成形・加工方法

2021-11-12

金型を用いた成形方法の種類

ゴムやプラスチックなどの素材を材料に、製品を製作する加工方法はさまざまあります。大きく分けて加工には金型を使うもの、使わないものに分けられます。金型にはいろいろな素材や形があり、製作したい製品の用途や形状、その他重視したいポイントに合わせた金型製作が重要です。この記事では、金型の概要や金型を使った加工方法の種類、金型を使用しない加工方法について解説します。金型製作の方法やコストが気になる方や、製品製作に金型は必要かどうか知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

金型

金型とは

金型とは、素材の成形に使用する金属製の型のことです。おもにゴムやプラスチックなど、流動性や塑性を持つ素材を材料として製品を製作する場合に使用します。

成形の際には、素材によって細かい工程が異なります。
ゴムや熱硬化性プラスチックなどは材料を金型のなかに仕込み、圧力や熱、射出などの必要な工程を経て成形を進めていきます。しかし、熱可塑性プラスチックは、その性質からあらかじめ加熱によって軟化させてから仕込みます。一方、金属における板金用の金型成形は、他の材料のように鉄板そのものを温めるわけではありません。金属のパイプなどにおいては材料を加熱してから口金を通して成形します。このように、一口に「金型成形」といえども、材料によって適切な処理方法が異なります。

金型は形状や寸法をはじめとした、製品の品質を決める重要な役割を担うものの一つです。とはいえ、もちろん金型のみが形状などを決めるわけではありません。成形条件適切な温度であるかどうかや仕込みの量、材料に収縮性があるかなどでも大きく影響します。

金型を用いた成形方法

金型は材料とする素材、成形方法によってさまざまな種類があります。おもに金型を使用して成形する素材が「ゴム」「プラスチック」「ガラス」「金属」 です。材料とする素材と成形方法ごとの特徴を、金型を含めて解説します。

ゴム成形

ゴムを材料とした製品も、金型を使用し成形されたものが多いです。天然ゴムや合成ゴムを材料として、金型を用いた成形方法には以下のものがあります。

  • コンプレッション成形
  • トランスファー成形
  • 射出成形

コンプレッション成形

コンプレッション成形とは、適温にした金型の凹部にゴム材料を仕込み、凸部金型で上から押し、圧力によって成形する方法です。直圧成形とも呼ばれています。圧力をかけた状態で架橋に必要な熱と時間を保持したあと、製品として金型から取り出します。

ゴム成形のなかでも最も一般的な成形方法として用いられ、金型によって色々な製作ニーズに応えられるメリットがあります。金型の作成コストも比較的低いです。

材料の仕込みは人の手によるものがほとんどで、どの位置にどれくらいの量を仕込むかは熟練の経験に依るところが大きいです。
ほかにも、金型の製品掘り込み数を増やせば生産数を複数にして製作コストを下げることも可能です。

トランスファー成形

射出成形のピンゲート成形とよく似た成形法で、直圧注入成形とも呼ばれています。ゴム成形(加硫成形)の場合、金型へ手で仕込むのが難しいゴム材料を使用する場合の成形方法として、多く用いられています。コンプレッション成形と基本的な部分が同じため、同じ設備を利用できる一方、コンプレッション成形とくらべるとてバリが出ない点がメリットです。

一方でトランスファー成形に使用する金型は、形状が複雑です。そのため金型の製作コストがやや高い、製品の形状などにより使用できないデメリットがあります。また、中溜り部分にも余分なゴム材料が溜り、材料のロスが発生する、材料の注入口(ゲート)のあとが残るデメリットもあります。

射出成形

ゴム材料を金型のなかに射出して充填、成形する方法です。ノズルから射出された材料が、スプール、ランナー、ゲートと呼ばれる部分を通過し、金型のキャビティへ充填されます。大きく分けてホットランナー方式、コールドランナー方式の2種類があります。

使用するゴム材料は熱可塑性エストラマー(樹脂ゴム)に限らず、通常のコンプレッション成形に用いられるゴム材料と少し配合を変え、機械に入れやすいよう帯状に切ったリボンと呼ばれるものを使用することもあります。
この成形方法は、自動車部品のゴム製品などのような大量生産を目的とした場合に使用されることが多いです。

成形サイクルがコンプレッション成形(加硫成形)よりも短く済むため、製品製造単価のコストを低くできるメリットがあります。一方、金型の製作コストは高めで金型の大きさに比例してコストも高くなります。コンプレッションよりも成形の前準備に時間を要し、金型の製作コストをカバーするため、大量生産向けの成形方法と言えます。

プラスチック成形

プラスチックを材料とする成形方法には、以下のものがあります。

  • 射出成形
  • ブロー成形
  • 真空成形
  • 圧空成形

射出成形

ゴムを材料とした射出成形と同じ方法です。加熱によって軟質化したプラスチックを金型に射出して充填、成形します。材料を直接金型に仕込むのではなく、ペレットと呼ばれる粒状の材料をタンクに投入するのが特徴です。

ブロー成形

加熱によって軟質化した樹脂を射出し(パリソンという)樹脂を金型に挟んでピンを指し、空気を吹きこんで膨らまし、冷却・固化させ成形す方法です。

大きなボトル型の成形ができるため、ペットボトルや食品ボトル、化粧品ボトルなどビン型のプラスチック製品製作に用いられています。一方、材料に大きなロスが必ず出てしまう点る、製品の厚みや重量が一定になりづらく、欠陥が多岐にわたるといったデメリットがあります。

真空成形

雄型もしくは雌型の一方の金型を使い、加熱する事で軟質化したシート状のプラスチック材料を金型に合わせた形状に成形する手法です。シートと型の間を真空によって減圧し金型に密着させるのが特徴です。卵のパックや食品トレーなどの製作に用いられています。

圧空成形

シートと型の間を真空状態にして減圧する真空成形に対して、加圧する場合は圧空成形と呼ばれます。圧空成形は少数生産に向いている点、型の費用が低コストで済む点がメリットです。一方、樹脂シートや樹脂フィルムが必要になるため材料に制限があります。偏肉などの欠陥が発生するデメリットもあります。

ガラス成形

ガラスを材料とし、金型を使用する成形方法には以下のものがあります。

  • 廻し吹き成形
  • 吹き込み成形
  • プレス成形
  • プレス&ブロー成形

廻し吹き成形

加熱によって軟質化したガラス材料を竿の先端で巻き取り、金型に仕込みながらガラスに息を吹き込んで成形する方法です。竿を回しながら成形するため、できあがったガラス製品に金型のつなぎ目のあと(パーティングライン)がつきません。なめらかな表面のガラス製品を製作する場合に向いています。

吹き込み成形

廻し吹き成形と同じく軟質化したガラス材料を金型のなかで成形する方法ですが、こちらは竿を回さずに成形します。ガラス材料に金型の模様がついた状態で成形されます。金型にこまかい模様を掘っておけば、ガラス表面に模様として転写できます。

プレス成形

矢型、目金型、胴型の3種類の部分から構成される金型を使ったガラスの成形方法です。銅型に軟質化したガラス材料を仕込み、目金型でふたをし、矢型で上から圧力をかけて成形します。寸法や精度の高いガラス製品製作に向いている方法です。また、廻し吹きや吹き込み成形では作れない厚みのあるガラス製品も制作できます。

プレス&ブロー成形

プレス成形と吹き込み成形を段階的に行うガラス成形方法です。ガラス製品の口部分をプレス成形で、胴体部分をブロー成形の工程で製作します。口部分の精度が必要になる製品製作に用いられています。

金型を用いずに製作することは可能?

ゴムやプラスチック、ガラスを材料とした成形方法には、以下のように金型を使用しないものもあります。

  • ウォータージェット加工
  • 切削加工
  • 口金やマントルなどの治工具を使用した成形

ウォータージェット加工は、ノズルから発射される水の水圧や研粒を使用する加工方法です。金型不要で成形ができるほか、金型ではできないこまかい加工もできます。
但し、加工範囲・除去範囲が大きい場合は大量生産向けとは言えません。
切削加工とは、材料を工具で切り落とす、削るなどで成形する方法です。回転する材料に工具を当てる旋盤加工や、回転する工具を固定した材料にあてるフライス加工などが該当します。

金型を使用しない成形方法には、金型の製作コストや納期がかからないメリットがあります。ただし、製作したい製品の形状や寸法の精度、コストや納期などの重視したいポイント、生産量に応じて適切な成形方法は異なります。金型の有無だけでなく、いろいろな要素から成形方法を選ぶのが重要です。

材料や製品の用途に合った金型や成形方法を選ぼう

金型の概要に加えて、ゴム、プラスチック、ガラスの材料別に金型を使用した成形方法の特徴、金型を使用しない成形方法について解説しました。金型を使用した成形方法にも幅広い種類があり、材料や重視したいポイント、製品の用途に応じて適した成形方法は異なります。また、金型を使った成形方法以外にも、金型を使用しない成形方法を選んだ方がよい場合もあります。

金型や製品の製作にお困りのときにも、お気軽にご相談ください。製作したい製品に合った最適な成形方法や金型を提案します。

製品に関するご質問、製品開発に関することはなんでもご相談ください。

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