の川下製品在庫が国内需要の約2か月分あり、加えて中東以外からの輸入や国内精製によって安定供給に向けた対応を進めているとしている。政府も、ナフサは現時点で供給問題には至っていないが、米国・南米などからの輸入や国内精製を含め、国内消費約4か月分相当を確保できる見通しに言及している。
4 代替材
価格や納期が揺れる局面では、同じ性能を満たせる別グレードや別材料を持っている企業の方が強い。ナフサを起点とする供給不安は、樹脂だけでなくゴム原料にも影響し得るため、材料の固定化が強い図面や仕様はリスクになる。経産省の図でも、ナフサはプラスチックだけでなくゴムや電子部品、塗料にもつながる。
5 調達先分散
政府は各社が中東以外からの代替調達を追求中だとしており、これは民間企業にとっても重要な示唆である。安価な1社・1国依存より、国内・海外・代替材を含めた調達ポートフォリオを持つことが、今後ますます重要になる。
ゴムや樹脂の現場では何が起こりやすいのか
この局面で実際に現場で起こりやすいのは、次のような変化である。
- 汎用プラスチックの値上げ
- ゴム材料の見積有効期限短縮
- 小ロット品や特殊グレードの納期長期化
- 代替材提案の増加
- 成形条件や配合条件の再調整
- 顧客見積への価格転嫁圧力
ロイターは、米欧の化学メーカーがすでに価格転嫁を始めており、Lanxessは一部添加剤を最大35%、可塑剤を最大50%値上げしていると伝えている。つまり、影響は単に原料メーカーで止まらず、川下の製造業まで順に降りてきている。
製造業は今回のニュースをどう見るべきか
結論から言えば、今回のイラン情勢は「一時的な市況ニュース」ではなく、調達設計を見直すシグナルとして見るべきである。
まとめ
イラン情勢の緊迫化は、原油や石油の価格上昇だけでなく、ナフサ、樹脂、プラスチック、ゴム原料の供給と価格にまで波及している。ロイターは、ホルムズ海峡経由の石化供給が詰まり、プラスチック価格が約4年ぶり高値圏にあると報じている。
日本は2024年時点でナフサ調達の44.6%を中東に依存しており、ナフサはエチレン等を経てプラスチックやゴムなど多くの工業材料につながる。だからこそ今回のニュースは、石化業界だけの話ではなく、製造業全体の調達課題として見るべきである。
製造業が今見るべきなのは、次の5点である。
- 材料単価
- 納期
- 在庫
- 代替材
- 調達先分散
プラスチック価格高騰を「また相場が上がった」で終わらせるのではなく、
原油 → ナフサ → 石化原料 → プラスチック・ゴム → 部品供給
まで一気通貫で捉えることが、これからの実務には欠かせない。
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