成形・加工方法

2021-10-19

旋盤加工とは?種類やフライス加工との違い

材料を削りながら加工していく切削加工のひとつで、「丸物」の加工に用いられているのが旋盤加工です。旋盤加工は使用する旋盤の機器や、操作が手動かコンピューターかによって特徴が異なります。また、部材を削り出すだけでなくいろいろな加工も可能です。
旋盤加工で用いる旋盤や、加工の種類を解説します。用途に応じた製品の製造を旋盤加工で検討しているときは、ぜひ参考にしてください。

旋盤加工とは

旋盤加工とは


旋盤加工とは、加工する材料そのものを回転させ、切削工具を当てて削ることで加工する方法です。材料が回転するため、丸棒状または円錐状のものが材料として使用されます。回転している材料に刃を当てて加工するため、完成品は軸状、筒状、リング状、円盤状になります。

材料を切り出すだけでなく、溝を掘ったり横穴を開けたりといった加工も可能です。旋盤加工によって製造されたものは、「丸物」と呼ばれています。

旋盤加工とフライス加工の違い


旋盤加工と似た加工方法に、フライス加工があります。二つの違いは「材料と刃物のどちらを回転させるか」という点にあります。旋盤加工は、加工する材料を回転させる「旋削加工」です。フライス加工は、刃物を回転させる「転削加工」にあたります。

以下の場合は刃物を回転させて加工するのが難しいため、フライス加工よりも旋盤加工のほうが適しています。

  • 外周が円柱状のもの
  • 中央に深い穴を開ける必要があるもの
  • 大きな穴を開ける必要があるもの(径の大きいネジ穴など)

旋盤加工機について


旋盤加工には、旋盤加工機を使用します。旋盤加工機は、以下の部品で構成されています。

  • 主軸台…加工する材料に回転を伝える部品。旋盤加工機によって最大回転数は異なる。
  • 刃物台…切削工具(バイト)を取り付ける部位。
  • チャック…加工する材料を取り付けて固定する装置。スクロールチャック、これっとチャックなど、旋盤の種類によってチャックの種類も異なる。
  • ベッド…旋盤加工機の本体部分にあり、案内面を備えている。
  • 心押し台…ベッドの上にあり、チャックと反対側から加工する材料をおさえる装置。加工品の中心を見つける作業(心だし)時にも使用する。
  • 往復台…刃物台、サドル、エプロンが含まれ、加工物に送り運動を伝える装置。
  • 送り装置…切削工具を縦または横に移動させる装置。

旋盤の種類


旋盤加工は、使用する加工機や操作方法によって以下の種類があります。

  • 汎用旋盤
  • NC旋盤
  • 卓上旋盤
  • 正面旋盤
  • 立旋盤
  • タレット旋盤

それぞれの特徴を解説します。

汎用旋盤


汎用旋盤とは旋盤加工機を使用し、手動で操作して加工する方法です。旋盤加工の中でも一般的な加工方法であるため、一般旋盤や普通旋盤とも呼ばれ、旋盤加工=汎用旋盤を表す場合もあります。

汎用旋盤は以下の特徴があります。

  • 作業に入るまでの準備が手短に済む
  • 作業時間が短い
  • 追加加工もかんたんにできる
  • 従業員のスキルが必要
  • 大量生産には向かない

汎用旋盤は、設計図を見ながら手動でハンドルを操作し、加工を進めていきます。材料や切削工具の取り付けなどの必要な作業が済めばすぐに作業に入れるのがメリットです。ひとつのハンドル操作で3つの爪が開閉する「スクロールチャック」を用います。

加工内容に応じて刃物の取り換えなどもその場でできるため、旋盤加工の時間も短くなっています。手作業のため、「穴を開けたい」「溝を掘りたい」「穴を大きくしたい」などの追加加工が入った場合にも、すぐに対応できるのも魅力です。

作業途中でミスが見つかっても、すぐに修正もできます。製作しながら微調整もできるので、試作品の製作にも向いています。

一方、手作業のため、旋盤加工を行う従業員にスキルが求められます。大量生産には向いていません。ただし、技術力の高い従業員なら精度の高い旋盤加工も可能です。受注生産品、特注品など量よりも質を求められる製造に向いています。

NC旋盤


NC旋盤

汎用加工は手動ですがNC旋盤は自動による加工のことを指します。汎用旋盤の旋盤加工機にNC(Numerically Control、数値制御)装置の付いた旋盤加工機を用いて行う旋盤加工です。刃物台の動きや角度など、あらかじめ加工内容のプログラムを作成し、記録させれば自動で旋盤加工を行います。

自動のため従業員のスキルも必要なく、すべての加工品を同じ精度で製造でき、大量生産に向いています。一方、作業途中での修正や追加作業は難しく、プログラムにミスがあった場合でも作業途中では気づきにくいデメリットがあります。

また、旋盤加工のまえに汎用旋盤で行う準備に加えて、加工内容のプログラム作成が必要です。準備時間もふくめ、一工程での作業時間は汎用旋盤よりも長くなっています。

卓上旋盤


卓上旋盤とは、より細かな作業をする際の旋盤加工です。一般的な旋盤加工機よりも小さめの卓上旋盤(ベンチレース)を使用します。コレットという筒状の装置で挟みこむ「コレットチャック」を使用して加工します。操作方法は汎用旋盤と変わらないため、手作業による精密な加工も可能です。

汎用旋盤で使用する旋盤加工機ではできない小さめの部品の加工や、シャフトのバリ取り作業などに用いられています。

正面旋盤


加工物を固定する面が面板になっている加工機で行うのが、正面旋盤です。正面旋盤に用いる機械は汎用旋盤よりもより 大きな材料を加工できるよう、材料を抑えるチャックから工具までの最大距離がより大きくなっています。加工しているときに切りくずが下に落ちる構造のため、加工物を傷つけない、切り傷を巻き込まないため連続加工ができるのがメリットです。

立旋盤


立旋盤

加工する材料が床と水平で、主軸が横方向に回転する汎用旋盤加工機に対して、縦回転する立旋盤加工機を用いて行うのが、立旋盤です。テーブルと垂直に材料を固定し、水平方向に回転させながら切削工具を当てて加工を進めます。ターニングセンタと呼ばれることもあります。

正面旋盤と同じく、大きめの材料を加工したいとき、重量物を加工したいときに向いています。材料を下方向に固定するため、正面旋盤よりも高い精度での加工も可能です。近年では正面旋盤の加工機を製造するメーカーは1社のみで、立旋盤が主流になっています。

タレット旋盤


タレット旋盤

タレット旋盤とは、回転式で複数の切削工具をセットできる加工機を用いた旋盤加工です。汎用加工では違う刃物を使いたい場合逐一取り換えますが、タレット旋盤は作業中に都度刃物を取り換える必要がなく、大量生産に向いています。

近年では大量生産の用途ではNC旋盤を用いる場合が多くなりましたが、タレット旋盤は手作業のため微調整をしながら加工が進められるメリットがあります。NC旋盤よりも特殊な加工や精度が求められる場合には、タレット旋盤が活躍します。

旋盤加工の種類


旋盤加工では、以下の加工が可能です。

  • 外径削り
  • 内径削り
  • ねじ切り
  • 穴あけ
  • 突切り
  • テーパー削り
  • 端面削り

それぞれの加工の特徴について解説します。

外径削り


旋盤加工の基本的な加工方法です。回転している材料の外側から刃物を当てて、外径を加工していきます。外丸削りとも呼ばれています。成形するために材料を大きく削りたいときや、表面加工に用いられています。

切りくずが外側に飛ばされるため、切削工具に絡まって精度がくるってしまう可能性があります。作業中は切りくずが切削工具に絡まないように、微調整しながら進める必要があります。

内径削り


回転している材料の内側に刃物を当てて、内径を加工する方法です。開けた内径を広げる工程は「中ぐり加工」とも呼ばれます。中ぐり加工は専用の中ぐりバイトを用いますが、技術力のある職人なら旋盤の切削加工でも対応可能です。

加工する内径の長さのある切削工具を使用します。ただし、切削工具の突き出しが長ければ長いほど、たわみやびびりが発生し、精度が狂いやすくなるため注意が必要です。内部に切りくずがたまりやすいので、切削工具に絡まないように適度に切りくずを除去する必要があります。

穴あけ


ドリルチャックと呼ばれるドリル刃の切削工具を用いた加工です。回転する材料にドリルチャックを当て、穴を開けます。内径加工のまえに切削工具が入るスペースを作ったり、タップを切る下準備をしたりなど、いろいろな旋盤加工と組み合わせられることも多いです。

突切り


突切り加工は、回転する材料の外径から少しずつ刃を当てていって切り込みを入れる加工です。不要な部分を切り落としたり、切削工具を送る量を大きくして材料を切断したりすることもできます。突切り加工した面がきれいになるのもメリットです。

突切り加工に使用する突切りバイトは、刃が細いため作業には技術力が必要です。切断の用途で突切りするなら振動や音で判断しながら調整する、硬い金属を切る場合は折れないようにするなどの対応が求められます。粘りの高い刃を使用する、回転数を落として給油しながら加工を進めるなどが有効です。

テーパー削り


テーパー削り

先端が徐々に細くなっていく(テーパー)円錐状の加工物を作るときの加工方法です。切削工具を保持している刃物台の角度を少しずつ調節し、斜めにスライドさせながら加工を進めます。角度は任意で調節できるので、テーパーの大きさも自由に製作可能です。

端面削り


材料の端面に切削工具を当て、表面を平面に仕上げる加工方法です。切削工具には端バイトを使用します。端バイトを送る速度や当てる角度によって仕上がり精度が変わるのが注意すべきポイントです。

旋削加工でできるもの


旋盤加工は、切削工具を変えることでいろいろな加工が可能です。旋盤加工では以下のような製品が製作できます。

  • シャフト
  • ピン
  • ボス
  • ノズル
  • ニップル
  • スペーサーカラー
  • ボルト
  • コネクタ
  • ニードル
  • ドアノブ
  • 椅子の一部

工業製品や自動車部品のほか、日用品の部材の製作にも旋盤加工が用いられています。これらの旋盤加工で作られた製品すべてを総称し「丸物」と呼ばれています。

旋盤加工は精度の高い受注生産品や試作品製作にも向いている


回転させた材料に切削工具をあてて加工を行う旋盤加工は、材料を削るだけでなく切り落としたり、穴を開けたりも可能です。大量生産ができるNC旋盤やタレット旋盤のほか、汎用旋盤は試作品や特注品の製作に適した加工方法です。

汎用旋盤は手作業のため、技術力の高い職人のいる工場を見つけるのが重要です。卓上旋盤や立旋盤など、加工したい材料に合わせた旋盤の種類や加工方法を選びましょう。納得の旋盤加工方法が見つかれば、工業品から日用品まで、いろいろな製品が製作できます。

製品に関するご質問、製品開発に関することはなんでもご相談ください。

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