ものづくりプレス

2026-03-11

中東リスクで“安い材料”が安くなくなる?プラスチック・ゴム調達の見直しポイント

中東リスクで“安い材料”が安くなくなる?プラスチック・ゴム調達の見直しポイント

中東リスクで“安い材料”が安くなくなる?プラスチック・ゴム調達の見直しポイント

「プラスチックやゴムは、金属や電子部品に比べれば安い材料である」
そう考えて調達を組んでいた企業ほど、いま足元の変化に注意したい。

なぜなら、近年の原油・石油・ナフサを取り巻くリスクは、単なる“相場変動”ではなく、納期・在庫・代替性・調達先の偏りまで含めて、調達の前提そのものを変え始めているからだ。

特に日本の石油化学は、原油 → ナフサ → 基礎化学品 → プラスチック・ゴムという供給連鎖の上に成り立っている。経済産業省の資料では、日本のナフサ調達元は2024年時点で中東44.6%、国産39.4%、その他16.0%であり、ナフサはエチレンなどの基礎化学品を経てプラスチック製品等の生産につながると整理されている。

つまり、中東リスクが高まると、「原油が上がる」だけでは終わらない。
ナフサが不安定になる → 石化原料が逼迫する → プラスチックやゴムの調達条件が崩れる
という形で、現場のものづくりに直接響く。

ロイターは2026年3月、ホルムズ海峡を巡る混乱によって石油化学品の流れが締まり、ポリエチレンやポリプロピレンなどのプラスチック価格が約4年ぶりの高水準に上昇したと報じた。中東は2025年のポリエチレン輸出の4割超を占めており、代替調達の難しさが世界的なコスト上昇につながっている。 

「安い材料」を本当に安いまま使い続けるには、何を見直すべきか
という視点から、プラスチック・ゴム調達の実務ポイントを整理する。

なぜ今、ナフサ起点で考える必要があるのか

プラスチックやゴムの材料調達を考えるうえで、いま最初に押さえるべきキーワードが「ナフサ」である。

ナフサは原油を精製して得られる石油製品の一種であり、エチレンやプロピレンなどの基礎化学品の原料になる。そこから各種プラスチック、合成ゴム、塗料、電子部品向け材料などが生産されていく。経産省はこのサプライチェーンを明示しており、ナフサが止まれば川下のプラスチックやゴムにも影響が及ぶ構造を示している。

しかも、日本政府自身が2026年3月の会見で、ナフサは「各種工業製品の材料として使われ、日本は中東への依存度が高い」と説明している。これは、ナフサが単なる石化業界の話ではなく、製造業全体の実務課題であることを示している。 

“安い材料”が安くなくなるのは、材料単価だけの問題ではない

プラスチックやゴムが「安くなくなる」と聞くと、多くの人はまず材料単価の値上がりを想像する。
もちろんそれは大きい。だが、実務上もっと厄介なのは、総コストが静かに膨らむことである。

たとえば、次のような変化が同時に起こりやすい。

  • ナフサ高騰による樹脂・ゴム材料の値上げ
  • 代替調達による物流費上昇
  • 納期長期化による在庫積み増し
  • 供給不安による小ロット対応力の低下
  • 代替材評価や再試作の工数増加
  • 品質保証や図面変更にかかる社内コスト増加

つまり、見積書の材料単価が数%上がるだけでなく、購買・設計・生産技術・品質保証まで含めた“見えにくいコスト”が一気に増えるのである。

実際、ロイターは中東発の供給混乱で、プラスチックやポリマー価格が上昇しただけでなく、世界の供給の最大50%がオフライン・制約下・影響下にあるとする業界発言も報じている。これは単なる相場高ではなく、調達の不確実性が増していることを意味する。 

原油→ナフサ→プラスチック・ゴムの流れを簡単に整理すると

原油
↓ 精製
ナフサ
↓ 分解・化学反応
エチレン/プロピレン/ブタジエン など
↓ 中間原料化・重合
プラスチック原料/ゴム原料
↓ 加工・成形
部品・製品

プラスチック側で影響を受けやすい領域

  • ポリエチレン系
  • ポリプロピレン系
  • 一部汎用樹脂
  • 包装材、容器、各種成形部品向け樹脂

ゴム側で影響を受けやすい領域

  • 合成ゴム系材料
  • ブタジエン由来を含むゴム原料
  • 各種シール材、パッキン、ローラー、ベルト等の基材
  • 樹脂とゴムを組み合わせた複合部品

つまり、ナフサ問題は「どこか遠い上流工程の話」ではなく、
現場が使うプラスチック部品やゴム部品の調達条件を左右する話である。

いま見直すべきポイント1 材料単価ではなく“総調達コスト”で見る

最初に見直すべきなのは、材料コストの見方である。従来は、「A材は1kgいくらか」「中国調達の方が何%安いか」といった比較で十分だったかもしれない。しかし今後は、それだけでは不十分である。

総調達コストで見るべき項目

材料単価 輸送費 リードタイム 最低発注ロット 在庫保有コスト 緊急時対応のしやすさ 代替材切り替えコスト 品質トラブル時の立て直しコスト

たとえば材料単価が安くても、納期が読めず在庫を多めに持たなければならないなら、実質コストは上がる。また、供給不安が起きるたびに設計変更や再評価が必要になる材料は、安く見えても現場負荷が高い。「安い材料」が本当に安いかどうかは、平時の価格表ではなく、有事も含めた調達条件で判断すべき時代になっている。

いま見直すべきポイント2 納期は“価格の一部”として考える

次に重要なのが納期である。調達の現場では、材料価格の話が先に出がちだが、製造業にとっては納期遅延そのものが損失になる。特にプラスチックやゴムのような副資材・小物部品は、「1点あたり安い」反面、1点欠けるだけで組立や出荷が止まることがある。

納期評価で見るべき視点

  • 通常時の納期
  • 逼迫時に何週間伸びる可能性があるか
  • 原料切替時の再立ち上げ時間
  • 物流混乱時の代替ルート有無
  • 緊急出荷に対応できる国内在庫の有無

2026年3月末時点では、日本政府はナフサなど石油関連製品について「現時点でただちに需給上の問題は生じていない」としている一方、根拠として挙げているのは国内需要約2か月分の製品在庫と、米国・南米等からの代替輸入や国内精製による追加確保である。逆に言えば、こうした備えが前提であり、何もしなくても安定するわけではない。

いま見直すべきポイント3 在庫は“悪”ではなく、戦略になる

近年は在庫圧縮が正義とされる場面が多かった。しかし、ナフサや原油を起点とした供給不安が高まる局面では、在庫の考え方も見直す必要がある。重要なのは、何を・どの程度・どの拠点で持つかである。

在庫戦略で優先したいもの

  • 代替しにくいゴム材
  • 特注コンパウンド
  • 図面変更が難しい樹脂グレード
  • 小さいが欠品するとラインが止まる部品
  • 海外調達比率が高い品番

逆に、汎用材で代替が効くものまで一律に積むと、キャッシュや保管スペースを圧迫する。在庫はコストである一方、供給不安時には保険でもある。大切なのは、「全部持つか、全部削るか」ではなく、止まると困るものだけ、意味のある持ち方をすることだ。

いま見直すべきポイント4 代替材は“いざという時に探す”では遅い

多くの企業が、供給不安が起きてから代替材を探し始める。しかし、これは実務上かなり危険である。プラスチックもゴムも、材料を変えると「硬さや柔軟性の変化」「耐熱性・耐油性・耐候性の差」「成形条件の変更」など、多岐にわたる影響が出るからだ。

そのため、代替材は不足してから探すのではなく、平時のうちに“第二候補”“第三候補”を持っておくことが重要である。これは購買だけでなく、設計・生産技術・品質保証が一緒に取り組むべきテーマである。

富士ゴム化成の既存記事でも、ゴム・樹脂調達は「調達だけの問題ではなく、設計・生産技術・調達が一体となって取り組むべきテーマ」と整理されており、複数国・複数材料・複数工法を組み合わせた調達設計の重要性が示されている。

いま見直すべきポイント5 国内調達比率は“高ければ安心”ではなく“設計次第”

国内調達には「緊急時の調整がしやすい」「小ロット・短納期に対応しやすい」「物流リスクが小さい」といった明確な強みがある。重要なのは、「国内100%にすること」ではない。海外調達、国内調達、代替材、在庫の持ち方をどう組み合わせるかという、調達ポートフォリオの設計である。

実務で使える見直しチェックリスト

  • その材料はナフサ由来か、上流原料を把握しているか
  • 材料単価だけでなく、在庫・物流・納期まで含めて比較しているか
  • 欠品時に止まる部品を洗い出せているか
  • 代替材候補を平時のうちに持っているか
  • 設計部門と購買部門が同じ情報を見ているか

富士ゴム化成のような“技術×調達”が価値を持つ理由

こうした局面で重要なのは、単に安い仕入先を探すことではない。技術と調達を一体で見られるかどうかである。

たとえば、「このゴム材は別グレードに振れるのか」「海外材と国内材をどう使い分けるか」といった判断は価格表だけではできない。材料・加工・調達・設計変更を横断して見られる支援が必要になる。

富士ゴム化成の既存発信でも、「特定メーカーに縛られない技術商社」として、材料・工法・調達条件をセットで見直し、調達ミックスを提案する考え方が打ち出されている。中東リスクやナフサ不安のような局面では、まさにこの立ち位置が強みになりやすい。 

まとめ

中東リスクが高まると、原油や石油の価格上昇だけでなく、ナフサを起点にプラスチックやゴムの調達条件まで揺れやすくなる。日本のナフサ調達元は2024年実績で中東44.6%、国産39.4%、その他16.0%であり、供給源の偏りは無視できない。

だからこそ、これからの調達見直しは「材料単価が安いか」ではなく、「その材料を安定して使い続けられるか」で考えるべきである。

見直すべきポイントは、次の5つだ。

  • 材料単価ではなく総調達コストで見る
  • 納期を価格の一部として考える
  • 在庫を戦略として持つ
  • 代替材を平時に準備する
  • 国内調達比率を含めて調達ポートフォリオを再設計する

プラスチックもゴムも、これからは「安い材料」ではなく、どう持つか・どう使うか・どう切り替えるかで差がつく材料になっていく。その変化に早く対応できる企業ほど、価格競争だけでなく、供給安定でも強くなる。

中東リスクで“安い材料”が安くなくなる?ということの図解